【完結】クラスメイトに嘘告白で「ざまあ」を仕掛けられ渋々告白現場に行った結果

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第1話:俺は罠にかけられるらしい

 放課後の中庭。俺は知っていた。ここに来ても誰も俺に告白になど来ないことを。それでも、更なるトラブルを避けるためには、ここに来てバカにされる必要があった。


 あとは、クラスメイト達が茂みなどから飛び出てきて俺をバカにされるだけ。予定時間までもう少し。俺は間が持たないと思っていた。


 灰色の厚い雲を見上げたら自然とため息も出た。ここ雲はまるで俺の心を表しているようだった。

 そして、この時はまだその後に、あんなことが起こるとは、予想もしなかったのだ。



 ***



姪浜めいのはまって暗くね?」「喋ってんの見たことない」「オタクそう」などなどクラスでは話が出ていた。そういう陰口は、SNSなんかの俺の見えないところでやってくれ。


 俺、姪浜めいのはま友和ともかずは、とにかくトラブルが嫌いだった。だから、クラスメイトとの交流も極力避けていた。近づくからトラブルになるのだ。そもそも交流が無ければトラブルもないのだから。


 中学、高校とこの調子で特に大きなトラブルもなかったので、これが正しいと思ってしまった。周囲にあまり興味を持っていなかったからか、少々なことでは驚かなかった。


 例えば、小学生の時に保健の先生と体育の先生が結婚すると聞いても「そうなのか」と思っただけだったし、中学生の時 うちの両親が実は再婚同士だったと聞いたときも「そんなこともあるのか。今は仲が良いから別にいいか」とあまり気にならなかった。高校生になって、同じ高校に妹が入学してくると聞いても「そうなんだ」としか思わなかった。


 その流れで来てしまったので、高校2年になった今でもボッチを決め込んでいて、周囲に対する興味がなくなってきていた。


 そして、それは知らず知らずのうちに自分に対する興味もなくしていたらしい。髪はボサボサがデフォルトだったし、メガネも自分に似合うかどうかよりも価格で選んだダサメガネだったし、制服のシャツはボタンが1個ズレている事すらあった。


 自分のことを周囲はそれほど気にかけてなどいないだろうと思い、それも特に気にしていなかった。


 もしかしたら、それが少し行き過ぎていたのかもしれない。いつのまにか、クラスメイトの気を引いてしまったのか、気に障ったのか、気付いたときにはある計画が進行していた。



 ***



 ある日、クラスのグループチャットが盛り上がっていた。


「姪浜友和に嘘告白を仕掛けて『ざまあ』しよう!」というどっきり企画が提案されたのだ。まったく、酷いことを考え付く。悪口は俺の知らないSNSで……と思ったことがあったけれど、俺が入っているグループチャットで俺の存在を忘れてそんな悪だくみをしたら全部筒抜けだ。


 俺がグループ内にいることも忘れてしまっているって、どれだけ存在感がないのか……そのせいで計画の詳細まで俺に伝わっていた。


 朝のうちに偽のラブレターで呼びだし、1日ソワソワしている俺を眺めてみんなでニマニマするらしい。そして、放課後に学校の中庭に呼び出すが、当然誰も来ない。


 告白主が現れるその代わりにクラスの全員が物陰から一斉に飛び出し、「誰も来ないよ!どっきり大成功ーーー!」と言ってバカにするという内容だった。


 とてもくだらない、小学生みたいだ。それでも、プリミティブ原始的ないたずらなだけに実際にやられたら精神的にクるものがある。


 アニメとかでありがちなこのシチュエーションはされた方はたまったもんじゃない。トラウマレベルの衝撃ではないだろうか。


 問題は、この計画を罠に嵌められる俺自身が既に知っていることだ。どんなテンションでことに臨んだらいいのかが分からない。


 第一、朝からソワソワする芝居をする自信がない。そのラブレターとやらの字を見て誰が書いたか冷静に分析とかしてしまいそうだ。


 そして、放課後の中庭に行くときは、少しウキウキしながら行くべきだろうか。それこそスキップ位した方が良いだろうか。そんな下手な芝居ができるとは到底思えない。


 そんな茶目っ気があったら、とっくにクラスメイトとは そこそこいい関係を築いているはずだ。それができないということは、それなりの理由があるということなのだ。


 そして、クラスメイト達が一斉に顔を出して「どっきり大成功ーーー!」と言った時には、俺は驚いた顔がいいのだろうか、それとも悔しそうな顔の方がいいのだろうか。こちらも、そんな芝居ができるだろうか。



「驚いたなー(棒読み)」とか言ってしまいそうだ。



 いずれにしても、面倒なことになった。作戦実行日まで気が重くなるのだった。

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