第74話 新戦力(1) <2031年8月下旬>
〜理沙side〜
中郷工業団地でのフィールドボスとの戦い以降、門下生達と連絡を取り合ってあの子達が、休まず鍛錬している事がわかって嬉しかった。
ただ、私のチャットの名称が特殊(リサリサ)だったので、連絡したくても連絡が付かず・・・静香からは相当愚痴を言われてしまった。
今ではこの名称で登録してしまって申し訳ないと思う。
ただ、一緒に訓練をし始めて1ヶ月経ち、最近になって急に忙しいとかで、全員が立て続けに稽古を休む事が多くなった。こちらから何かあったか聞いているが、大した事無いとの返答しか返ってこなかった。
「本当に何も無ければいいのだが…。」
心配しても仕方ないので、田村さんと2人、寂しくなった道場で日々訓練をしている。
そんな矢先、風馬が道場に駆け込んで来た。
「やっぱりな。ねーちゃん、チャットで連絡しても何の返答も無いから来ちゃったよ。今しがた田中家から連絡受けたんだけど、門下生の静香さん達が如月道場から攻撃を受けてるみたいで窮地に陥っているらしい!」
「それはどうゆう事だ!」
私は我を忘れて風馬に詰め寄って、胸ぐらを掴んでいた。
「痛いって。俺もそこまで詳しい状況を掴んでいないけど、2〜3週間前辺りから何かイザコザがあったらしい。」
風馬の胸ぐらを掴んだ手を離した。
「すまない…。場所はどこで起きている?」
「場所はこの辺りだよ。如月道場とのことだから仕方ないと思うけど、俺たちも手伝うか?」
風馬が【地図】で大体の場所を指して私へ伝えてくれた。
「………いや、私だけでやるよ。」
「わかった。ただし、いつもの事だが無理はするなよ。何かあったらすぐに連絡をくれ。」
「あぁ…。」
この前、恐竜系統のフィールドボスから入手した装備を手にしてすぐに門下生達の救出へ向かった。
〜笹野静香side〜
私は葛城道場の門下生の笹野静香だ。
師範の旧姓葛城理沙さんの中高の後輩だ。
理沙師範はあの美しさで華奢な感じがするが、一度剣を握ると雰囲気が変わる。誰も寄せ付けない強さを秘めている。
学校でも一部の女子からかなりの人気があった。まあ、男性からもいろいろと告白されていたようだ。私の理沙師範なのに…。
こんな世界になってから、直ぐに理沙師範へチェットで連絡を取ったが、全く返事が返って来なかった。
あの人のことなので、殺られれうことを無いと思う・・・そうなると私が嫌われて居るだけなのだろうか・・・悲しい。
気を取り直して・・・・、理沙師範とは連絡が取れなかったが、運良く磯原の拠点近くで葛城道場の仲間達と合流できた。
その後も葛城道場の仲間達と日々の稽古を欠かす事なく精進していた。
そして、数ヶ月前に理沙師範の情報を入手して、みんなで居てもたってもいられず、すぐさま中郷工業団地へ会いに行ってきた。
理沙師範は変わらない強さと美しさを兼ね備えていた。私たちもそれなりに訓練しており、少しは師範との力の差が縮まったかと思っていたら逆だった。
更に差が開かれていた…。
やはり目標にしている人だけあって、こんな世界になっても向上心が凄かった。師範との再会は喜ばしい事だったが、逆に良くない事も起こった・・・。
如月道場が本格的に私たちにちょっかいを出してきたのだ。葛城道場と如月道場は武術大会で全国トップクラスの実力を持った道場である。
元を辿れば、江戸時代からライバル同士であり、令和のこの時代なので紛争こそ無いが、武術大会においては、いろいろな事が起こっていた。
そして、私達にとって最も悪い事に、如月道場の当主が先日の『審判の日』を乗り切ったことを1つの節目として引退し、息子の代へ世代交代した。
この世代交代がキッカケとなり、いろいろと抗争が発生し始めた・・・。
如月道場の先代は一線は超えない紳士的な面があったが、現当主の如月雷太はそんなことは無かった。
一方的に如月道場から嫌がらせを受ける日々がここ最近続いていた。如月道場は人数も20人近く集まっており、連合を組んでいる。
『如月連合』だったかな?正確には覚えていないが、武道会で顔を張っていいたメンバーも数名所属しており、実力は確かである。
そして・・・1週間ほど前に突如、如月雷太が仲間を連れて私たちの領地へ現れた。
「お、お、おい、笹野静香!お前たちはこれから俺たちの傘下入れ!」
何故か緊張しながら、如月雷太はそう言ってきた。
「それはどういうことなのですです?」
「っどうもこうもない。いいから我が如月道場へ入門するのだ。」
「何故そうしないといけないのですです?私は理沙師範の元でこれからもずっと稽古を続けて行くですです。」
雷太が何故か周りの門下生と小声で言い争いをしている。
「そんな誘い方じゃダメですよ」とか「もっと丁寧に言わないと」などと雷太は門下生からダメ出しをくらっているのが、声が小さくて聞き取れなかった。
〜如月雷太side〜
俺は如月家の一人息子であり、如月道場の現当主だ。父上が当主の座から退き俺が先日当主となった。
当主となったのだから今度こそ静香さんを正式に我が如月道場へ向かい入れるのだ。
今までそれとなく誘っているが、当主でもなく箔が無かった。ただし、当主となった今は違う。きっと俺の申し入れを受け入れてくれるはずだ。
そう、俺は高校時代2つ上の笹野静香先輩のことがずっと好きだった・・・。
武術大会でもその勇姿を見て更に憧れが増しているが、相手はライバル道場の門下生だ。
俺は静香先輩の事を振り払うかのように、いろいろな子とお付き合いはしてきたが、何故か「ちょっと思っていたイメージと違うので……別れましょう。」といつも振られてしまう。
20人以上と付き合っているが、キス止まりだ……童貞なのである。今は当主となり静香さんと釣り合いが取れると思っている。
まず静香さんのことを如月道場へ迎い入れて、関係を徐々に構築していきお付き合いに移行する計画である。
「・・・・我ながら素晴らしい考えだ。」
そして、今日それを決行したのだが、何故か上手くいかない……。門下生達にダメ出しまでされてしまった。
「これは、失礼した。笹野静香さんを如月道場へ迎い入れたいのだが・・・入ってもらえないだろうか?」
これは丁寧にできたぞ。
「……さっきのお誘いは無かったことになったのですか?……まあその事はいいですです。 ただ、お誘いはありがたいのですが、先程も申し上げた通り、私は理沙師範の元でこれからも学びたいと思っておりますので、無理なのですです。」
「現当主である俺がこんなに何度もお願いしても何故ダメなのですか?」
「そう言われましても……私は理沙師範のものなのですです。」
「ぬぐぅ、あの化け物の事など忘れて、俺の元に来るんだ!」
「理沙師範は強くて美しい方ですです。何を言っているのですか!」
何故かこんなに誘っても静香さんは靡いてくれなかった。
そして、こんな世界となった影響で、力で自分の物にしてしまえば良いではないかとの危険な考えが、雷太の中に芽生えてしまった。
「えぇい、それだったら力ずくでも静香さんには俺の女になってもらいますよ。」
「何で道場への勧誘から、そんな話になるんですです?」
「そんな説明は不要です。静香さんには、私と従属契約を結んでもらう。今から葛城道場のあなた達とは戦争だ!!」
そう言って、俺はモンスターたちを静香さんたちの領地へ向けて進軍させた。
静香さんはモンスターを残して、自分は一旦引いて仲間達の元へ戻ったのだろう。
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おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲
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