第58話 ダンジョン(2) <2031年6月>
田中家の働きは素晴らしかった。
重要なミッションを与えてまだ1ヶ月程度であるが、配下重視型プレイヤーを早くも数十名見つけ出し、更にそこから絞り込みを図っているとの報告を受けている。
俺の意図を読み取ってくれて人選までしてくれているとは・・・助かります。
数十人にまで絞り込むまでは、数日しか掛からなかったとのことで、仕事が早いです。
まだ全ての候補者を偵察していないので今後まだ増えるだろうが、当初数十人いた候補者もだいぶ絞れてきており、現時点で一桁台まで絞り込めている。ここまで絞ってもらえると同盟として助かる。
特にD級モンスターの召喚は俺しか行えないので、当面の目標である中郷町統一に向けて、絶対的に配下の駒数が足らない。
万が一、俺が倒れた場合、そのままねーちゃんと涼真さんもお陀仏になってしまう可能性がある。リスク分散は出来るだけしておいて損はない。
ただ、リスク分散のためだからといって5人までしか加盟することが出来ない貴重な同盟員枠を適当な人で埋める訳にもいかない・・・・。
信頼を置け、チームワークや背中を安心して預けられる者が好ましいし、そうゆう人物を求めている。そう簡単なことでは無いということは分かっているが、探し出せるチャンスはあると思っている。
こんな世界なので、同盟が壊滅して自分だけが生き残った者、現在の同盟に不満を抱えている者、ここまでソロでやってきた者など様々だろう。
あと数週間後に一度区切りを付けて、田中家よりミッションの人選結果の報告を受けることになっている。
そこで、人選結果を基にして、直接コンタクトを取って同盟への加盟交渉に入るわけだ。
良い人と巡り合えばそれで良いが、巡り合わなければ田中家へ捜索範囲を広げて再度調査のやり直しだ。
配下重視型プレイヤーを同盟へ加入させることは必須事項なのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そういえば、最近忙しくて忘れていたが、半年ほど前に突如全国各地の立入禁止区域に現れたダンジョンを覚えているだろうか・・・。
今回はその中に探索に入ってみようと思っている。
ダンジョンに隣接しているlv5土地もすでに獲得しており、あとはダンジョンへ足を踏み入れるだけとなっており、それっきりになっていた。(本当に忘れていた訳じゃないよ。)
今日一緒に来ているのは、ミレーネ、ナビルとモンスターたちだ。
「ナビルはダンジョンって入ったことあるのか?」
「おう、あるぞ。以前の世界だと宝箱とか目当てで何度か探索した。」
「ミレーネはどうだ?」
「私はダンジョンには入った事無いけど、エルフの冒険者からダンジョンの情報を聞いたことがあるわ。」
「冒険者ってやっぱりいるのか!? 俺たちの世界だと漫画でよく描かれてるけど、本当だったんだな。」
「冒険者っていうのは、雑用でも何でもやる自由人って感じの人達だよ。こっちでいうと定職に就いていない、日雇い労働者って感じ・・・。」
「……そんな言い方やめてくれ、ちょっと冒険者のイメージが………。漫画で植え付いている自由で強く、かっこいいイメージが壊れてしまう・・・。」
「でも実際そうよね?」
ミレーネがナビルを見て同意を求める。
「おう、そうだぞ。たまに大当たりして、大金を掴む者もいるがごく一部だ。大抵はギリギリの生活を送っていて、死亡率もダントツで高い。それだったら、ハンターの方が主流だな。」
「そうよね。ハンターの方が主流よね。ハンターになるまで、実力が無い人達が冒険者となって無理して死んでいくって感じかな。」
ナビルとミレーネは共通認識でいるが、今いち冒険者とハンターの違いが分からない…。
「話を聞くと冒険者とハンターって何か違うのか?同じように聞こえるんだが。」
「違いはライセンスを持っているか否かよ。ハンターになるには試験があって、試験に合格するには相当な実力が必要。ただ、その試験に合格すればハンターライセンスがもらえ一流の称号を得られるって訳。」
「まあ、こう言っちゃ何だが、俺もハンターライセンスは持っていたぜ。ただ、駆け出しだったけどな。」
「っえ、ナビルってハンターだったの!! 脳筋でもハンターに成れるんだね。へえ〜〜〜。」
「・・・誰が脳筋だ、ピキピキ(怒)。」
ミレーネが冗談を言ってるが、ちょっとナビルが噴火しそうになったので、慌てて話を戻すことにする。
「そうか、そうか、わかったありがとう。ミレーネは変なことを言うな。そして、ナビルは一旦落ち着こう。深呼吸だ・・・・。 っと、一度話を戻すが、この中ではナビルだけがダンジョンに入った事があるんだな。今から入るダンジョンとお前が知ってるダンジョンに違いがあったら教えてくれ。」
ナビルが深呼吸している・・・。
「・・・・了解だ。」
「ミレーネも何か気づいたことがあったら教えてくれ。」
「わかったわ。」
そうこうしてる内にダンジョンに着いた。
一時、これからダンジョンに潜ると言うのに、空気が悪くなり日を改めようかと思ったが、ナビルが意外と大人の対応を見せたので、その後はスムーズにダンジョンまで来れた。
念のために何があるのかわからないから、ゴブリンナイトを先頭にしてダンジョンへ入ろうとしたら、ゴブリンナイトが立ち止まって動かないでいた。
なぜかダンジョンに入れないようだった。
「最初からつまずいてしまったな。」
他のベアーやプチタイガーなどでも試したが同じだった。
「そっちの世界でもモンスターはダンジョンへ入れないのか?」
ミレーネとナビルが2人して顔を見合わせている。
「いや、そもそもモンスターを従えてるやつなんて居なかったしわからん。」
「……そりゃそうか。悪かった忘れてくれ。じゃあ、俺が先にはいるか。」
「そりゃダメだ。何があるかわからんから、先に俺が試してみる。フーマはちょっと待っててくれ。」
「わかった。じゃあ、よろしく頼む。」
そう言って、ナミルがダンジョンに入ろうとするが結局ダメだった…。
もちろんミレーネも試したが、同じ結果だった。
しかし、俺がやると目の前にステータス画面が現れて、入域の部隊編成を行う画面が現れた。
「これは、プレイヤーがいないと入れない仕組みのようだ。入域のために部隊編成が必要だ。ナビルたちの世界でもダンジョン入りに対して、何か制限があったのか?」
「いや、そんなの無かったぞ。」
「私も聞いたこと無いわね。」
「そっか、早速違いが出たな。」
いつものように俺、ミレーネ、ナビル+その他3体のモンスターをリーダーに設定して6部隊を設定した。
そう、先日の海岸の攻防でレベル6になった俺は、240体✕6部隊=1,440体を率いることができる。
入域の部隊編成を済ませダンジョンに入ると、「占領」のときのように別次元の解放領域に飛ばされるような感覚になった。
「……あれ?ミレーネとナビル達が来ない。」
チャットで連絡をしても、返信は全く来なかった。仕方ないのでダンジョンから出るとそこにはミレーネたちも居た。
「何でついて来なかったんだ!」
「いや違うの、私たち別の空間に飛ばされていたのよ。何か閉鎖された空間で、変なスクリーンがあって、そこにはフーマ達がダンジョン内にいるのが映っていたのよ。」
「……なんだそれは??ナビルも一緒か?」
「ああ、ミレーネと同じ場所にいた。もちろんモンスターどもの一緒だ。フーマの部隊以外が一箇所に閉じ込められた感じだ……。」
「それに何の意味があるんだ?どうせモンスターを連れて行けないなら、なぜ部隊編成をさせるんだ??・・・・ノーヒントでこの状況は全くわからん。」
とにかく、部隊編成を変更して再度ダンジョンへ入った。
今度は俺と同じ部隊にミレーネとナビルを設定している。
そうしたら、一緒にダンジョンに入ることができた。
「これのやり方が正解なんだな。あとは、その他の部隊が何のために設定する必要があるかだな。」
とりあえず、疑問は残るが、ダンジョンの探索・調査を進めることにした。
結果、ダンジョンは攻略できなかったが、いろいろと情報を入手することができて次に活かすことにする。
一番の要因は、時間が全く足りないということだった。
はっきり言って相当広い解放領域だった。
しかも迷路になっているし、モンスターが徘徊して時間をロスしてしまう。
ただ、マップ機能があるのは便利だった。
「何かよくゲームなどで見る感じのマップ機能だな。」
ダンジョンの情報をまとめるとこんな感じだった。
・ダンジョン入域時:ステータスボードで部隊設定を実施
・ダンジョン入域時:1部隊のみ入域可能
・他の登録した部隊:別閉鎖領域へ転送されて待機状態
※閉鎖領域には、スクリーンがありプレイヤーの活動を確認可能
・配下モンスターだけの入域は不可
・ダンジョン:洞窟型の超巨大な迷路
・道幅:約5m、高さ:約10m、洞窟内:明るい
・マップ機能:ステータスボードに搭載。自分が通過するとマップが埋まっていく。
※「ト◯ネコの大冒険」のゲームのようにマップ表示される仕組み
今回はこの情報だけでも得られたので良しとして、ダンジョンを後にするのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲
<他作品>
最強のクズ職〜てめぇら見てろよ召喚士だがこれからは俺のターンだ〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330647505909489
よろしければ、ご覧ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます