第41話 審判の日(3)
〜風馬side〜
真冬の月空の下、浜辺で2人・・・。
奈緒が、自分の思いを話してくれている。
「ありがとう。でも、私はこのままだと『審判の日』を乗り越えられそうにないよ……。 本当は薄々気がついていたんだ。このままだと難しいんじゃないかって、でも諦めたくなかった・・・・。
フーくんに出会えて、いっぱい助けてもらって、必死にやってみてそれでもダメだったら仕方ないけど・・・・。折角助けてもらった命だもの、精いっぱい頑張ってみたいって・・・・・、それでも、それでも・・・ダメだった……。」
「「・・・・・・・。」」
奈緒が落ち込み気味でずっと何かを考えるかのように黙っているので、場の雰囲気を和ませようと冗談を言った。
「なあ、だったら俺と従属契約して俺の女になればずっと一緒にいられるぞ。このままだと『審判の日』を迎えちまうし、それしかないっしょ。」
冗談なので「何言ってるのフーくんそんな訳ないでしょ」などという返答を想像していたが、奈緒から予想外の言葉が返ってきた。
「う、うん。それじゃ、そうしよっかな・・・・・よろしくね。」
「っっっえ、マジ?」
「本当だよ。フーくんこそ『俺の女になれ』ってもしかして冗談だったの?ひどーい。シクシク」
奈緒が泣いたフリをしている。
これは本当なのか冗談なのかわからん…。
シリアスな雰囲気が一気に吹き飛んでしまった。なんか、学生時代を思い出すな。
「冗談だったけど、冗談じゃないような、本当だったらうれしいなって思っているけど・・・・何いってんだ俺。」
「プフフ、フーくんが困ってる。久しぶりに見たなその感じ。」
って結局どっちなんだ?と思っていたら、奈緒が言葉を続けた。
「本当に私はフーくんの事・・・・・大好きなんだ。このままずっとフーくんの隣りを一緒に歩んで行きたい。でも、フーくんの隣にはミレーネがいるのも知っている………。それでも、もし良いなら私も一緒にフーくんの隣を歩かせて欲しい・・・・。
もちろん、ミレーネの許可は取ってあるよ!私もいい大人だし、こんな世界になったのでちょっと麻痺しちゃっているかも。ミレーネと話しているうちにミレーネたちが暮らしている異世界の家族のあり方の考えについても納得しちゃって……フーくんがミレーネばかりにかまって、私が放って置かれるとアレだけど……。まあ、そんなことだから、あとは私を受け入れてくれるか、フーくん次第ってわけ。」
どうゆうこっちゃかわからんが、ミレーネと奈緒はいろいろと話をしているとのことだった。
「………俺は、奈緒の事を中学の頃から大好きだったぞ。中学のときに突然、奈緒が転校するとなったときは・・・勇気を出せずに告白できず、諦めることになってしまったけど。それでも、あのとき、告白してればどうなってたんだろうと・・・・後悔して、たまに考えることがあるんだ・・・。だから、だから、奈緒が良ければ、奈緒のことも幸せにするから、こちらこそよろしく。」
「中学の頃から私のこと好きだったの!両思いだったなら早めに告白しておけばよかったよぉ〜。 それはそうと、フーくんって二股できるんだぁ〜〜。」
「それは……2人とも本気だから・・・・。」
「二股」の言葉にかなり焦りを感じて、中学の頃に奈緒も俺のことを好きだった事が頭に入ってこなかった。
「あははは、ごめんごめん。こちらこそよろしくね。チュ♡」
奈緒の顔が近づいてきて、お互いの唇が軽く重なった。
なんか、学生時代の雰囲気に一気になった気がする。奈緒とはこのくらいの距離感が居心地が良くて好きだ。その後、誰もいない夜の浜辺で・・・奈緒と一線を越え、男と女の関係になった。
2031年4月1日12時、とうとう『審判の日』を迎えた。
異世界ダンジョン陣取りバトルが始まってからちょうど1年が経過した。
「あの時は、スタートダッシュをすると決めて徹夜で頑張っていたっけ。凄く懐かしいな。」
北茨城の市街地はかなり人がいなくなったのか空地の土地が無数にある。
確かに市街地ではあまり争いが無く、日本人ランキングが低い人が多かったのだろう。奈緒がその良い例だ。
自分なりに頑張っていたのだろうが、本当に頑張って異世界人と戦っている人たちと比べると差が明らかだ。
奈緒のランキングも確か4,000万人台だった。
後で涼真さんから聞いたが、都心ほど人が多く残っているそうだ。
それも、都心だと人口密度が高いので、市街地だろうが日本人同士でも戦争が激化している為だ。
『審判の日』を無事に乗り越え、生存をかけたランキング争いが無くなったが、日本人同士の争いは無くならなかった。
半年間もお互いに殺し合いの争いを起こしていた・・・。
怨みつらみがあり、『審判の日』を超えたからといっても今までの事を綺麗さっぱり洗い流して、手を取り合って異世界人を倒そうとの流れにはならない。
これも、謎の声の思惑通りに進んでいるのだろうか……。
そういえば、数ヶ月前にダンジョンが各地で発見されたが、そのときは誰もlv5土地を攻略できずにダンジョンに近づくことが出来ず手付かずだった。
現在、俺がlv5土地を攻略できているので、他プレイヤーがダンジョン攻略に対して、どうゆう対処をしているのか気になった。
俺、ミレーネ、奈緒の3人で、リビングで寛いでいるときにダンジョンに関して、質問してみた。
「数ヶ月前にダンジョンができただろ。異世界ではなんて言ったけ?………そうだ『闇の塊』だ。この世界のダンジョンだと攻略すると何のメリットがあると思う?」
「う〜ん。私が思いつくのは2つくらいかな。1つ目は、私達の元いた世界と同じお宝かな。装備だったり、財宝だったり、でも財宝だと使い道が無いのよね…。というと財宝の線は消えるのかしら?」
俺の問にミレーネが答えてくれた。
「そうだな、財宝だと用途が無いかもな。 そんなもんのために態々危険を犯して攻略しないだろう。高レベルの装備なら、今後の戦いで役に立つだろうから、それはアリだな。」
「2つ目は陣取りバトルに役立つ何か。何なのかは……わからないので聞かないで。」
「なんだそりゃ。まあ、これだけ大それた事をしているので、陣取りバトルに関係する何かだろうがな。」
更に2つ目の考えをミレーネが答えてくれた。
「私はダンジョンが今後の陣取りバトルの攻略の糸口になると思うのよね。例えば、ダンジョンといえば……モンスター。固有のモンスターを配下に出来るとか……まあ憶測だけど。けど、無理をしない範囲で可能の限りダンジョンの攻略を目指すべきだと思うわ。」
今度は、奈緒が自分の考えを話してくれた。
「ダンジョン攻略が陣取りバトルの攻略の糸口であることは確かだと俺も思っている。まあ〜、攻略して見ないとわからないからやるつもりだがね。考えてたら気になって仕方ないから、ちょっとダンジョンを見に行かないか?」
「「いいよ。」」
俺、ミレーネ、奈緒の3人で久々に北茨城市のダンジョンの偵察をしにきたが、結局、他プレイヤー・同盟に動きは見られなかった。
ダンジョンを囲っているlv5土地を取得しているプレイヤー・同盟はいない。
「そういえば、謎の声が、『この世界がダンジョン化する』とか言ってたが、ダンジョン化した世界の中にダンジョンが出来るってどうゆう事だろう……。まあ、考えても仕方ないか。」
考えるだけ無駄なのだろうが、腑に落ちずに気持ち悪かったが、そのことについては考えるのをやめた。
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おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・従属配下 : 6人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒
<他作品>
最強のクズ職〜てめぇら見てろよ召喚士だがこれからは俺のターンだ〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330647505909489
よろしければ、ご覧ください。
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