第三話
「常冬の惑星」(第三話)
堀川士朗
太陽の光は届かない。日中は常に夜のような状態。
朝が来ても同様だ。
また強い風が吹いている。
風力発電にはもってこいの日だ。
地下牧場施設では家畜は牛を十数頭、豚を二十数匹、鶏を六十羽ほど飼っている。食べるためにシメたらまた自動的に次の世代が産まれてきて頭数にバランスを取るシステム。
食肉加工場も完備。
調味液を加えた缶詰めだって、燻製ベーコンだって何だって作れる。
缶詰めは重宝するので大量のストックが既にある。
要するに、僕は食肉を処理し加工する施設を最重要に考えた。
味気ない食事ばかりでは、生きる気力もなくなるだろう?
魚と野菜はアクアポニックスにより育てている。
21世紀初頭、SDGsが叫ばれていた頃に流行ったやり方だ。
SDGs、全くの無駄になっちゃったけどね。
AHAHAHAHAHAHA!
魚は淡水魚だ。
魚のフンが野菜の肥料となり、同時に水耕栽培による野菜は水を浄化する。
循環型の手法。
採れる量はそんなに多くないが、そもそもそんなに僕は野菜や淡水魚を食べないから大丈夫だ。
海水に棲む魚介類も循環海水養殖している。
鮭、ブリ、イワシ、エビ、タコ、アサリその他。
家畜と同様、解体所があって自動的にサクにおろされた魚は真空パックされ、外気温を活用した長期冷凍保存が可能に。
全て磐石だ。
僕しあわせ。
大量のストックはあるものの、大麦、小麦、米、大豆も小規模ながらオートメーションで農業している。
そう。僕の完璧過ぎるコテージは地下施設が広大なんだ。
地下は六層に分かれている。
充分な電力により、これら農業畜産漁業施設には地上と遜色ないだけの紫外線が今も降り注がれている。
適温の中で育てられている動物たちもとても元気だし、僕もいたって健康だ。
磐石だ。
芯から冷える。
温熱靴下を二重に履き、足の指をニギニギ、パッする。
もう、どの季節かも分からない。外の気温はマイナス50℃を示しているから、きっと今は春頃なのだろう。
酒を飲んで沈潜化していく。
このまま、眠りたい。
ビュオオオオオオ。
ビュオオオオオオ。
風の音を聴く。
風の音。
死の音。
心地良い音。
寝袋に入りながら、風の音を聴いて足を外反母趾のところをスリスリ擦り合わせているとそれだけでウトウトしてくる。
絶対安全領域にいる中で聴く激しい風の音は、最強の子守唄だ。
僕はこのまま、眠りたい。
深く。
深く。
続く
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