別れ道

簪ぴあの

第1話

「きっこちゃんがお見合いしたって!」

「とこちゃん、ちょっとばかし、声、大きいで。」

私達が就職をして、一年が過ぎた。今日は久しぶりに二人の予定があい、ショッピングを楽しんだ後、カフェでケーキを頬張っている。

「ごめん。あんまり、びっくりしたさかい……それにしても、きっこちゃん、何があったん?」

「一言で言うと、うちはどうも需要と供給があわへん。」

「需要と供給?」

「要は、うちが好きになる人は、うちのことを嫌いやと言う。逆にうちが嫌いなタイプが寄ってくる。なんでやねん。」

「きっこちゃんの好きなタイプってどんな人なん?」

「リーダーシップがある人。ぐいぐいうちのこと、引っ張ってくれる人。」

「ほな、きっこちゃんに寄ってくる人は?」

「なんや、陰気で暗い人が多いねん。なんでやろ。」

「せやなあ、多分、自分にはないものに憧れてはるのとちゃうか。ほら、きっこちゃんは弁が立つから。リーダーシップがある人がええって、きっこちゃんは言うけど……そやなあ、きっこちゃんと似た者同士になってしまうから、かえって具合悪いとか。ごめんな、こんな事言うて。気い悪うせんといてや。」

「わかってる。うちは、片想いと失恋にくたびれた。」

「それで、お見合い?」

「親戚のおばちゃんがうるそうてな。断る気力ものうて、会うだけやと思うたんやけど。」

「それで?」

「三回目のデートで、結婚してくれて言われた。」

「ええっ!」

「とこちゃん、声が大きいて。」

「せやかて、たった三回で決めるか、普通…」

「うちも、そう思て言うたんやけど。」

「なんて?」

「他に、赤い花も黄色い花も咲いてますよって。」

「きっこちゃん、そんな、文学的な言い方で、相手の人、ちゃんと意味わからはったんか?」

「多分。それは考えられへんって言うてはったから、意味はわかっていると思うで。」

「それで?まさか、きっこちゃん、結婚するんか?」

「うん。なんやうれしかったし。とこちゃん、日取りが決まったら、結婚式に来てな。」

「ええっ!」

「とこちゃん、せやから、声が大きいて。」


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