おしゃべり

簪ぴあの

第1話

「きっこちゃーん!」

「とこちゃーん!」

私達は同い年で幼稚園に行く前からの仲良し。小学校六年生になった今も、家が通りをはさんで向かいあっているので、学校から帰ってからも、一緒に遊んだり、宿題をしたりする。今日もランドセルを家に置いたとたん、とこちゃんがうちに来た。

「きっこちゃん、今、うちのおばあちゃんがヨモギ餅、作ってくれてはんねん。うちにおいで。」 

「ありがとう。せやけど、うち、家からでられへん。お母ちゃん買い物行ってんねん。留守番やねん。」

「そうか、ほな、ヨモギ餅、持って来てあげるわ。武志くんの分も。」

しばらくして、ヨモギ餅をのせた大きなお皿を持って、とこちゃんはうちに来てくれた。小学校一年生になったばかりの武志は嬉しそうにヨモギ餅を頬張っている。

「武ちゃん、いっぱいお餅食べや。」

とこちゃんは私の弟をかわいがってくれていた。

「きっこちゃん、おばちゃん、遅いな。」

「お母ちゃん、買い物だけやのうて、誰かとしゃべってんねんわ。」

とこちゃんと他愛のない話しをしていると、玄関で声がした。

 新聞配達をしている秀子おばちゃんだ。毎月、月末になると集金にくる。お母ちゃんから預かっていたお金を払っても、秀子おばちゃんはなかなか帰らない。

「お彼岸は本家に行ったんか?」

「お墓参りしたんか?」

「何、お供えしたんや?」

そんなこと、どうでもいいやん、と思いつつ、適当に答えておく。

「誰か来てはるんか?」

秀子おばちゃんは奥の気配を伺う。とこちゃんが人差し指をたてて、武志に、しーって言ってくれているんだろう。物音一つしない。


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