6.自棄の翌日

 翌日、出社してみると、

 桜木の所属する部署に届ける資料があった。

 ちらりと見ると上機嫌でPCに向かっているようだ。

 

 以前とは変わった化粧、正直可愛い。

(きっとうまくいっている。

 イケメンって言っていたし、

 細身が好きって言ってたし)


 悲しきかな俺は、ゴリマッチョ……


 情けない。

 ただただ見ているだけの自分が。


 会社の先輩にも勝てそうにない。

 合コン紹介の奴にも。


 みじめさをかみしめながら

 いつもの上司とペアで仕事になる。


「確かに変わったよな。

 垢抜けたというかテイスト変えたというか。


 次もあってみたらどうだ?

 その美人さんに。

 美女と野獣なパターンもありかもしれないぜ。

 俺の同期にもいたなぁ」



 そうなんだろうか。

 会社終わりに家まで歩こうかと思い立つ。


 まとまらない思考。

 美女と野獣……


「あっさみねー」

そこには男と手をつないで歩く桜木の姿があった。

「どうしたんだ? 男と一緒か?」


「うん。婚約者殿なのよぉー」


 ケタケタ笑う彼女は

 やはり天然だった。


「どうも」

「桜木がお世話になっていたようで」

「うん。仕事の時ドリンクくれたりした人なの」

「へぇ。お世話になったようで」

頭の回転の速いイケメンには朝峰の気持ちはバレバレらしい。


イケメンの威嚇はまた怖いものだ。

「もう大丈夫ですので」

それに気が付かない天然さん。

「こんど、誰か女の子紹介するねぇ」


幸せそうに二人は歩いて行った。

「あの酔っ払い……にくたらしいっての」


『天然で優越感感じてるのかもね』


 美人の言葉が頭をかすめた。

 確かにそうかもしれない。


 無性に親に会いたくなった。会えないけれども。

 その次に思い浮かんだのは佐々木麗華。

 なぜだろう?


 明日も仕事だ。

 クールにいこう。

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