<共通ルート フレンルート> 六章 知らされる真実
それから一日中警戒していたのだがヒルダさんとレオンさんが仕掛けてくることはなく、気が付いたら翌日の早朝になっていた。
「すぐに何か仕掛けてくると思っていたんだが……意外だな」
「とりあえず朝ごはんでも食べる?」
「そうだね。何か起こってからじゃゆっくり食べている暇はなくなると思う――な、なに?」
フレンさんが考えていた展開と違うことに不思議がる。姉がそう提案したので私もそうしようと口を開いた時部屋の中に魔法陣が現れ辺り一面が輝きに包まれる。
「っ! ヒルダ……レオン……」
「「……」」
光が治まるとそこにはヒルダさんとレオンさんの姿がありフレンさんが警戒して身構えた。まさか転移陣を使って部屋の中に入って来るなんて……これからどうなってしまうのかな?
「おっと、そう警戒するなよ。オレ達はもうあんたの敵じゃないんだから」
「どういうこと?」
レオンさんの言葉に姉が不思議そうに首をかしげ尋ねる。
「だ、だから。わたし達は貴方達に協力するって言ってるの」
「命令に逆らうってことか。どうしてだ」
ヒルダさんの言葉にフレンさんも尋ねる。たしかに黒幕と繫がっている二人が私達に協力するなんて一体どうしてそんな手のひらを返すような真似になったんだろう?
「貴方の側に彼女達がいたからよ。彼女達を巻き込むわけにはいかない。だから……考えた末に貴方に協力することを決めたの」
「私達がいたから……でも、私達ヒルダさんとは出会ったばかりですよ」
彼女の言葉に私は分からなくて問いかけた。ヒルダさんとは出会ったばかりなのにどうして私達の事を守ろうとしてくれるのだろうか。
「そ、それは……そんな事よりもわたし達が知っている情報を教えてあげるわ。貴方もある程度の事は勘づいていると思うけれど、わたしとレオンは万が一貴方が生き延びた場合に貴方を探し出し始末するよう命を受けてこの国に潜伏していたの」
「やはり、か」
ヒルダさんが何事か考えると話を変える様に説明しだす。フレンさんが思っていた通りに二人はこの国に潜伏してたんだ。
「それで、俺の命を狙えと言った奴は一体誰なんだ?」
「「……」」
フレンさんの言葉に二人はなぜか迷うように黙り込む。
「どんな事実であったとしても受け止める覚悟はできている。だから、教えてくれ」
「分かったわ……貴方の命を狙うように命令したのは女王様よ。そして女王様の命を受けたカーネルがわたし達を刺客としてこの国に送り込んだの」
「船の上であんたの命を奪うように命じられたけれど、あんたの姿は確認できなかった。あんたが生き延びた場合助けを求めるのは隣国であるこのオルドラだ。だからこの国に潜伏してあんたの事を探し、見つけ次第抹殺するよう命を受けていたんだ」
覚悟はできていると言いたげな彼の言葉に二人が説明する。女王様って言っていたけれど、フレンさんとその女王様はどんな関係に?
「……そうか。薄々そうじゃないかとは思っていたが、やはり……な。そうじゃなければよいと思っていたが……こうも勘が的中してしまうとは」
「フレン、大丈夫?」
彼がとても悲しそうな顔で呟く。その様子に姉も心配して声をかけた。フレンさんがこんなにつらそうにしている姿初めてみた。女王様ってもしかしてフレンさんの……
「いや、大丈夫だ。いまは、まだ……それで、協力すると言っていたが、女王とその周りの者達を捕まえるために何か手はあるのか?」
「女王は古代魔法を復活させるとかって言っていたわ」
姉の言葉に答えるとヒルダさん達に尋ねた。それに彼女が答える。
「古代魔法? ……まさかあの禁断の破滅の魔法の事か?」
「おそらく、それを使って戦争をするつもりなんだわ。世界を掌握して第二王子を王座に据えるために……」
驚く彼へとヒルダさんが説明する。古代の禁断の破滅魔法……それを使って世界と戦争をするって……そんなことになったら世界中が大変な事になるんじゃ。
「何とかして止める方法はないんですか?」
「方法はなくはなくてよ。昔同じように古代魔法を発動させて世界を混乱におとしめた時期があったの。その時封印の魔法を発動させた人がいた。それにより魔力が封印され魔法を発動できなくなり戦争は終わった。……でもその封印の魔法自体も古代魔法らしいから、それを扱える人はいないと思うの」
私の言葉にヒルダさんが説明する。魔法を封印する魔術か……それも古代魔法で今では扱える人もいないんじゃどうすればいいのかな。
「だからその時の人を探し出して協力してもらえるように頼めば、女王の野望を阻止することはできるわ」
「それじゃあ、その人を探し出してザールブルブへ向かえばいいのね」
「ティア、フィアナ。いるかしら?」
話し合いをしていると誰かの声が玄関から聞こえてきた。
「今の声はルチア?」
「お邪魔するわね……ティア、フィアナ大変なの。大変な事になったわ」
姉が驚いていると玄関からルチアさんが慌てた様子でリビングへと駆け込んできた。
「どうしたの? 何が大変なの」
「ルシアから伝言があってね、ザールブルブの女王様が兵士を大量に集めているんですって。隣国の王子様が行方不明になったのはこの国の陰謀なんじゃないかって噂が流れてるみたいで、それを聞いた女王様が兵士を集めてこの国と戦争をするつもりらしいの」
「なんだって?」
姉がとりあえず落ち着いて説明してとばかりに尋ねるとルチアさんが息継ぎなしに捲し立てて喋った。この国の陰謀? 戦争を始めるって……どうしてそんなことに。
「町中その話のせいで騒がしいのよ。今すぐこの国を離れて中立国であるコゥディル王国に非難すべきだって。あなた達も早く逃げるように準備した方が良いわ」
逃げる? 戦争が起こるのだからそうした方のが良いのだろう。だけど……姉を見ると同じ気持ちなのだろうお互いしっかりと頷き合う。
「ルチア……私は逃げないよ。ここに残って私のやれるべきことをするわ」
「私も逃げない。私は戦争を止めるためにできる事があるなら、その方法を最後まで考えて見せる」
「ふ、二人とも何言ってるの? 戦争が起きたらここも危険になるのよ。命を奪われるかもしれない」
私達の言葉に彼女が驚いて言い聞かせるかのように話す。
「それでも私はこの国に残るよ。私にしかできないことが必ずあるはずだから」
「私も最期までお姉ちゃんと一緒にいる。もしかしたら私達ならなんとかできるかもしれないもの」
「ティア……フィアナ……分かったわ。二人がそこまで言うなら、もう止めない。本当はわたしも一緒に手伝ってあげたいのだけれど、わたしには何も出来そうにないから、だからみんなと一緒にコゥディル王国に避難しているわね。二人とも気を付けて。何かあったらルシアとルキアを頼るのよ。あの二人なら協力してくれるわ」
私達の意志の固さに折れたルチアさんがそう言って微笑む。
「本当に逃げなくて良かったのか?」
「とても危険な状況になっているんだぜ。君達だけでも逃げることは可能だったのに」
「乗り掛かった舟だもの。ここまで来たら最後まで付き合うわ」
「そうだよ。ここまで来て私達だけ逃げるなんてできないもの。私達も最後まで手伝わせて」
フレンさんとレオンさんの言葉に私達は力強い口調で言う。
「それじゃあ、改めて、これからよろしくお願いするわ。それから……わたしの本当の名前はドロシー。ヒルダという名は潜伏している間の偽名なの。だからドロシーって呼んで頂戴」
「分かった。ドロシー、レオン。二人は封印の魔法を使える人物を探し出してきてくれ。俺はザールブルブに向かい女王を止めてくる」
「私も一緒に行くわ。フレンだけにさせられないもの」
フレンさんの言葉に姉が直ぐに決断を下しついていくと言った。
「私も一緒に――」
「いいえ。フィアナ。貴女はわたし達と一緒に来てもらいたいの。その、わたし達だけじゃ探し出すのに時間がかかりそうだから人数が多い方が良いと思って」
私も一緒に行くと言いかけた時ドロシーさんが待ってといった感じに口を開く。
「そうだな。ティアだけでも守り切れるか不安がある。フィアナはドロシー達にくっついていってくれた方が助かる」
「でも明らかにそっちの戦力が足らなくないか? それにこっちも女二人をオレだけで守り切れる自信はない」
「なら、ルシアとルキアに頼んでみるわ。あの二人なら協力してくれるはずだから」
フレンさんの言葉にレオンさんが尋ねる。姉がそれならといった感じに説明した。たしかにルシアさんとルキアさんが一緒なら大丈夫な気がする。
「よし、それなら早速外に出てルシアとルキアに会いに――」
「ちょっと待った。今外に出るのはやめておいた方が良いぜ。この辺り一帯女王が放った密偵がうろうろしてるからな。見つかったら即殺されるぜ」
フレンさんの言葉にレオンさんが待ったをかける。そう言えばこの前ルシアさんが怪しい人がうろついてるって言っていたけれど、それって女王様が放った密偵だったのね。
「わたしが転移陣を使ってそのルシアとルキアって人に会いに行くわ。そうね、レオンは何かあった時のための護衛で連れて行くわ。それからティア一緒に来てくれるかしら。貴女が一緒なら二人も話を聞いてくれると思うから」
「分かった。それじゃあちょっと行ってくるね」
ドロシーさんが言うとレオンさんと姉を連れて転移魔法を使って王宮へと向かっていった。
これからどうなるのか分からないけれどきっとうまくいくよね?
ドロシーさん達が戻って来るまでの間私はフレンさんと二人で待つ。……今まで姉が一緒だったから平気だったけれど、男の人と二人きりって緊張するなぁ。
「フィアナ。これからどんなことになるか分からない……だから気を付けて」
「う、うん。フレンさんも無理しないでね」
フレンさんが話しかけてきたので私は慌てて答える。
「それより、フレンさん。顔色がよくないけれど大丈夫?」
「……」
私の言葉に彼は何事か考えこむように黙り込む。
「正直に言うと冷静ではいられないし、あんまり大丈夫でもない。実は女王は……俺の実の母親なんだ。俺は昔から母親に愛されていないんじゃないかと思っていた。魔法国家である俺の国では魔力に秀でた者が優遇される。俺は生まれた時から魔力が低かった。いくら努力をしたところで魔法の力が強くなることはなくて、だから剣術も習い勉強も頑張り母に認められるように頑張ってきた。だけど、母は弟が生まれてくると魔力に秀でた弟だけを愛するようになった。本当は俺なんかより弟の方が王位を継いだ方が良いと考えていたんだな。だから……今回の事を企てた。俺を消し去れば弟がおのずと王位を継承することになるからだ」
「フレンさん!」
辛そうに話す彼の姿を見ていられなくて私はそっと抱きしめた。
「フレンさんはお母さんに認めてもらいたくて今まで頑張ってきたんだよね。その努力は計り知れないほどで、とてもすごい事だよ。今はお母さんに愛情を注いでもらえていないって感じていたとしても、フレンさんをここまで育てあげてくれた人が愛情を持っていなかったなんて思えない。それに……今回の事が無ければ私達はフレンさんに出会えないままだった。だからどんな形であれとても感謝している。フレンさんに出会わせてくれて、フレンさんの側にいさせてくれて……フレンさんをこんなに想っている人が側にいるんだってことどうか忘れないでいて下さい」
「フィアナ……有り難う」
フレンさんの事を想っている人がいるんだってことをとにかく伝えたくて、お母さんだって愛情を注いで育ててくれていたんだって知ってもらいたくて私は溢れんばかりの気持ちを素直に伝える。彼は本当に嬉しそうに感謝の言葉を述べた。
これからフレンさんが目の当たりにするものが何であるのか私には分からない。だけど、どうかこれ以上この人を苦しめる事の無いようにとただそれだけを願うだけである。
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