第10話

店の開店時間がやってきた。


お客が何人も来た。その度に健たち4人は、お客に向かって愛想よく「いらっしゃいませ!」と声をかけていた。


デビルグリードの頭領と、いつもの戦闘員1人が2人で、いつも通り、普通の服で来店した。


相変わらず、健たちは全く気が付いていなかった。


この日は千鶴が対応した。「いらっしゃいませ。」と2人に暗い声で対応した。


頭領は気を遣って「千鶴ちゃん、真面目だね。まずは、ビールと枝豆、お願いね。」続けて「ここの枝豆は茹(ゆ)で加減がちょうどよくて、ほんのりとしょっぱくて、塩加減がいい頃合いだよ。」と枝豆の感想も付け足した。


千鶴は「はい。承知しました。」とオーダーの品物を伝えに行った。


戦闘員が頭領に「あいつ、相変わらず暗いですね。頭領が枝豆を褒めてるのに、愛想のないやつですね。おまけに近寄られたら、あの恐ろしいパワーを思い出して寒気がしますね。」


頭領も「真面目しか褒めようがないな。暗い。しかも百合だ。まあ、どちらにしても、やつらは、こちらに情報を流れているのも知らないで、いい気なもんだな。」


オーダー品は、すぐに楓梨が持ってきた。


楓梨が「社長さん、いらっしゃいませ!いつも、ごひいきにありがとうございます!ビールと枝豆です!」


楓梨は愛想がよいのが売りなので、この日も相変わらず、愛想がよかった。


頭領が、うれしそうに「ありがとう!楓梨ちゃん!今日も可愛いね!あんたの顔を見にここに来てるんだよ!今日も会えてよかったよ!」と楓梨を喜ばせた。


楓梨は、うれしくなって「いやだ~、社長さん、うれしい!」と言って、楓梨は頭領の肩を軽く小突いた。


戦闘員は頭領が楓梨に小突かれたのを見て、戦いのシーンをとっさに思い起こし、ワンツーの構えをした。しかし、小料理屋に来ているのを思い出し、ごまかすようにワンツーの構えから両手の手のひらを見るフリをした。


戦闘員は、自分のミスの不利を隠そうと四苦八苦しているのに、頭領は、それに気づかず、楓梨と話して、うれしそうに笑っていた。それを見て、戦闘員は頭領を疑い深く見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る