店の中がざわついている時だった。新たに２人の客が来た。それは、常連客の悪の組織・デビルグリードの頭領と男性戦闘員１人を連れ立って来た。しかし、健たちは常連客の頭領と戦闘員のことは未だに気が付いていなかった。

楓梨が愛想よく声をかけて、４人掛けのテーブル席に２人を案内した。

楓梨は「いつも、来ていただいて、ありがとうございます。いつものビールにしますか？」と尋ねた。

頭領は「楓梨ちゃん、今日も可愛いね。まず、ビールと冷奴（ひややっこ）と卵豆腐を頼むよ。」とオーダーした。

楓梨は「かしこまりました。社長さん。」と言って、健たちにオーダー品を伝えに行った。

戦闘員がコソコソと頭領に「いいんですか？今日もここで散財して。」

戦闘員は頭領の懐具合（ふところぐあい）を心配していた。

その質問に対して、頭領は「いいに決まってる！健たちは、ワシのことをどこかの工務店の社長と思っているらしい。頭領（とうりょう）だけに棟梁（とうりょう）だと思っているようだ。それぐらいワシの化け方がうまいということだ。それを確かめに来ているのさ。」と、うれしそうに語った。

戦闘員は「さすが頭領ですね！目の付けどころが違います！」と褒めた。

戦闘員は、誉め言葉を忘れなかった。

頭領は自分の策略がエコーズに対して、軌道（きどう）に乗っていると戦闘員に褒められているようで、うれしさでいっぱいだった。

千鶴が、冷奴と卵豆腐を運んできた。冷奴はトッピングに、小口ネギと、すりおろし生姜（しょうが）が添えられていて、卵豆腐は青シソが刻んで乗せられていて、タレがかかっていた。

頭領と戦闘員は冷奴に醬油をかけた。

頭領が一口、冷奴を口に入れた。「この豆腐は、かすかに甘いな！生姜と小口ネギの薬味が少し、しょっぱい醤油に絡んで、うまいな～。卵豆腐も、お口の中で上品につるんとしている。香り物の青シソが乗っていて、タレと食べると絶妙に、うまいな～。これだから、この店は、やめられないな～。」と独り言のように言った。

戦闘員が「頭領のおっしゃる通り、ここの料理は、うまいですね～。しかし、さっき、おっしゃった“この店は、やめられない”とは、どういうことなんですか？」と尋ねた。

頭領が「あっ？そんなこと言ったっけ？あ～、それは、エコーズを早く倒したいということばかり考えているので、心にもないことを言ってしまったのかもしれないな。すまん。」と一応、戦闘員に下手（したて）に出て、謝った。

戦闘員が「お疲れですね。」と言ったものの頭領が“お口の中で”とか“この店は、やめられない”とか言ったので、少し頭領を疑い深く見ていたようだ。

頭領は、この時、戦闘員の視線を感じて、味方の戦闘員と健たち４人から神経を使うことになった。

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