ギルマスの俺がギルドから追放されたんだが?〜

宵桜

第1話 追放

「シルバ、お前はギルドから追放だ!」


 いきなり部屋に入ってきたアレスにこんなことを言われた。


「待て待て。どうしてギルマスの俺が追放されるんだ?普通逆じゃないのか?」


 そう俺はギルド【夜明け】のギルドマスターなのだ。そしてアレスはうちのギルドメンバー。


 普通なら逆のはずだがどういうことか、俺が追放されそうになっている。


「簡単な話だ。これから俺がギルドマスターになるってことだよ!既に手続きも終えている。既にお前はギルドマスターじゃないんだよ!」


「はぁ?お前がギルマスに?俺はそんなのに許可した覚えは無いぞ。」


「それは私が許可したからですよ。」


 そうしてアレスの後ろから入って来た女性。


「マリアが?一体どうやって?」


 マリアはサブマスターにしていた。なのでそれなりの権限は持っているが、ギルドマスターの変更には、当人のサインがいるはずなのだ。


「そんなことはどうでもいいだろ!既に手続きを終えている以上、俺のギルドにお前のような無能はいらないんだよ!」


「いや無能って。これはお前達ギルドメンバーのサポートをしてきた結果なんだが・・・」


 ギルド設立当初は、当時いたメンバーとクエストをこなしていたが、人数が増えたことによりギルマスの仕事に専念するようになった。そのため俺の格は当時から上がっていない。


「それにお前に今まで俺がしてきた仕事こなせるのか?多分お前が思っている以上にきついぞ?」


 格が上がらなかった、要因に仕事量が増えたことがある。


 俺のギルドのモットーは全員生きて帰ること。


 一見簡単そうだが、冒険者という職業上常に危険が付きまとう。俺はメンバー全員が無事に帰れるよう、クエストの内容を細かく調べ、少しでも危険を減らしてきた。それをパーティー全て。


 それをアレスができるとは到底思えなかった。


「はっ!無能にできていたんだ。俺に出来ないわけが無い!わかったならさっさと出ていけ!」


「私より弱い人が上にいるのが不満だったんですよ。これで清々します。」


 こうして俺は自分が設立したギルドを追放された。


 ――ギルドを追放されてから、


「さて、これからどうしようか。貯金も全然無いんだよなぁ。」


 俺はギルドとしての収入をほとんど所属しているメンバーのために使ってきたため、貯金は無かった。


 今あるのは、【夜明け】が有名になりだした頃に届いた防具と1振りの刀だけ。


 野宿しようか悩んでいたところ。


「あれ?シルバさん?こんなところでどうしたんですか?」


 不意に後ろから声をかけられた。


「ん?あんたは確か【星渡り】の。」


「はい。【星渡り】に所属している、アカネです。あのシルバさんに覚えて貰っていて光栄です!」


「あぁそうだった、アカネだったな。それでどうしたんだ?」


「いえ、滅多にギルドから出ないシルバさんが、外にいたので声をかけただけなのですが、何かあったんですか?」


「いや、ついさっきギルドを追放されたばかりでな、これからどうしようか考えていたとこなんだ。」


「えっ!?シルバさんが追放!?一体何があったんですか!?」


 そこから俺はギルドを出るまでの経緯をはなした。


「サブマスターが文書の偽造とか聞いたことがありませんよ!どうして本部に言わなかったんですか!?」


「いや、弱いのは事実だし、アレスはともかくマリアがいればどうにかなるだろうと思って。」


「甘い!甘いですよシルバさん!砂糖を煮詰めたくらいに甘いです!」


「いや、甘いもんをさらに濃縮すんなよ。」


 砂糖を煮詰めるとか想像もつかないぞ。ヤバい考えただけで口の中が甘くなってきた。


「それに甘いとかいってるけど、俺としては本部に言う方が甘いと思うぞ。」


「どうしてですか?」


「マリアがいればどうにかなるのは、運営だけでそれ以外の部分はアイツらが寝らずにやっても終わらないと思うからな。」


 それまでに俺の仕事量は多かった。徹夜なんて当たり前、疲れはポーションを使うといった、重労働だった。


「それに俺自身もそろそろ、メンバーに任せて冒険者に戻ろうと考えていたしな。」


「そうだったんですか。けど、あのギルドには誰も残らないと思いますよ。」


「どういうことだ?」


「いえ、そのうちわかると思います。それより、行くところがないなら、うちに来ませんか?」


 アカネが意味深な事を言ったと思ったら、【星渡り】勧誘された。


「【星渡り】にか?言っちゃ悪いが役に立てないぞ。ブランクも結構あるし、なんなら格なんて1桁だぞ?」


 アカネが俺の事を高く評価しているなら、それは間違いだ。


「そんな事ありませんよ!ただ私はシルバさんと一緒に活動したいだけで・・・」


 段々と声が小さくなっているが、言いたい事はわかった。


「はぁ、わかったよ。どうせ行くとこもないんだ。お世話になるよ。」


「ホントですか!じゃあ早速ギルマスに話してきますね!」


 そう言うと、アカネはギルドがある方へ走っていった。


「ったく。こんな俺のどこがいいんだか。」


 そんな事を呟きながら、俺はギルドへと向かった。

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