転生者の再始動(リブート) ~ 無能力者だと思っていた俺は、すべてを”先送り”にします~

ねらまヨア

???

 「さぁ、来るがいい」


 そう言って両腕を広げると、その間から魔法陣が浮かび上がり、その中から出てくるのは無数のアンデッド。その数は十、百、いや、千。


 「―――――ッ!!!!」


 アンデッドはこちらを敵として認識すると、武器を構えてこちらへ突撃する。一人であれば簡単には突破できない壁だが


 「このザコ共は任せろ! 突っ込め!」


 ―――は持っている武器を勢いよく振り回す。かつて鬼神と呼ばれていたその力は健在であり、次々と敵をなぎ倒していく。倒れたアンデッドは小さな光となり宙へと浮かんでいく。そして目の前には一つの道ができる。攻めるなら今だろう。


 「ありがとう! ―――、行けるか?」


 「もちろん! 私の手、ちゃんと掴んでよね?」


 彼女は――の手をつかみ走り出す。それはここにいる誰よりも速い。

 行かせはしないと飛び掛かる敵の間を避け、行く手を阻む大きな敵には跳躍で飛び越えてみせる……が、その体はあまりにも大きすぎた。


 「待って……っ! 飛距離が足りない……っ!」


 「―――――ッ! これで大丈夫でしょう! 立ち止まってる暇なんかありませんよ!!」


 彼は大きな風で二人をより高い位置へと吹き飛ばす。跳躍を活かして、ともに吹き上がった敵を足場に進む。進む。進む。


 「ほう、すべてをかわしここまで来るか。ならば、これは避けられるかな……?」


 ―――まであと数メートル。彼が両手をかざし、生み出すのは巨大な闇。それは鋭利であり、すべてを飲み込み、すべてを無へと還す。まさに恐怖そのものだった。


 「―――よ、今ならまだ逃げられるのではないか? 我はお前のすべてを見てきた。迫る選択肢に対していつも判断を決めかね、決断というものから逃げてきた。結末に向き合うことをせずに目を背けてきた。今お前に迫るのはその結末! さあ、すべてを捨てて逃げるがいい!」


 「逃げるなんて絶対にしない! 俺はこの旅で向き合う理由を知った! 力を知った! 結末を受け入れる勇気を知った! 俺はお前を倒しすべてを終わらせる! そして再びやり直すんだ! これが俺の力だ!」


 「絶対的な力にも恐れず立ち向かう、か。いいだろう」


 ――はニヤリと微笑むと、闇を――へと照準を合わせる。もう避けることは不可能。しかし、彼には能力スキルが存在する。たとえ絶望的な状況だとしても、それを覆してしまうような特別な力が。


 そして、――は、声高々に叫ぶ。


 「――――――っ!!!」



――――――――――



――――――



―――





 これは、現実から目を背けてきた―――が、魔王と戦うまでの物語。


 話は、転生前に遡る―――――。


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