第25話 衝撃の最終回
その一週間後。
今日はいよいよラミ丘アニメ最終回放送日だ。
ツイッターでは「ラミレスの丘公式アカウントが「本日夜最終話放送! お見逃しなく!」というツイート告知を流しており、いよいよ今夜で終わるのだと実感させられる。
「今日で終っちゃうんだよねえ……この数か月、ずっとラミ丘が楽しかったのに」
高校入学当初から毎週ずっと楽しみにしていたアニメが終わる。
「でも、だからこそ今夜の最終回はきっちり見守らなきゃ!」
音乃は最後だからこそ、しっかりと見届けようと思った・
深夜のアニメ放送10分前、音乃はいつものごとく自室のテレビの前でスマホをいじっていた。
ツイッターでは最終回リアルタイム実況をする為のツイートでタイムラインは賑わっていた。
「いよいよもうすぐ最終回……覚悟はできた」
「最後までロシウス達を見守る!」
「最終回wktk」
「この日の為に生きてきた!」
そういった最終回を寂しいと思いつつ、楽しみだという前向きなツイートも多かった。
今日の放送が終われば、翌週からはもうラミ丘のアニメが見れなくなるというのはあるが、それならばファンが最後まで本編放送を見届けたいと。
放送時間が近づき、コマーシャルが流れるテレビ画面を見つめ、音乃は「もうすぐだ」とドキドキしながら待っていた。
そして、ラミレスの丘の映像になった。いよいよ本編が始まった。
「始まった!」
音乃は息を飲んだ。
オープニングなしの、アバンタイトルから本編映像にテロップがかかってる演出。
いつもと違う、これが特別な回なのだということを実感させられる。
テレビ画面ではキャラクター達が動く。
今まで何度も見てきたはずのキャラ達が、最終回ということもあってか今日は違うものにも見えた。
『ロシウス様、ついにラミレスの丘への手がかりを見つけられたのですね!』
町人の協力により、ロシウスがラミレスの丘への手がかりを見つけた
「ああ、これでようやくそこへ行くことができる!」
ロシウスが手がかりを見つけ、宿に泊まったその夜だ
『ラミレスの丘には、行かせんぞ知っているものは処分せねばならぬ」』
ラミレスの丘への手がかりをつかみかけたロシウスのいる町に、ラミレスの丘へと繋がる守護神たちがロシウス達に刺客を送り、敵の攻撃で町を巻き込みむ派手な映像の後に町中に倒れる人々。攻撃により多くの犠牲者が出たのだ。
『しっかりしろ!』
ロシウスが倒れていた町人の一人に話しかけた時だ。
『ロシウス……様、きっと……あなたなら、ラミレスの丘へ……行ける』
『しっかりしてくれ!』
『どうか、ご武運を……』
ロシウスにそう言ったところで町人はこと切れた。それを見て泣くロシウス。
同じ町に宿泊していたアミエルがロシウスに駆け寄り、テレビ画面の中ではロシウスとアミエルがシリアスなやりとりをする。
『お前がくじけてどうするんだ!?こんなところでお前が諦めていいのか!?』
『だけど! こんなことあっていいはずがない!』
『ロシウス、運命を受け入れるしかないんだ』
泣くロシウスをアミエルが叱責した。
『この町の人々だって、お前をラミレスの丘に行かせたいからこそ、あの情報をくれたんじゃないのか? お前がここでくじけたら、ここの皆はどうなる!?』
皆を助けられなかったことについて悔やむロシウスをアミエルが説得するシーンだ。
『お前が目的を達成させることを町の人々だって望んでいたから協力してくれたんじゃないのか!?お前がここで諦めたらここの人達の死を無駄にすることになるんだぞ!』
原作の一番シリアスな場面を最終回に持ってきたのだ。
最終回という緊迫感も相まって、その演出が泣けてくるようだった。
「アミエルとロシウス、なんだか今日はいつもより一段と真剣に見える……!」
最終回という演出がかかり、いつもと違う空気がより一層シリアスな雰囲気ををかもしだす。
原作でも同じ場面はあったはずだが、今日はそこがテレビアニメ最終回となるのである。
ストーリーはすでに知っていてもそれだけで特別感があった。
「この場面、漫画で何度も読んだはずだけど、泣けてくる気がする……」
それは最終回といういつもとは違う感情を抱く回だからなのか。
画面を凝視している間に、あっという間にAパートが終わる。
その間にテレビコマーシャルが流れた。
緊張した前半を見て、その合間に流れるコマーシャルはいつも通りの宣伝で、少しだけ今までと同じ感情に戻れたような気がした。
スマホでタイムラインを見ると、「残り13分」「2人の運命は!」
「原作のあの話を最終回でしたスタッフ神!」といった実況ツイートであふれる。
そして始まるBパート。
Aパートの続きがそのまま流れる。
『なんで……みんなが……』
これまで親しくしてきた者達を失ったことを引きずり、翌日になっても落ち込むロシウスの元へアミエルがやって来る。
『俺はお前のそういうところを昔からいいと思っていた。人々を想うことも、気持ち大事にするところも。悲しいのは俺も同じなんだ』
アミエルがロシウスにそう言葉をかける。
ツイッターの実況には「アミエルの告白キター!」「最終回でこの台詞!」「やば、涙出てきたスタッフGJ」といったツイートが流れる。
「このシーン、原作でも読んだはずなのに、アニメで見ると泣ける……」
音乃はそう呟いた。
最終回というただでさえ普段と違う回なのが、終わりに近づいているということもあるのか、感動がますます大きくなる。
そして最終回にアニメオリジナルシーンが挿入される。
『この世界のしきたりだろう? 学ぶ為に旅に出る、それはこれからのことを決めるためだ。お前がこれまでに得てきたものはなんなんだ? それはお前にとってどれも大切なものだったんじゃないのか?』
アミエルがロシウスに勇気を出させるシーンだ。
「これ、原作にないシーンだ!」
音乃は漫画にはなかったシーンだとすぐにわかった。何度も読んできた漫画だからこそ、すぐにアニメと漫画の違いに気づける。
『お前がこれからも旅を続けることこそが、これまでの経験を生かすことなんだ』
アミエルのその台詞に、音乃は自分までが勇気づけられるような気がした。
『うん、そうだね……、僕が……これからも頑張らなきゃ』
アミエルの言葉でようやく立ち直れたロシウスが未来へ希望を抱く。
絶望の中にいたロシウスをアミエルが救ったのだ。
当然ながらツイッター実況のアミロシ民は「これもう公式アミロシでしょ!?」「アニオリやべえ!」「最終回が公式アミロシ!」と沸き立つそれを見て音乃も改めて感じた。
「やっぱり私、アミロシ好きだなあ…‥。こういうアミエルが年下のロシウスをひっぱるみたいなところ、凄く良い」
まさにアミロシ好きにとっても感動だと思えた。
放送時間終了まで残り数分となった。
「もうすぐ終わる……」
音乃は最終回を最後の最後まで見守ることにした。
残り放送時間は1分1分をかみしめるように、本編に集中した。
『僕は、これからも旅を続ける!』
ロシウスがそう決意をし、1話と同様に立ち上がったところで、テロップが表示される。
「これが……エンディング……なんだ」
エンディング映像はカットで本編にテロップがかかるという特殊EDだ。
オープニング同様、いつもと違うエンディングの入り方に、いよいよ本当に今日で終わるのだと実感した。テロップがアニメ映像に表示されたまま、本編が進む。
映像はこれまでの旅で立ち寄った町のその後や、関わった人々の様子が流れ、時折ロシウスの回想が映し出される。
これがテレビ放送で見れる最後のラミ丘だと思うと、その終わりの時間が続いているのだと。
ツイッター実況は「とうとう終わる……」「アミエルの言葉で旅を続ける決意をするとかこれなんてアミロシ?」「まさにアミエルがロシウスを救った!」「いい終わり方だった」と盛り上がる。
そして特殊EDも最後に「ラミレスの丘制作委員会」というクレジットと放送局のテロップが表示される。
いよいよ「ラミレスの丘」アニメが幕を閉じようとしていた。
「終わっちゃうんだね」
特殊EDの締め方に、いよいよ本当にこのアニメが終わるのだと思った。
この楽しかった3カ月間も、アニメ放送を視聴いう形は終了するのだと。
「でもこれからは原作があるから……まだ楽しめるはずだよね。私のラミ丘好きだって」
これまでも何度も言い聞かせてきたことに、再び言い聞かせた。
アニメ最終回はあくまでも一区切りでしかない、と。
音乃がそう言い聞かせて、テレビ画面を凝視していたところだ。
突然テロップ表示のみの本編から場面が切り替わる。
「あ、あれ? まだなんかあるの?」
終わったはずの本編がそのままコマーシャルにもならず、謎の画面になった。
何やら暗いシーンが映し出された。
『そうか、あのロシウスとかいう小僧が、なるほどな』
暗い画面に男性の声が聞こえる。
「な、なにこれ?」
突然始まったよくわからない画面に、音乃は戸惑った。
本編が終わったはずなのに、何者かわからない人物の声がする。
一体これはなんの映像なのだろうか。
『まあ、いつかはここにも来るだろうさ』
その人物はシルエットのように顔がぼかされていた。
『あいつらのことだ、そう遠くない未来にな』
謎の人物の台詞が続き、暗かったシルエットが徐々に明るくなる。
『その時は、私が直接相手になってやろう』
最後にその声の主の姿が映し出される。赤毛で強靭な身体つきをした、ある青年の姿が。
音乃はそのキャラクターの外見を見た瞬間、驚いた。
音乃がすでによく知っているキャラクターだった。
「このキャラ……! 確か原作の!」
最後に表示されたキャラクターは原作漫画に登場していたキャラだったのだ。
今回最終回を迎えたラミ丘本編のアニメ化部分よりも先のストーリーに登場しているキャラだ。今までアニメ本編には登場していなかったはずの。
「な、なんでラミジオールが?」
音乃はそのキャラの名前をつぶやく。
なぜ最終回に突然原作のキャラが登場したのか。
「ど、どういうこと?」
人物の映像の後に最後に黒い画面になると、右下に小さい英語の文字が表示された
『To Be Continued』
「とう……、びー……?」
それは終わり、ではなく続く、の意味だ。
「え、どういうこと? さっきのキャラも何?」
最終回なのならばFINやENDなど終わりの単語などではないのか。
音乃は状況についていけなかった。なぜ最終回で原作のキャラが登場したのか、
そして次に大きな文字が表示された
『ラミレスの丘2期制作決定』
音乃は衝撃を受けた。あまりのことに テレビの前で固まった。
「え、え!?」
ラミレスの丘2期決定の告知だった。
その文字の表示ののちに、テレビコマーシャルの映像になり今度こそ本編が終了した。
先ほどのあの表示はラミレスの丘2期決定の告知だったのだ。
「ええーーーー!?」
あまりの驚きに思わず音乃は大声を出して叫んだ。
アニメ2期、それはつまり続編にあたる。
近年のアニメは1クール2クールという短期放送ではあるが、人気アニメの場合は続編として2期3期といった形で続きをテレビ放送することがあるのだ。
「これってつまり、ラミ丘のアニメまたやるってことだよね!?」
つまり今回の2期というものは、つまり今回放送のラミレスの丘本編の続きがまらアニメになるということだ。原作のここから先の話をアニメにすると。
今日で終わりと思っていたラミ丘のアニメが、今後も再び続編としてまたもやアニメになる。最終回という今日で放送終了だったはずのアニメが再びアニメ化するということだ。
「みんなどういう反応してるんだろう!?」
音乃はすぐさまスマートフォンでツイッターのタイムラインを見た。
ツイッターのタイムラインは案の定、ラミ丘ファンが盛り上がり、「2期キター!」「2期発表待ってました!」「またアニメやってくれる!」「2期放送時期いつですか!?」というまさにラミ丘2期についてのツイートでいっぱいになった。
もちろん「あそこで前向きになるロシウス健気だった!」「原作の名シーンを最終回萌えた」「公式アミロシ最高でした!」といった最終回への感想もあれば
「ラストでラミジオール出してくれてありがとうございます!」「2期はきっとラミジオール戦やってくれるはず!」と最後に登場したキャラクターについてのツイートもあった。
しかもトレンドにまで「ラミレスの丘2期」「ラミ丘2期」というワードが入る始末だ。
「凄い……トレンドにまでラミ丘2期が入ってる……」
ツイッターのトレンド入りになるということは、それだけ多くの人々がラミ丘2期についてのツイートをしているということだ。
それはまさに一時的だがネット上の話題をかっさらうがごとくに。
「これだけラミ丘が人気絶大ってことだよね… 凄い!」
音乃にとっては 好きなアニメに自分以外にも多くのファンがいるということを目に見たようで嬉しくなった。
「またラミ丘のアニメを楽しめるんだ! 嬉しい!」
音乃は興奮した状態で一日の終わりを迎えた。
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