第24話 最終回、せまる!


 時間というものは残酷で、来てほしくないと思う日数にも次第に近づいていく。

 ラミレスの丘公式サイトを見ると、新しく更新した情報は残り数話で最終回を思わせる、放送予告のページが残すところあと2回分になっていった。

「あと二週間か……ラミ丘放送もあと2回で終わりなんだよね」

3か月に渡って放送されたラミレスの丘もアニメ放送はいよいよその時に終わるのだと嫌でも実感させられた。

 音乃にとってのこの3カ月間はラミ丘のおかげで実に潤っていた。

 高校入学と同時にこの作品に出会い、それまでにない興奮を味わった。

 なにより腐女子に目覚めたことで新しい世界を知ったという人生を激変させるようなきっかけにもなった。

 そのおかげで自分自身も二次創作をする楽しさに目覚めたのだ。

「ラミ丘ファンはみんなどう思っているのかな……」

 音乃はいつも通りにツイッターのタイムラインを眺めた。

 公式サイトにて更新された残り話数があと2回という事実により、ファンは皆もうすぐラミストというアニメが終わることを暗示させるのである。

ツイッターのラミ丘ファンのユーザー達もまた、それぞれの想いを叫んでいた。


「アニメがもうすぐ終わっちゃうけど私はまだまだラミ丘好きでいられるから寂しくない!」

「アニメが終わってもアミエルとロシウスの愛は永遠なのよ!」

「アニメ最終回を無事見届けるよう覚悟する!」

「最終回を見送っても原作で追い続ける!」

 といったアニメ放送が終わることについてツイートする者も多くいた。


 寂しいとは思いながらも、皆この祭りが終わることを受け入れている者もいれば。かえって自分はもっとラミ丘への愛を叫ぶという前向きな態度の者もいる。

「このノリもアニメが終わっちゃったらどうなるのかな」

 音乃はこの数か月間において生活に必須となっていたSNSが変わってしまうのではないかと心配した。

「このフォロワーさん達とやりとりできるのも終わっちゃうのかな……」

 「ラミレスの丘」アニメ本編が終われば、ラミ丘好きのフォロワーはアカウントを消す者もいるかもしれない、アニメが終われば、その次に始まる新しいアニメへと感心が映り、二次創作も減っていくのかもしれない。

 アニメ放送が終わるということは、ファンにとってはそれほど大きい。

 原作が続いている大人気漫画とはいえ、ネット上での話題になるのはやはりアニメが注目されるからことが多い。

「ラミ丘のアニメが終わったら、その翌週からはもう新しい話が放送で見られないってことだよね……。やっぱり寂しいなあ」

 これまで習慣にしていた楽しみの一つが失われるということに、音乃は喪失感も味わうのでは、と思った。


 音乃は来るべく最終回に向けて、残りの放送回を見守ることにした。

 毎週恒例の水曜日の夜、音乃は自室のテレビの前でラミ丘放送時間にむけて待機した。

 今日放送されるはいよいよ最終回直前の話だ。もちろん、今日もリアルタイム視聴である。


『ロシウス、俺達はついに、ラミレスの丘への手がかりを見つけたのかもしれないぞ!』

『アミエル、僕もいつかはそこにたどり着けるのかな?』

『もちろんだ。お前ならきっとそこへ行けるさ』

 テレビ画面からはラミレスの丘アニメ本編の映像が流れる。


 今日は最終回直前ということで、次回のラストに向けての熱い回だ。

「やっぱりラミ丘はいいなあ」

 最終回直前にて、改めて音乃はラミレスの丘のアニメの出来の良さに感動した。

 画面上でキャラが動き、カラーで喋る。かっこいいキャラが映像で楽しめる。熱い台詞は声によってキャラの感情が伝わり、映像が動くからこそ、漫画以上に世界にのめり込める。

 本編が終わると、音乃はいつも通りにツイッターのタイムラインを眺めた。


「今日も推しを眺めて楽しかった」

「最終回はきっと神演出なのを楽しみにしてる!」

「このノリなら最終回はきっと神回になる!」

「アニメスタッフが最終回を最高の出来に作り上げてくれると信じてる!」

「ロシウスとアミエルの2人の勇敢さを最後まで見届けるぞー!」


 最終回は悲しい寂しいという気持ちと同時に、アニメの中で一番盛り上がる回の為に、それを楽しみだ、というファンも多くいるのだ。

「最終回は悲しいものじゃない。むしろ一番楽しみな回でもあるんだよね」

 音乃は考えが変わった。放送が終わるから寂しいという気持ちもあるが、アニメにおける最終回とは、話の締めくくりらしく、「面白かった」と視聴者にとっては一番印象に残る回なのだ。

 数々のアニメがそうやってファンが最終回を見届けることによって、感動を味わえるのである。アニメは最終回があってことなのだ。その為に、アニメにおける最終回は他のエピソードよりも、よりもっと力のくわえられた回になるものだ。

「そう思ったら最終回が楽しみになってきた」

最終回は終わって寂しいという気持ちよりも、むしろ最終回こそがアニメでは一番盛り上がる回なのだと。

「最終回が放送されてこそ、神アニメになるんだ! 最後まで見れば、きっとこれから録画を見返すのも楽しくなるはず!」

 音乃は最終回を迎えるまでの日数がどんどん終わりの日々だと思っていたが、逆に今度は最終回放送までが楽しみになってきた。

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