第12話 橋の上


夕暮れ時の橋の上。


橋の真ん中辺りで、下を覗き込む。穏やかな流れの川が、遥か下を流れている。

靴を脱ごうとして、声を掛けられた。

「あのぅ、やめた方が良いですよ……」

真横に、至って普通の格好をした四十代くらいの女性が立っていた。

何も言えない私を無視して、今見たばかりの川を指差す。

「あれらと永遠にここに居たいんですか?」

見れば、眼下の川にびっしりと真っ黒な人々が埋まっていた。それらは、橋の上目指して手を伸ばしている。

私を待っている。怖い。そう思った。

橋から少し距離を取り、へたり込む。

どれくらいそうしていたか、辺りは暗くなり、その暗さで我に返った。目が覚めた気分になる。女性にお礼を言おうとして、彼女が居ないことに気付いた。

帰ってしまったのかと、来た道を戻る。橋のたもとを見、足を止めた。

来た時には気付かなかった、真新しい花束が供えられている。写真立ても。

写真の中で微笑む女性は、さっきまで私と一緒に居たその人だった。

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