災難
街を出て森の中をしばらく進むと、ゼノとサランが出会った場所に着いた。
「ここら辺で見失ったんだっけ?」
「はい、確かこの辺りで……」
ゼノは周囲を見渡す。
だが、そこに痕跡らしきものは何も無かった。
「よし、『トラック・サーチ』」
サランは地面に手を当てて呪文を唱える。
「……うん、こっちだ!」
サランは森の奥に指を指す。
「行きましょう」
サランが示した方角に進んで行くと、やがて崖が見えてきた。
「あれだよ、多分」
サランが指差す先には確かに岩壁にぽっかりと穴が空いていた。
「どうする?行ってみる?」
「はい、もちろんです」
「じゃ、決まりだね!」
サランはそう言うと両手剣を引き抜いて。洞窟へと入って行く。
「うわぁ……」
中は真っ暗だったが、サランが手に持ったランタンが道を照らしている。
道幅は狭く、所々崩れており足場も悪く、時折崖のようなところもあった。ここから落ちたらひとたまりもないだろう。
「……気をつけてね」
「は、はい」
ゼノとサランは慎重に奥へと進んでいく。
「ゼノ、ちょっと待って」
サランは突然立ち止まり、剣を構える。
「何かいる……そこ!」
サランは剣を振り抜くと、そこには1匹の黒いスライムがいた。
「こいつです!!」
ゼノはナイフを抜き、構える。
「スライムに剣は効かない下がってて」
サランは剣を構え直す。
「『浄化魔法(ピュリフィケーション)』」
サランが手を前に出しそう唱える同時に、黒いスライムはブクブクと泡立った後に溶けて水になってしまった。
「よし!やった!!……って、あ……」
サランは振り返り、呆然と佇むゼノと目が合う。
「……捕まえなくちゃダメなんだっけ?」
「いや、『鍵』さえ回収出来れば……」
その時、足元の水の量が少し増している事に気づく。
「まさか……」
その時、地響きが洞窟内に鳴り響き、洞窟の奥から大量の水が渦を巻いて押し寄せる。
「もっとデカいスライムの塊に魔法が連鎖したんだ!!」
「逃げろぉおお!」
「きゃあああ」
2人は必死に出口へと向かう。
後ろからは、先程の倍以上の量の水が追ってきていた。
「もうすぐ外に出られるよ!」
「はいっ!」
ゼノは前を見る。すると、前方に光が見えた。
「もう少しだ!あッ!!」
その時、サランが足を踏み外し転倒してしまう。
「サランさん!」
ゼノはサランの手を掴み、引っ張り上げる。
「ゼノ……ッ!」
その瞬間、2人は足元を水にすくわれ、鎧を着ていたサランはさほど流されずにすんだが、ゼノは軽装備だった為、激しく流されてしまい、サランの手を離してしまったのだ。
「ゼノォオオオッ!!!」
サランの悲痛な叫び声が響く。
そして、ゼノは流れの中で岩に強く頭を打ちつけ、意識を失ってしまう。
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