『門』
〜『門』の前室〜
重厚な扉が開くと、そこは薄暗く、牢獄のように無機質の圧迫感がある空間が続く近未来的な廊下だった。
「ここが……」
「はい、『狭間の世界』と異世界を繋ぐ唯一の場所だよ!」
シエナが言う。
「あの、スライムの奴は……」
ゼノが辺りを見渡す。
しかし、その空間は何かの機械音が静かに響くだけだけだった。
「まさか……先に行かれたんじゃ……?」
アルは不安げに呟く。
その時、ゼノの立っている金網の床が突然吹き飛び、ゼノは金網と共にひとつの金属製の扉の前に投げ出される。
「ゲホッ…ゲホッ…なにが…?」
「ゼノ!伏せろ!!」
「!?」
刹那ヴェティがゼノ頭上でナイフを一閃し、ゼノ背後にいたスライムを切断する。
しかし、スライムは一瞬で結合し、ゼノのIDカードを引き剥がし、扉を開け、その中に滑り込む。
「野郎ッ!!」
ヴェティは悪態をつきながらも『門』に入り、スライムを追いかける。
「ヴェティさん!!」
ゼノも慌てて立ち上がり追いかける。
『門』は底の見えないプールの中央上に金属網の足場が設置されていた。
又、プールよりも狭いプールサイドにはロッカーと、恐らく『鍵』を差し込むであろうキーパッドのようなデバイスがあった。
そして、スライムはそのデバイスに張り付いていた。
そして、ヴェティは金網の上で無限に広がるかと思われる程増殖するスライムをひたすら切り伏せていた。
「ゼノっ!そこから『鍵』を引き剥がせ!!」
「このっ!!」
ゼノはデバイスに飛び付き、スライムを掴もうとする。しかしその瞬間、スライムは液体状になり、ゼノは半刺しの状態だった自分のIDカードをデバイスにセットしまう。
すると、デバイスに明かりが灯り、ガコン……という巨大な何かが動き始める音と同時にプールに満たされた液体が、掻き回されていく。
「ゼノ!!何があった!?」
ヴェティは叫ぶ。
「『門』が開きやがったぞ!!」
プールに満たされたその液体はやや空色がかった虹色の光を放ちだす。
そして、スライムはそれを確認すると、『鍵』とIDカードをデバイスから引っこ抜き、凄まじまい勢いでその液体の中に飛び込もうとする。
「逃がすか!!」
ゼノはスライムの尻尾を片手で掴むと、スライムはゼノから必死に逃れようとする。
「力がッ!!」
ゼノはもう片方の手でデバイスのポールを掴んで踏ん張る。
「ゼノ!!」
ヴェティはスライムを一気に切り伏せるとゼノに急いで駆け寄ろうとするが、時すでに遅し。
「わっ!!!」
ゼノはポールを握る手を離してしまい、その体はプールの上を舞っていた。
「クソっ!!!」
ヴェティはスライムを片手で引き裂きながらプール金網の上から、ゼノの腕を掴もうとするがその手は届かない。
「ヴェティさッ……」
ザバーン!!
ゼノは液体に落ちた瞬間光に包まれ、自分がどっちを向いているのか分からない感覚に包まれながら、バタつく。
「……」
水中じゃ息ができない。
(まずい……このままじゃ……)
と思ったその時。
「がっ!!」
背中に強い衝撃を感じ、ゆっくりと目を開く。
そこには青空が広がっていた。
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