[完結]クラフトスキルで片付け改革!〜公爵令息と精霊の幸せなスローライフ〜

西園寺わかば

プロローグ

第1話 意外や意外

-side リック-




「リック=シュタイン様。あなたのスキルはクラフトスキルです。」

「そ、そんな……。」


 

 俺や母上が持つ、黄緑色の髪と、水色の目は四大精霊のうち、風を司る精霊シルフの加護を授かっていたからだと噂されていた。10歳の誕生日である、今日、この時までは。

 名門、シュタイン公爵家。

 風魔法と剣術を組み合わせた戦い方で、武力において、国内最強と言われている一家に俺は生まれた。

 


 俺には兄が全員で3人いて、その全員が強力な戦闘スキルを持っている。

 一番上の兄アランは身体強化、2番目の兄ディランは魔力量増大、3番目の兄ノエルは軍師である。

 では早速、4番目の子は何を授かるか……王国中が注目する中、行われた洗礼式。

 俺が授かったのは、ハズレスキルと言われているクラフトスキルだった。



 結果に絶望して目が真っ暗になったちょうどその時のことである。

 前世の記憶を思い出した。



「はっ……。うわっ。

 記憶が流れてくる……!!」



 25歳でサラリーマンだった時で記憶が止まっている。おそらくそこで死んだのだろう。

 特に何の取り柄もなく、平凡な日々を過ごしていたという……、この世界において、何も役に立たなさそうなことだが。

 ……この大事な時にどうしてこんな事を思い出すんだ!と思いながらも俺はその場で気絶した。





 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 洗礼式から数日後、俺は実家であるボロ屋敷の、父上の書斎にいた。ここ、公爵家の領地と王都の距離は馬車で1週間ほどなので、みんなにはもう伝わっていたみたいだ。



 領地と言っても、戦闘ばかりしている自分達ではろくに治められないので経営はほとんど他人に丸投げである。

 これといって貧しくはないが豊かでもない、領地経営を代官に任せているうちとしてはちょうどいい感じの土地を国から与えられ、治めている。

 これは大貴族として、しっかりとした土地を治めて、税を徴収しているということが、表面上重要だからである。



 さて、……部屋に入ったはいいものの、誰も何も口を開かない。

 仕方がないから、俺から声をかける。



「父上……、申し訳ございませんでした。」



 謝って済むものではないが、他に行く当てもないので、一応成人までここにいさせてもらう必要がある。それまで、家族とはなるべく穏便に過ごしたい。



「なーに言ってるのよ?」

「母上?」



 最初に口を開いたのは母上だった。

 その一言で場の緊張がほぐれる。

 どうやら怒ってはいないようだ。



「スキルは所詮スキル。努力次第だろう。」

「ノエル兄様!」

「ノエルの言う通りだろう。世の中気合だ。

 気合いさえあれば、なんとでもなる。

 そう、俺の領地経営のようにな。

 はっはっは……!!」

「父上……!!」

「そうだぞ。根性が大事だ。

 元気さえあればなんとでもなる。俺の学業のようにな…!はっはっは……!!」

「アラン兄様……!!」

「まあ……、格好つけたことを言ったがな。

 結局俺は……、いや、俺たち家族は楽しんでほしいんだよ。お前に。最高の人生をな。」

「ディラン兄様……。みんな、よく分からないけど、たまにはいいこと言うね。

 ありがとう!!」

「「「「はっはっはっは……!!」」」」



 家族に見捨てられると思い、絶望を抱いていた俺が、あまりにのほほんとした空気に拍子抜けし、皮肉も含めてそう言うと、兄上達はみんな純粋な笑顔で笑っていた。

 完全に毒気が抜かれてしまったな。



 そこお陰で、“いつまでも、落ち込んではいられない。まずは、やれる事をやっていこうか。”と切り替えることができた。



 こうして俺はまず、この世界について勉強をする事にしたのだった。

 ……ところで、前世の記憶が戻って気づいたけど、うちの家族ってもしかしてかなり脳筋じゃね?





----------------------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る