【不定期更新中】橿原(かしはら)いずみの留学先は異世界です⁉︎
蕪 リタ
プロローグ
留学は夢のひとつ
外国人観光客もふえるなか、英語を重視する声もふえてきた2000年代。留学もすこしずつめずらしくなくなりだしてきたが、英語の授業を取りいれていても、まだまだ留学すること自体はめずらしい。それでも、留学がしたかった。だって、自分とちがう文化でそだった人たちとその国の文化にふれてみたいという好奇心が胸の内をくすぐっていたから。
ずっと夢みた海外生活。
テレビで外国を旅する番組を見るたびに「いいなぁ」「行ってみたいなぁ」と憧れていたが、思っていたことを口にする勇気はなかった。そんなうちが友だちにさそわれて英語の教室に通いはじめたのは、やっぱり憧れが心からもれていたから。
母はもれていたモノを知って「ダメだ」とも言わず、「ここなら留学できるんじゃない?」と近所にある女子高のパンフレットをもらってきてくれた。
これは――憧れが現実に変わる。ドキドキとワクワクが胸の中に渦巻いて、どんどん広がっていく。
ギリギリではやる気持ちをおさえ、英語教室から塾にかえて。この魅力的な誘いがある学校へ行くための準備をはじめた。
雪もつもらぬ大阪某所。天気は快晴。肌をなでる風は、二月らしく氷のような冷たさを増しているが……気分はと言うと、もちろん快晴である。
「ぉ、わったー!」
声が心の底からもれでてしまった。でも、これでやっと一息つける。
そう。今日は、あの日から待ちに待った入試の日。パンフレットを見て以来、ここしか受けるつもりは毛頭なく。その入学試験が、さっき終わったばかり。いつも過去問でつまずく第二英語が、今日にかぎって点数は良さそうだ。留学をウリにしている科なだけあって、試験は国語・数学に英語がふたつ。このふたつ目――第二英語がむずかしく、合格には七割とらなければならない。いつもの過去問ならよくても五割強。でも今日は九割いける気がするほど、いつもより解けていた。気持ち的には。
たぶん先週の学年末、インフルエンザで休んだおかげかもしれない。
入試直前で学年末
ま、今は関係ないから置いといて。
手応えはあったものの、やっぱり不安なので帰る前に塾へ顔を出した。だってさ、行きたい高校と大きな信号ひとつはさんで向かいだったんやもん、大雑把に言うとやけど。
迎えいれてくれた塾の先生には「一個上も狙えねらえるんやから、おまえが落ちるわけがない」って言われてしまった。なんでも、おなじ学校受けてた別中のもう一人「
行きたい学校――
だって、留学行きたいやん? 夢だったし。三者面談で説きふせれてよかった〜。やっぱり、あわよくば行きたくない公立勧められるところだったし。ありがとう、情報仕入れて一年のときから教えてくれた塾の先生。ありがとう、その情報をいかして三者面談で説きふせてくれたお母さん。最強の味方がいてよかったです。
そんなこともあってか、うちの中学からはもちろん、よそから来た子も併願で受ける子ばかり。お昼ご飯のときも思ったけど、おんなじような制服なのに、おなじ学校ってわけでもなく。この部屋の子たちも、やっぱり一人で受けにきてるのが多かった。まあ専願用の試験部屋だったし? 他の子も同中の子たちが別部屋からお昼さそいに来てたし。そんなに留学魅力的ではない? もしかしなくても、行くなら大学でもいいとか? うち? 行けるなら早い方がいいじゃん! 人生短いのにやりたいこと多すぎて、ダラダラもったいないやろ? お金の問題なら、まずこの学校受けないやろうし。
残すは、明日のあるようで合否に全く関係ない面接のみ。ちなみに、留学行く国際科を受ける子とスポーツ科の子だけ。たぶん留学行きたい科の子が、どんな子かみたいだけやと思う。だって「合格には一切関係ありません」って入試説明でも言われたし、なんなら願書にも書いてあった。しかも集団面接だし、親つきの。合否に関係あるなら、普通科も面接するはずやろ?
スポーツ科はまずもって、推薦の子しか入れないし。筆記より実技と面接重視やろ。
そして、次の日。
内容は、留学に向けてむけて心配ごとはあるかの確認だけやった。マジで。本当に、ホント―に、試験の話なんて一切出てこんかったわ。あ、ニュージーランドとカナダどっちがいいかとは、聞かれたけど。なんでも、どうしてもカナダがいいっていう子以外は、基本的にニュージーランドに行くからねっていうお話。え、留学行けるならどっちがいいとかないよ? もうすこし丁寧な口調やったけど、そのまんま答えたわ。
面接を終えて教室を出るうちの後ろ姿を見つめる人がいたのを、この部屋を出ていったおなじ組のメンバーも親御さんたちも誰一人――もちろん見られていた
一週間後。
三年間がんばったかいもあり、無事に合格を手にした。
いそがしいなか、むずかしい勉強にもたえて。留学準備が進んでいくなか、思いもよらなかったことが起きた。
まさかすぎた。
驚きすぎて、手汗が止まらなくなる。
だって、留学先が『異世界』だなんて。
そんなことが待っているとも知らず。
わたし
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