小心者
ヨシノ
小心者
友達と一緒に眼科に行った。
2人とも学校の健康診断で、「診断の進め」みたいな某一万円札の人が言いそうな事が書かれた紙をもらって近くの眼科に2人で行くことにしたのだ。
その道中でこんな話をした。
「私、一人で病院いけないんだよね、受付の人と上手く喋れなくて。私って小心者だから」
「いやいや、あんた小心者じゃないでしょ。いつも堂々って言うか、『これが私の意見だ、文句あるか!』みたいな態度してんじゃん」
「ええっ!そんなことないでしょ!」
「いやいや、マジだから、キリッってしてるもん。」
「いやそうかも知れないけどさ、」
それで眼科に着いて、スリッパ履いて順番待ってたけど、予約してた時間の5分前に来たとはいえ、やけに遅いと思っていたら、診察室から一人のお婆さんが出てきた。
ゆっくり歩いてきていて、受付のところに着くまでに、少しよろめいていた。
受付の人と、次の受診の話し合いをした後、スリッパから靴に履き替えようと
おばあさんはよろめきながら、脱いだスリッパを棚にしまおうとしていた。
友人は隣でスマホを見ているし、ここからおばあさんがいる場所は、私が歩いて3歩分位だ。
私は手伝おうか、手伝わないか迷っていた。
手伝うことで嫌な気持ちにしてしまったらどうしよう。
手伝わないでいてお婆さんが転んでしまったらどうしよう。
手伝ったほうがいいのだろうと思っているのに、体が嫌がって動いてくれないのだ。
行かなければいけないのに。
そう思っているうちにお婆さんは眼科の人にお礼を言って出ていった。
私に残ったのは行けばよかったという後悔と、なぜ行けなかったのだろうという自責だけ。
相変わらず、暑い中ゆっくりと帰るお婆さんを、見つめることしかできなかった。
やっぱり私は、小心者だ。
小心者 ヨシノ @yoshino_ohanami
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