第6話 お前はアニマルなのか

とりあえずいろいろと思考してしまったが、アニマルヒールをこの子犬に使えるのかどうか試してみなければ。

一応地球上での動物の定義というと、とても簡単に言えば『感覚があり動くことができる多細胞生物』という認識だ。

10年以上も前の記憶さんを叩き起こしている為間違っているかもしれないが、そう大きく外れてもいないはず。

たしか一般的にはその中からさらに人間を外した主に哺乳類を動物と呼ぶらしいが、このスキルは人間も動物に含むのかどうか。今度試してみようかな。


さて、本題だが、こいつは子犬だがツノが生えている。また、魔力もあるときたもんだ。

ということは動物ではなく魔獣と呼ぶ方が正しいのかもしれない。

今まで読んできた小説や漫画の中ではこういった生物は魔獣と呼ばれていた。

果たして魔獣は、動物に含まれるのかどうか…たぶん哺乳類だろうしツノさえなければハスキーのような狼のような見た目をしているので、いけるかもしれない。

あとはMPが問題か。

現在、MPは10まで回復した。感覚的に、1分につき1回復しているように思う。

このアニマルヒールが1回でどれくらいMPを消費するかわからないが、とにかくやってみるしかないか。

ずっと左腕に抱えていた子犬は先ほどよりも息が整っているが、やはり痛々しい姿には変わりない。


「よし、やってみるか。うまくいきますように。」


発動方法などは分からないが、何となく子犬の前に右手をかざして「アニマルヒール」と唱えた。

すると右手のひらがほのかに熱を持ち、次いで柔らかく優しい光が発される。そしてその光が子犬を包んでいき、その周りをまるで蝶々や蛍が飛んでいるかのように小さな球体が飛ぶ。


「おお、ちゃんと発動できたようだな。よかった。」


とりあえずはスキルが発動できたということで、MPも足りたし魔獣はアニマル判定であることが確認できた。

そういえばMPはどれくらい消費されたんだろうかとステータスを見てみると、2まで減っている。

ということは、MP消費は8で発動できるということか。今はMPが満タンでも12しかないため、2回連続の発動は厳しいが、自動回復もあるしとりあえずヒールに関してはそこまで困ることもなさそうだと結論付ける。

それにレベルが上がったらMPも増えるかもしれないしな!

レベル上げって、やはり魔獣や魔物を倒すしかないんだろうか。

心情的にモフモフや獣を傷つけたくはないので、できれば魔獣は相手したくない。

獣以外なら…獣以外なら頑張るので…っ!!

再び誰に言い訳するでもなく歯をギリギリと食いしばり気持ちを主張していると、腕の中の光がだんだんと収まっていることに気づく。


はっとして腕の中を見ると、先ほどまではとても痛々しく腫れていた顔がすっきりとしており、タオルや包帯をめくってみても大きな傷小さな傷すべて治っていることが分かった。

また、子犬ももう息苦しくないのかぷぅぷぅと子犬らしい可愛い寝息を立てている。

すごくかわいい。本当にかわいい。めちゃくちゃかわいい。

思い切り顔をモコモコの毛に埋めグリグリとしたい衝動に駆られたが、今は他にやることがあるため懸命にそれを抑えつつ、気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をする。


「とにかく、綺麗に治ったみたいでよかった。正直あんなひどい怪我だったし、何回かかける気ではいたけど…魔法、とてつもないな。

MP消費は8だしそれなりに高くはあるが、この効果にしてみれば安いもんじゃないか?でも汚れなんかは落ちないみたいだな。毛のあちこちが乾いた血でカピカピしてる。

ここを移動するがてら川なんかを探して洗えればいいけど…さすがに洗うとなると、こいつが起きてからの方がいいかもしれない。」


子犬から外した包帯とガーゼを鞄の中に突っ込む。

タオルは一応まだこいつに巻いておくか。安心するだろうし、いきなり暴れてもタオルでグルグルにしてるから何とかなるしな。

次は少し緩めに子犬にタオルをグルグルと巻きつけつつ、残りのアプリは何があるのかと再度ホログラムに意識を戻した。

残りのアプリを確認したらここを発とう。

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