同級生

阿滝三四郎

同級生

「うわぁ~、頭いてぇー」


目覚ましの音がなった

昨日飲みすぎたのだろう頭が痛かった

完全に二日酔いの頭の痛さと身体のダルさ

今日は仕事休みだろ、なんで目覚ましなんかセットしたんだよ。。。




「げぇえ~」


誰キミ、ベッドの片割れには

見知らぬ女性が寝ていた


そっと、顔を覗いてみたけど

誰だが見当もつかなかった



そっと掛け布団を剥いでみた

その女性は

Tシャツや短パンを履いて

裸という訳ではなかった



少し胸を撫でおろした

そして

昨晩何もなかったと勝手に解釈した



でも着ている服は

僕のTシャツに短パン

どういうことなんだよ

と、頭を抱えていた



昨晩のことを思い出そうとしていたら

女性が、両腕を大きくあげて、背伸びをしながら


目を覚ました



そして、目が合った




「誰?」

と声を掛けた


「薫だよ」

と、そう女性は答えた



「どうしてここに居るの」

「ずるい、昨日誘っておいて」

「まったく覚えていないんだ」

「あんだけ誘っておいて」

「ごめん」



「昨晩楽しかったね」

「・・・」

「お酒そんなに強くないのに」

「えっ」

「お酒弱いでしょ」

「そ、そうだけど。何で知っているの?」


一つ間をおいて


「あのね、昨日久々に、知り合いがやっているお店に私一人で飲みに行ったの」

「・・・」

「それでね、カウンター席の隣にいたのが、あなた」

「うん」

「私の反対側にも見知らぬ男性が一人で飲んでいたの」

「うん」


「そしたら、なんなのあなたたちは」

「・・・」

「私を賭けの対象にして一気飲みで勝った方がって」

「えっ」

「ほんと、ふざけてる」

「ごめん。で、僕が勝ったの???」

「だから、ここにいるんでしょ。何も覚えていないの?」

「・・・」


薫は、ため息をついた


「昨日出会ったお店は、キミの知り合いのお店なの?」

「だから、何よ」

「いや、ちょっと聞いてみただけ。ごめん」


「あ~、むかつく」

「・・・」


「勝ったんだから、一緒に朝を迎えたの」

「なにか変な事していないよね・・・」

「変な事ってなによ」

「あっいや、今着ている服が僕の服だから」

「部屋に入ったとたん、勝手に着替えて、あなたはベッドにまっしぐら」

「えっ、それで」

「そしたら、掛け布団被って、イビキかいて寝たわよ」

「・・・」

「仕方ないから、シャワーを浴びて。部屋にあった、あなたの服を借りて寝たわけ

 Do you Understand?」





「お腹すかない」

と、薫が突然聞いてきた


「う、うぅん」

と、答えると

何かあるかなと冷蔵庫を開けて食材を探し始めた

男の一人暮らしの冷蔵庫だ。目立った食材なんか

入っている訳がない


それでも卵とハムはあったようで

ハムエッグを作り

食パンをトーストしてくれて

コーヒーまで淹れてくれた


とは言うものの、いつも僕が作る朝食を

薫が作ってくれたということだけなのだが

ちょっと嬉しかった



「いただきます」

と言って、パンに手をつけたとき

薫があらためて聞いてきた


「ね~、ほんとに昨日のこと覚えていないの?」

「ごめん、覚えていないんだ」

「私のことも、覚えていない???」

「昨日、初めて会ったんだよね」

と、答えた




薫は突然

「あれから15年経つんだよね」

と、言った

「15年???」

と、聞き返した


僕は30歳で、普通にサラリーマンをやっている

実家を出て、実家からは然程遠くない場所に住んでいる

今は特定の恋人もいない、のんびり一人を満喫していた

15年前となると中学校を卒業した年になる



「15年前に会っているんだけど。覚えていない?」


思い出すように頭を上げたり、頭を抱えたり

しばらく考えると、やっと思い出すことができた


「あっ、薫って、佐藤薫・・・さん」

「やっと思い出してくれた」

「えっ、どうして」

「昨日の、あのお店で久々に見かけたの、懐かしくなって、私から声を掛けたの」

「声を掛けた???もう一人の男性との賭け事は?」

「そんなもの、ないわよ」

と、薫は笑った


続けて

「昨日、あのお店で飲んでいたら、顔を赤く染めて酔っぱらって入ってきたんだよ。覚えてる?」

「僕が?」

「そうだよ」


少し思い出すように考えて

「そうだ、一件目で食べて・飲んでして、なんとなくもう一軒入りたくなって、はじめて、あの店に行ったんだよ。そこに居たの?」

「そう、最初は面倒な客が入ってきたとオーナーと話をしていたんだけど、あなたの顔を見ていて、私が思い出したの」

「それで」

「あなたの隣に座りなおして、色々と過去の話を根ほり葉ほり聞き出したのよ」

「・・・」

「過去に付き合っていた恋人の話から学生時代の話まで、ものすごく酔っぱらっていたし、オーナーとも一緒に盛り上がりながら、お酒を飲ませて、すべて白状させてしまったのよ」

「・・・」

「それで、中学校の同級生で同じクラスにいたということを確信したの。卒業アルバムある?」


卒業アルバムを渡すと、薫は指を差した

「これが私、そしてこの顔があなたね」



目の前にいる薫の顔は

あの頃の面影を残しながら

綺麗で大人の女性に変わっていた

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同級生 阿滝三四郎 @sanshiro5200

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