遺言
小狸
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――頑張れとか。
――頑張るなとか。
――無理するなとか。
――無理しろとか。
――気にするなとか。
――気に障るとか。
――分からない。
私はどうすれば良いのか分からなかった。
人から怒られぬよう、人の言う通りに生きてきた。
それを主体性のない人間と言われるのは心外である。
だって――そうするしかなかったからだ。
そうしなければ、周りの人間は私を許してはくれなかった。
生きるために、そうするしかなかった。
「でもさ、それが大人になるってことだから」
「皆はそう生きているから」
「仕方ないよ」
「幸せなことを思い浮かべようよ」
「そんな自分でも認めてあげよう」
好き勝手言う。
周りの人達は、好きに言う。
当たり前である。
他人事なのだから。
無理にでも大人にならなければいけないのだろうか。
皆がそう生きているなら、迎合しなければいけないのだろうか。
仕方ないとずっと諦め続けてきて、まだ諦めなければいけないのだろうか。
幸せなことがあれば、不幸なことが帳消しになるのだろうか。
誰も認めてくれなかった自分を、どう認めれば良いのだろうか。
いや、いや、いや。
違う。
大人になるということは、きっとそういうことなのだろう。
そういう理不尽や不条理を受け入れ、呑み込み、諦める。
私はだから、大人になることができなかった。
私の人生は、ずっと理不尽だった。
私の人生は、ずっと不条理だった。
無理矢理飲み込んで、消化不良で、嘔吐しながら、諦めながら生きてきた。
それでも大人になれば、何か希望があるのだと思って――子どもながらに信じて生きてきた。
馬鹿だったと思う。
希望などなかった、幸せなどなかった、未来などなかった。
だから私は、死にたいと思う。
死にたいと願う。
これを私の、最後の言葉としたい。
(了)
遺言 小狸 @segen_gen
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