青野凛の日常

彩希 文香(Ayaka Saiki.7)

第1話

 青野凛あおのりんは、自室でパソコンに向かい、頭の中で空想した世界を文字に起こしてゆく。しかし、その作業に費やす労費は今のところ、一銭にもなっていない。

————もうすぐで完結だ。

そう思うと自然に高揚し、凛の指の動きは一段と加速していった。

 休日だった今日はいつものように半日近い時間を、こんな風に過ごして、凛の体力と精神が極限状態に達しようとしている。既にこの数ヶ月間、凛は本職の出勤日と、その帰りに食料品と日用品の買い出しに立ち寄るスーパーマーケット以外は外出もせず、自室…………、いや、自宅で過ごしている。

 日付が変わる頃、自分の小説を載せているサイトに最終話をアップし終えた凛はベッドになだれ込む。同時にパソコンの画面には凛の小説を読んだ読者からの反応と思われるメッセージの通知が鳴り止まない。

————今日はもう寝よう。

凛は静かに瞼を閉じた。

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