堕落

@le-beginning

今日は青いっぱいの空。僕の心と真逆。空までもが僕を否定しているような気分になる。

僕は今スカートをゆらして、強い日差しを受けながらながら学校に向かって歩いている。僕とスカート、不自然に思ったかもしれない。僕はトランスジェンダーだ。生まれは女の子だけど、心が男の子。

僕は学校が嫌いだ。生まれが女の子というだけで女の子であることを強制する。多様性だなんだと言っておきながら、根本にあるものはそう変わらない。変えられないと言った方が正しいかもしれない。一度決まった物事にしがみついてしまうのが人間の性。

「おはよう!」

そう明るい声で話しかけてきたのは沙耶だった。彼女とは幼なじみで、話しているといろんな悩みを忘れていられる。

「おはよう、最近暑くなってきたね」

「ホントにそうだよ。暑すぎて溶けちゃいそう」

沙耶がぐだっとした声で言った。

「溶けないでよ!?」

僕がそう言うと、先生が教室に入ってきた。

「あ、ホームルーム始まるね」

「じゃあまた」

一日の授業が終わって、家に帰ろうとしていた。が、あるクラスメイトが話しかけてきた。嫌だ。

「ねーねー、あんたって女なの?男なの?」

僕は無視してカバンを持った。

「無視しないでよね、じゃあ、また明日ね」

普段のこいつなら絶対しないような、毒蛇が発したかのような陰湿な声でいった。

こいつは所謂クラスカースト上位の女。僕は友達が少ないからか、トランスジェンダーをネタにしていじってくる。

成長してしまうと何故人を故意に傷つけるようになるのか。もう考えないようにしていた。劣等感を晴らすための道具が欲しいのだと思って。

だがこいつに話しかけられると、どうしてもその事が思い出されてしまう。何より上位にいるやつなんだよ。吐き気がする。

沙耶だけが私の味方。 彼女は今まで一度だって、僕の嫌いな言葉は言わなかった。

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