第190話 リースと再会

 背後からリースの声が聞こえ振り返ると、最後に会った時からちょっと歳をとった感じのリースが居た。


 なんというか、美魔女とか歳を取ったのにもかかわらず綺麗なお姉さまって感じだった。


「やぁ久しぶりだね」

「そうだね、ってかそのドラゴンどうしたの?」


 リースから問われて思った。


 もし茜君が絡んでいるとしたらなんとなくだが犯人な気がした。


 もし自分の神の手と同じような力を持っていた場合、ティアマトの素材から肉体を再現させて闇の精霊に操ってもらって帝国兵を一掃する際にやり過ぎた結果な気がした。


 尻ぬぐいというわけではないが、襲ったドラゴンを討伐して連れてきたって事にするか?


 なんとなくだがそうしたほうがいい気がした。


「ここを襲ったドラゴンって事にしようかと……」

「襲ったドラゴンじゃないの?」

「さっきまでヒスイとレムと話してたんだけど、ここを襲ったのはティアマトってドラゴンらしいんだけど、現れるときも消えるときも一瞬だったんだってさ」

「うん、それで?」

「んで、ティアマトはダンジョン以外には生息してないんだって」

「そう言われているけど、でもドラゴンが現れたんだよ?」

「まぁちょっと思うところがあってさ、とりあえず住民達を安心させるために襲ったドラゴンを討伐した事にしようかと」

「ん~?」


 リースは納得していないようだが確証がない以上茜君と決めつけるのは良くないだろう。


「んで、リースはジャマダハル紛失したって聞いたけど」

「あぁそれ!数日前に大量のアンデット?に襲われてさ~」


 なぜ疑問形?


「アンデット?って、何で疑問形で?」

「それがさ鑑定すると闇精霊だったんだよね、それに近くにフェンリル様もいたんだよ」

「うん?」


 茜君も近くに居たんだろうけど、目撃はしなかったのかな?


「昔、ネア様やフェンリル様達とヴァンパイア族が敵対していたのを知っていたからね、神罰が来ると思ってジャマダハルを置いて影に潜って逃げたのさ」


 置いてか、死んだように思わせるため?


「あぁなるほど、リースは死んだよと思わせるために置いて逃げた?」

「そうそう、あの武器愛用してたから目立ってたしね」


 リースがやろうとしていたことは何となく理解した。


 そう言えばヒスイやエルメダから、ヴァンパイアとやり合っていた事があるってのは聞いている。


「で結果は、居た部隊は全滅?」

「じゃないかな?ここ数日、帝国各地でフェンリル様の目撃情報があるんだよね、難攻不落と言われたアカシア陥落の前日に突如消えた白狼とか、ここカトシスにもドラゴンに襲われた翌日に現れて復興を手伝ってくれたとか、ヘイム平原の方でも目撃があったみたいだし、神々がヴァンパイア殲滅に乗り出した!って帝都では持ち切りなんだよね」

「そうなの?」

『ん?そんな話聞いたことないよ?』


 ヒスイに聞いてみたが違う?


「ヒスイ曰く、そんな話聞いたことないって」

「そうなんだ、いったい何が起きてるんだろう」


 多分、茜君が後継者争いに首突っ込んだ結果なだけなきがした。


「んでリースはなんでここに潜入してるんだ?」

「あぁ、ふたつ依頼を受けててね、1つはハニム公爵から、息子の死体の行方を捜してほしいってのと、第1王妃様からユズリア軍務大臣の暗殺をうけてるのさ」


 リースらしい任務だなと思った。


「んで、答えは見つかった?」

「ジャック・ハニムこっちはアカシアに居るっぽいんだよね」

「アカシアに行ってみたら?」

「そのアカシアに行くときに闇精霊に襲われたのさ、それにアカシアって帝国1難攻不落と言われたのに、一瞬で陥落したんだ」

「相手の勢力は?」

「わかんない、上の人達が放った使い魔がことごとく潰されてるらしくて情報がね」

『落としたのは君の彼女さんだけどね……』


 レムが教えてくれた。


 やっぱり、なんとなくそんな感じはしてた。


『それに、ジャック・ハニム、彼はアカシアの町で生きているよ、君の彼女さんの手によって、ヴァンパイアから人に戻ってる』

『そうなんだ、教えてくれてありがとう』


「ジャック・ハニムはアカシアで生きてるみたいよ」

「ぇ?どこからの情報?」


 レムはどこに居るんだ?白い光の玉なんてしばらく見ていない気がした。


『君の体内さ』


 そう言うとヒスイが座っている右肩ではなく反対の左肩付近からレムは姿を現した。


「光の精霊?」


 レムの身体が淡く光りだした。


「久しぶりかな?光の大精霊です」


 クラリス教団最後のユーロンスで召喚したから、その場にいるリースは見ているはずだが?


「ぇ?なんで大精霊様が君の所にいるのさ、契約したの?」

「してないよ!」


 即否定しておいた。


「そうだね、してないよ、面白そうだから共に居るだけだからね」


 そう言う理由でついてきてるの!?


「そうなんだ……、それで精霊様がジャック・ハニムの事を?」

「そう、彼は生きているよ、1度ヴァンパイアになったものの、人の神の手によって人間に戻っているよ」

「人の神?とりあえず彼を連れてハニムに向かわないとだね」

「いや、その必要はない」

「なんで?」

「いま、アカシアでその話をしているからね」

「アカシアで?」

「皇女と合流後共にハニムに向かうような話をしているよ。それにユズリア軍務大臣とやらも人の神によって蘇った英雄が討伐に向かうようだよ」


 リースとレムの会話を聞きながら、人の神というのは茜君だと分かるが、蘇った英雄とは何ぞ?と思いながら話を聞いていた。


「それなら私の出番はなさそう?」

「だろうね、蘇った英雄は人の手に負える物ようなものではないからね、神なる者か君だけだろうね」


 そう言うとレムはこっちを見た。


「そうですか」


 リースとレムの会話は終わりかな?


「ねぇリース、ジャマダハルまた作ろうか?」

「お願いしていい?あとできたら~」


 リースは何かとても言いにくそうにしている。


「ん?」

「20位に若返らせてくれると嬉しいなぁ~なんて……」

「まぁそれ位なら……」

「やった!」


 その後、カトシスの冒険者ギルドに先日襲ったという体にしたドラゴンの死体を持ち込み大騒ぎになったり、翌日には町の外でリースのジャマダハルを作り渡した後、事が落ち着いたら再び合流する約束を付けて別れた。


 自分は何しようかな?


 茜君の方は帝国内の騒動が収まるまでは忙しそうだし一旦故郷に戻るか。


 そう思い、空間魔法を使いミアン宅に飛んだ。

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