第182話 予知夢が現実に
空間転移でミアンの家まで戻り急ぎ中に入った。
「ただいま!ミアンいる~?」
玄関に入り声をかける。
「おかえり~中に入っといで~」
家の奥から声がした。
カスミ達がちゃんと説明してくれていたのだろう。
中に入って行くと、リビングでカスミ達3人とミアンがお茶をしていた。
「それで、どうだった?」
「ミアン、悪いんだけどブルーローズの花びら数枚分けてくれないかな?」
「かまわないよ、持っていきな」
「すまない、ありがとう」
「ナットよ、何に使うんだい?」
「そうだな、この先黒死病が蔓延するかもしれない、その為に抗菌薬に使うんだ、ミアンもできたら抗菌薬を量産しておいてほしい」
「黒死病……、あんたが言っていたペストだね」
「あぁ、北にあるヘインズ王国に感染した患者がいたからね、おそらく商隊なんかが菌をばらまいて行くとおもう」
「わかった。用意しておこう、必要になったら取りにおいで」
「あぁ、すまない恩に着る。それじゃあ町にもどるよ」
「あぁ、結界の所まで送っていこう」
「いや、大丈夫、カスミ達の事をお願い、落ち着いたら戻ってくるから、んじゃ何本か貰っていくね」
「あぁ……、少し内容が違うが昔見た夢と同じ内容だね……」
「ん?」
そう言えば、昔予知夢を見てこの地に来たって言ってたっけ?
「同じ内容なんです?」
「ニュアンスとかが少し異なるが同じだね、ナットよ花びらをどのように薬にするんだい?」
あー一番大事な事を忘れていた。
「花びらを乾燥させて粉末状にするんだって、1人辺り花びら2枚位だそうだ」
「わかった、薬の方も進めておこう」
「ありがとう、んじゃ改めて町に戻るよ」
外に出て、ヒスイに確認しつつ10本のブルーローズを貰いポートパラダイスに戻った。
ポートパラダイスに戻るなり宿を借りて部屋で薬作りを始めた。
1輪だけ残し、すべてのブルーローズの花びらを毟り、水分与奪魔法を使い乾燥させ、1枚づつすりこぎを使い粉末状にしてから個包装していく、単純な作業だが手持ちの物だけでは直ぐ終わってしまい、神の手を使い残しておいたバラの花びらを元にバラの花部分だけを再現し花びらを毟っていくという作業を続けた。
とりあえず数を作ったので、港の倉庫に戻った。
半蔵達狼衆に作った薬を渡し町中で怪しい人が居たらのませるように依頼し、自分は順次治療していった。
◇◇◇◇◇◇
半年後
ポートパラダイスでの患者が居なくなり次第オスカーと狼衆と共に、1つ隣の町村、対応が終わり次第隣の町村と治療活動を続けているとある日を境にぱったりとペスト菌保菌している人が居なくなった。
「ん……?おかしく無いです?」
「あぁ、そんなことありえるのか?」
正直半年もあればヴェンダル国内にも大量の患者がいる位広まっているはずなのに、ヘインズ国内最南端の町に行く前にペストウィルス保菌者が居なくなった。
「先の町から保菌している人がなかなか南に行かなかったとかですかね?」
「いや、俺の知っている情報だとトライベッカにも感染が広がっていたはずだが……」
おかしいというかあり得ない、菌が存在していなかったような状態にいきなりなるのはあり得ない。
「この町は大丈夫みたいですし、次の町にいってみます?」
「あぁ」
オスカーと共に不思議に思いながらヘインズ王国内、トライベッカ公国、ヴェンダル北部の町村と周り調査した。
結果としてはどの町にも、ペストという病気になり亡くなった人達もいたが、ある日を境に感染していた人たちが元気になったというのだ。
そのある日というのが、どの町にも共通して同じ日だったのだ。
「何でですかね……」
「さぁ……、俺はもう少し他の町も回るってみるが、直人お前はどうする?」
「自分も少し回ってみます、とりあえず自分はヴェンダルの南側に抜けるので、オスカーさんはこのままヴォーネス方面に行くってのはどうです?」
「あぁ、それでいい、感染した人の情報が無くなったなったらそれまでで」
「わかりました。報告はヒスイというか精霊を通じてでいいですかね?」
「あぁ」
こうして、オスカーと別れペストウィルスの謎の消失から1カ月をかけ、ヴェンダル西部の町を回りながらペスト患者の有無を確認して言ったがどの町もペストに感染した人は居たがやはりとある日を境に元気になったという情報しか得られなかった。
ヒスイに依頼しオスカーと情報を共有した結果、意味不明な終わり方をしたペスト騒動という事でこの件はあっけなく終わった。
本当に何があったんだろう?
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