第169話 人狼戦体験
「これからの相手は人ではない者達が相手だ、私がこれまで経験した戦を再現する。どれも数日間戦い続けたものばかりだ」
人ではない者達……、まさか人狼とか……?
「人狼とかですか?」
「そうだ、人狼という言葉が出てきたし最初は人狼騒動の戦いにするか」
エルメダは何か考えているようだった。
「よっし、これから再現する戦は最終的には勝つが、味方にも甚大な被害が出た戦だ」
そう言うと、辺りの風景が一転した。どこかの丘の上に大きな街があった。
『シャンソンの街だ……』
風景が変わった瞬間レムがつぶやいた。
それって人狼騒動終焉に近い戦いと言っていたやつじゃ?
『人狼騒動最後の戦いなんだよね?』
『そうだね、』
最後の戦いなのに終焉ではないという意味ってどういう事だろう?
『終焉に近いってヒスイが言っていたんだけど、どういう事かな?』
『終焉というと、すべての人狼がこの世から居なくなるって印象があるでしょ。実際はこちら側に下った者達も多くてね、人々の生活を脅かす心配がなくなったのがシャンソンの戦いだね、この戦の後生き残った人狼たちは各地で人と共に生活したりしたんだよ』
そう言う意味で終焉に近いという表現をしたのか?
ただ、かつての敵対者と上手く過ごせたんだろうか?
『そうなんだ、今の生きてる人はいるのかな?』
『もういないよ、彼らは力を貰う為に寿命を差し出したのさ、平均寿命は10年とかそれ位だったはず、騒動が終わって10年もしないうちに人狼達はこの世から消えたのさ』
「そっか」
平均寿命10年って、何を思って生きたんだろうか?
騒動のきっかけは何だったんだろうと気になった。
「良いか始めるぞ?」
「お願いします」
すると、これまで黒い人型だったのが今度は青系の毛色に包まれた大きな人狼が現れた。身長は人よりも50㎝位は大きく、目の中央は赤く、身体の全体が毛に覆われていた。
周囲に居た奴らが、自分をめがけて襲い掛かってきた。
すぐさま刀と脇差を抜き、相手をした。
人狼達と戦い続けていると思った事、これまでは倒すと消えていたが今回は消えなかった。
斬ったら斬ったで死体が邪魔になる、まぁこれがリアルだよな、おまけに彼らは3人1組で襲ってくるのが脅威だった。
自分の周りには味方が居ない為に下がりながら斬らないと本当にすぐ囲まれる。
『ノリと同じ状況だね、ノリも味方の陣からかなり離れた所で1人で戦ってたんだよね』
『なぜそんな状況に!?』
『なぜだったかなぁ、たしかこの時、ネア様からエルメダ様に伝言とかだったと思うんだけど……』
レムの話を聞くと戦いの最初からではなく、途中からという事だろうか?
体調も良好な状態で三日三晩戦い続けた。絶対健康無で眠気に襲われずに戦えている。空腹感も不思議と感じることはなかった。
どれだけ戦っただろうか?
そんなことを持っていると、はるか遠くから怒声が聞こえた。
「ったく!うっぜんだよ!」
『エルメダ様だね、しかもこの展開……』
レムが何やら気になる言い方をしていた。
『なに?何かあるの?』
『うん、この後敵味方双方が壊滅状態になる出来事が起きるんだよ』
何それ!と思ったが1つ思い当たる事がある。
そう、例のシャンソンがメテオで滅ぼされるシーンだ。
『もしかして、メテオかな?』
『そう!あの時は酷かったからね~』
という話をしていた時、突如暗くなった。戦いながら空を見上げようと思ったが、見上げなくても分かる位置に巨大な岩石が浮かんでいた。
『これって、ディナって子を呼んで隔離してくれるんだよね……?』
『しないよ、ディナはこの件があってから、エルメダ様に付くようになったんだよ』
って事は何か?
このまま地面に衝突したら……、この場に居たらひどい事になる未来しか見えなかった。
『レム質問なんだけどさ、この戦いの最後ご先祖様ってどうなったの?』
『全身泥まみれであちこちケガして重傷だったかなぁ、ソラリス様が見つけてくれなかったら、土の中で死んでたかも?』
ちょっとまて、それって埋もれたって事だよね?
衝突で土砂が舞い上がり埋もれる事も考えられるけど、というか他の味方は?
『他の仲間は?』
『ソラリス様が土壁つくって守ったから前線の味方には大して被害出てないかな~、ただね、後方支援の補給部隊の人達とか、近くの町や村とか畑は酷い事になっていたよ。この戦いの後皆で被害が出た町や村に行ったからね~』
前線の味方は守られても、後方支援隊は……、最初にエルメダが“味方にも甚大な被害が出た戦だ”とか言っていたけど、その大半があんたのせいなんじゃと思った。
『レムざっくりでいいから教えてほしいんだけどさ』
『うん?』
『この戦いの戦死者と、エルメダ様のメテオの被害による死者ってどっちが多いのかな?』
『ん~味方の死者って認識で良いのかな?』
『そうだね』
『後者だね、いくつかの村や町に大きな岩石が落ちてきたりして亡くなったり、後は巻き上げられた土埃で肺病を患ったりとかで結構な人が亡くなったよ』
だよね、リアルに考えても普通の人が大勢無くなるような出来事だよね……
『そろそろ君も衝撃に備えるなりしないとひどい目に逢うと思うよ』
そうなんだろうけど、戦っている最中で何処に避難しろと、気づけば上空の隕石は動き始めていた。
人狼と戦いながら後方に下がりつつ避難場所を見つけることが出来ないまま、強い衝撃波が襲って来た。
その衝撃で、周囲に居た人狼達と一緒に後方に吹っ飛ばされたところで、人狼戦体験は終わった。
風景が元の荒野の風景に戻るとエルメダが近寄ってきた。
「どうだった?何か得たものはあったか?」
メテオの威力が凄かったという印象しか残っていない……。
「そうですね……、全力で動いているのに油断すると囲まれることが脅威でしたね」
「そうだな、奴らの数と素早さは厄介だったからな、おまえも数日ずっと戦い続けることが出来るようになっているし体力面は十分だな、次に行くか」
次はどんな戦いなんだろうか?と思っていると風景が荒野からどこかの平原に変わった。
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