第140話 ペンジェンの街 思わぬ失敗

 再び港に戻ってきて思った。


 ペンジェンの沖合には大量の軍船が停泊しているわけだけど、どれにリライアンスフラワーの花びらがあるのかが分からなかった。


『ヒスイ、どの船にリライアンスフラワーの花びらがあるの?』

『全部、花びらだけじゃなく、根を粉末状にした物もいっぱい積んでるね』

『興奮剤になるやつだっけ?』

『そう』


 戦に向かうなら当然なのかな?というか戦も薬物に頼るのが普通なんだろうか?


『全部か……』

『うん全部だね』


 何隻あるんだよ……、1・2・3……、かぞえてみると、港に停泊中のものも含めて30隻あった。1隻1隻どこにあるか探すの?面倒なんだけど……、いっそのこと船ごと回収するか……、そう思い、港に停泊中の船をアイテムボックスへ回収しようと触れたが、回収できなかった。


 あれ?大きさの制限あるのか?


『ヒスイ、この船アイテムボックスに入らないんだけど、大きさの制限とかあるのかな?』

『ネア様の加護持ちなら制限ないはずだよ、中に生き物がいるんじゃない?』

『あぁそういうこと……』

『この船ネズミとか虫が数匹紛れてるね~』


 この船ガレー船と呼ばれるタイプの船だったと思うが……、長さが30~40mそこらか?そんな中からネズミを探し出して駆除するの?面倒というか1人でやる事じゃない!手っ取り早く済ませる手段を取る事にした。


『人とか居ないよね?』

『居ないよ』


 なら遠慮なく、船内を大気魔法と熱魔法を使い、船内の気温を絶対零度にしてすべての生き物を死滅させた。


 これで改めて触れると、船を回収できた。


『ちょっと質問なんだけどさ、残ってる船にもネズミとか虫がいるかな?』

『ん~』


 ヒスイが少し考えるような素振りを見せたのち。


『全部居るね~』

『全部ネズミと虫のみ?』

『うん』


 同じやり方で回収するか……、そう思い近くにある船の甲板に縮地で移動した。


 先ほどと同様に甲板の床に両手を置き、船内の気温を絶対零度にし、船内に生きるものを死滅させた。


 船を回収しようとすると。


『あ』


 ヒスイが何かを言おうとした。


『ん?』


 と思いながら、船を回収すると、“ドボン”自分が海に落ちた。


『だよね~そうなるよね~』


 さっきは桟橋から船の手を付けてやったから忘れてた。今は縮地も使っていない状態だ、海に落ちて当然の状態だった。


『もう少し早く言ってくれても……』

『言おうとしたら、船を回収しちゃうんだもん』


 さぶぅと思いながら、縮地を使い近くの船に移動した。


 海中で縮地が発動しないという事態にならずによかった……、とりあえず自分の周囲を熱魔法で暖かくし、水分魔法を使い自分の周りの水分を抜いた。


『あっはっは、塩が取れてよかったね』


 ヒスイは自分の様子をみてめちゃめちゃ笑いながら言った。


 自分の様子を見てみると、確かにパーカーやらジーンズやらに白い塊があちらこちらについていた。


『なるほど……、塩採取には向いてる魔法だな……』

『あはっはっは、よかったね~、あはは』


 ひたすら爆笑し続けているヒスイを横目に、風呂に入りてぇ~と思った。

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