第133話 ペンジェンの街 狼半蔵の願いと国の現状
「なんで人になりたいと?」
「おいらたちだけじゃ、仲間を守り切れないと思ったから……」
「仲間を守り切れないって?なんで?」
「拾ってきた子の中にここまでたどり着けずに亡くなったやつもいたんだ、でも兄ちゃん達みたいに道具を使えたらたどり着けたのかなと思ったからだ、それにもっと兄ちゃんの役に立ちたい」
今の時点でも戦力として十分役に立っているんだけどなとか思っていると。
「いいんじゃない?やってあげれば?」
「まぁ元々戦後に希望あればと思ったけど……」
「兄ちゃん頼むよ」
ん~まぁいいか、どのみち将来的に希望あればやる予定だったし、そう思いつつ希望している子達を人化させていった。
結果的に、最初に仲間にしたグレーウルフ衆は全員人化希望し、プラス半蔵達が連れてきた100匹程が人の姿になった。
言語理解や、絶対健康、縮地、行動速度上昇、影渡り、アイテムボックスのスキルがまだな子達はスキルを与え、名前も与えて行った。これで全部の狼に名前とスキルを与えたはずだ。
「リース悪いんだけど、ユーロンスにいって情報収集お願いしていい?」
「了解」
「なぁ兄ちゃん、姉ちゃんについてってもいいか?」
「まぁいいけど……」
半蔵からリースの方をへ視点を移すと。
「良いよ、立派な諜報員に育ててあげる」
「姉ちゃん頼むよ」
「私の事はお頭と呼びな!」
「お頭お願いします!」
リースを筆頭とした諜報員集団まるで忍者集団だよなと思った。リンクル族救出が終わったら増員したメンバー分の武具作りでもするかなと思った。
「危険がせまったら撤退して」
「大丈夫でしょ」
リース達が持っているスキルの関係上あまり心配する必要はないと思うが、念には念を入れてほしいと思った。
「半蔵達は、リースの言うことちゃんと聞いてね」
「あぁ、お頭の言う事はちゃんときくよ」
「んじゃ皆、ユーロンスにいくよ!」
「「「「お~!!!」」」」
リースと人化した狼衆が消えるように姿を消した。
「残っているリンクル族の救出と行こうか」
港に居たリンクル族の治療と移動をしていると夜が明けていた。
船の上に隠れていた内通者もエスティアへ移動させ、ペンジェン沖合の船の上に移動した。
残るはスラム街と領主邸のリンクル族だ、このまま狼衆を引き連れて行けば騒ぎになるのは明らかだった。
「全員ペンジェン周辺の街の外で自由に狩りしてていいよ」
「「「「了解」」」」
そう伝えると3匹のシャドーウルフ以外が全員姿を消した。
「ありゃ?君たちは行かないの?」
「私らは主について行くよ、情報伝達に私らは役に立つだろ?」
そりゃ影渡りがあれば十分に役立つだろうな、本人らの意思を尊重し、自分についてくることを承諾した。
「わかった、何かあるまで自分の影にいてくれる?」
「了解さ」
それだけ言うと3匹のシャドーウルフが自分の影に飛び込んだ。
とりあえずペンジェンの街中探索しながら、リンクル族がいるスラム街を探すか、そう思いながら港からペンジェン潜入し、街中で足を止めた。
街の入口付近まで来ると、冒険者ギルドがない事が発覚した。近くの人にも訪ねてみるが、やはり冒険者ギルドは無いらしい、それどころか、商業ギルドも存在しない事も判明した。ヴォーネス共和国内にはどの街にも存在しないことを聞いた。
冒険者ギルドがない商業ギルドがない、ヴェンダル王国とは違う仕組みなのか?商業ギルドがないなら商人たちの集まりみたいなのがあるはずと思ったが市場を歩いていて思うのは、ヴェンダル王国とくらべて物価があり得ない位に高い、食料品や日用雑貨は3倍4倍は当たり前で、酷いものだと10倍とか、それでいて鮮度が良くない野菜果物って……、街中をすれ違う市民たちも肥えた人は見ることなく、皆痩せ細っていた。
『ヒスイ、この街の物価って異常だと思うんだけど、どういう状態なの?』
『ん~元々訳あって、この国は農地が少ないのさ』
『訳?』
『うん、ヴォーネスの南側には大きな魔素の地脈が地上近くを走っていていくつものダンジョンがあるんだけど殆どが未発見だね』
それって……、ドザズトアダンジョンの最下層でヒスイが言っていたことを思い出してみた。たしかあの時“スタンピードは、そのダンジョン内の魔素が溜まりすぎると発生するの、人気のないダンジョンほど、スタンピードが発生しやすいかな~”と言っていた。
人気以前に未発見が長期間放置されているという事は……
『スタンピード祭り……』
『そう、地脈周辺は魔素も濃いせいで溢れ出た魔物達がワラワラといるよ、だから開拓も出来ないし、開拓するために必要な冒険者ギルドも商業ギルドもないし、負のスパイラルだね~』
『なぜ冒険者ギルド商業ギルドがないの?』
『クラリス教団が国を乗っ取る前までは、ヴェンダルと大して変わらない状態だったんだよ。冒険者ギルドも商業ギルドもあったしね~けれどクラリス教団が追い出したのさ、その結果がこれだね』
冒険者ギルドと商業ギルドをなぜ追い出したか、存在すると不都合な事があるからか?どんな不都合な事が?疑問が次々と湧き出してきた。
『追い出した理由までは分からないよね?』
『うん』
教団と対決するうえで何か大事な事が潜んでいる気がした。
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