第115話 エスティアの街 門前騒動

翌朝


 狐のお面を付け、ステータスを変えた。お面を付けている間は、鑑定偽装で、名前、スキル、適正すべてを消した。


 出発しようとしていると、セリエが駆け寄ってきた。


「私もついて行きますか~?」


 人手が必要になる可能性があるが今は不要かな?


「必要になったら連絡するよ」

「わかりました~」


 拠点の名前がまだ決まってないなとか思いながら拠点を出ると、グレーウルフ衆が集まっていた。


「兄ちゃん、おいら達になにか仕事あるか?」

「いやないな」

「それならしばらく東の森に行ってきていいか?」


 何しに行くのか気になったがしばらくは自由で構わないと思った。


「構わないよ、自由にしておいで」

「了解、よっし兄ちゃんの許可も得られたし行くぞ!」


 それだけ言ってグレーウルフ衆が森の中に消えていった。

 まぁブラックベアとトライベッカファルコン、グレーダーボア、キラービーだけでもなんとかなるでしょと思いエスティアの街に向かった。



◇◇◇◇◇◇



 エスティアの街が見えてくると城壁の外にたくさんのテントが並んでいた。


 残り1万の兵がいるから当然かと思っていると、5人程の兵士達がこっちにきた。

 それを見ると嫌な予感がした


「よぉ、狐面の兄ちゃん、お父さんとお母さんはどこにいるのかな?」


 チンピラか?

 ここはひとつお使いを頼まれた子供を演じてみるか?

 

「いないよ、近くの村からお使いに来たんだ」

「いい子だな~、俺らお金に困ってるんだけど、貸してくれない?」


 今はナットの姿だ、子どもにたかるって……


「貸したら返してくれるの?」


 兵士の格好をしたチンピラの1人がため息をつきながら。


「今度会ったら返してやるから、今持ってる有り金寄こしな」


 そう言いながら睨みつけてきた。

 ため息つきたいのはこっちなんだがなぁと思った。


「全部渡すと町の中に入れなくなる」

「大丈夫俺らが買ってきてあげるからさ」


 絶対に嘘でしょと内心思った。


「やだよ、お母さんに知らないおじさんにお金渡しちゃダメっていわれてるし」


 自分の発言に対して1人のチンピラ兵士がショックを受けているのが分かった。


「おじ……おじさんじゃないよ~お兄さんって呼ぼうか~」


 そっち?


「んなことはどうでもいいよ!金を出せっていってんだよ!」


 ずっと自分に話しかけていたチンピラ兵士がキレた。


「ボク強いよ?手を出したら死を持って償ってもらうよ」

「っはん!バレバレの嘘をついてるんじゃねぇーよ!」


 そう言って胸倉をつかみ、自分を持ち上げた。


『馬鹿だねぇ~ナットが警告したのに……』


 仕方ない……、自分の胸倉をつかんでいる両手首を掴み、一旦足を後ろに振り、勢いをつけて顎をめがけて膝蹴りをした。


 自分の胸倉をつかんでいた兵士はノックダウン!


「ガキが!」


 おとなしくエスティアの街に入るのは諦めた方が良さそうだ……、神刀をアイテムボックスからだし抜刀した。


「先に手を出したのはそっち」


 これだけ騒ぎになれば、城壁の外で過ごしていた兵士達集まってきた。


 5人以外にも武器を構える者も多かった。


 はぁ~……、ため息しか出なかった。


 襲ってくる兵士達斬りつつ、辺りを見渡すと、襲ってくる兵士とは別に武器も構えず見守っている者やどう対処すべきか悩んでいる者等が居た。


 悩んでいる位なら止めに入ってほしいんだけどなぁ、止めてくれないし、絶え間なく襲い掛かってくるせいで辞め時がと思っていると、怒声が響いた。


「何事だ!双方剣を収めよ!」


 その怒声に対して襲い掛かっていた兵士達が、動きを止め怒声の主の方を見ると、剣を鞘に納め自分から離れた。

 そこには、眼帯をし鎧を身につけた40代くらいの人と、頭に髪の毛がなく、真っ白な髭を生やし如何にも僧侶といった雰囲気のお爺さんが居た。



「貴様ら子ども一人に何たるざまだ!」


 あれ?そっち?騒ぎ止めに来たと思ったんだけど?

 しばらく動きを見ていると兵士達を叱責していた。


 もう1人の僧侶風のお爺さんがこっちにた。


「すまないね、一部の兵が君を恐喝したと聞いている」


 あぁ、見ていた兵士が手に負えないから上官に助けを求めたのかな?


「いえ」

「君1人でこれだけの大人を相手できるのか」


 僧侶風のお爺さんが辺りを見渡しながら聞いてきた。

 一緒に見渡すと、3~400位か?辺りは死屍累々として悲惨な状況だった。


「弱いので大したことありませんでした」

「ふむ、どうだろうわが軍に来ないか?これだけの腕前だ、騎士団でも中位から上位の役職を貰えるだろう」


 勧誘ですか、いい腕を持っている者が居れば当然なのかもしれないがこの状況で?と思った。


「お断りします。あなた達クラリス教団の人間はろくでもない人間ばかりみたいなので!」


 事実街中で略奪するような信者集団の仲間になる気はないが、もっと3度も足を運んで勧誘してきたオーレリアを裏切る気はなかった。


「そうか、そう言われては耳が痛いな、私はシモンズ、クラリス教団で大司教についている気が変わったら私を訪ねなさい」


 大司教ということは、上なのか?司祭とか司教とか宗教と無縁だった為良く分からなかった。


「気が向くことは無いと思います」

「ッフッフッフ、子どもはいいのぉベルガム、戻りましょうか」

「ッハ!」


 騎士っぽい人がベルガムね、反応を見る限りあのお爺さんの方が偉いのか?


「少年、街に用があるのだろう?このまま中に入ってきなさい」


 おじいさんと騎士の後についてエスティアの街の中に入った。

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