第113話 祝勝会と合流

 門前まで来ると、既に皆集合していた。


「みんなお疲れ様、今日はありがとうね」

「あんちゃんの為ならいいってことよ」

「そっか、それじゃあみんなに報酬を与えないとね、グレーウルフ衆は、みんなに一体ずつオークをあげるよ」


 ラーネバンのスタンピードで回収したオークの死体がようやく役に立つ時が来た。開けている場所にグレーウルフ達を集め1匹ずつ目の前にオークの死体をだした。


「ブラックベア衆とグレーダーボア衆はオレンジとリンゴでいいのかな」

「食べた事のない物なら大歓迎だ!」

『どっちもこのあたりでは取れないからいいんじゃない?』


 ヒスイもそう言っているなら食べたことはなさそうだな、グレーウルフ衆同様開けた場所に移動してもらい、1匹につきこの世界に持ち込んだオレンジ10個をだした。


「トライベッカファルコン衆は川魚でもいいのかな?」

「問題ない」


 トライベッカファルコン衆が喋っているのを見たことなかったけどクールな奴らの集団らしい、生前最後の日の昼間に釣りで得たヤマメを10匹ずつ出した。


「最後にキラービー衆はなにがいいかな?」

「皆みたいに普段口に出来ないものが良いの~」

『ユグドラシル!』


 ユグドラシルはヒスイが見たいだけじゃないの?と思った。

 普段口に出来ない物とリクエストがあるので、それでいいかと思った。

 城内に入り、二ノ丸入り口で、燻製で使う桜チップを取り出し修復し、根が生えてきたところを地面に植えて成長させると、綺麗な桜の花を咲かせた。


「はじめてみるの~」

『ユグドラシル♪』

「ユグドラシルだってさ」

「精霊樹なの~!?」


 精霊樹って呼ばれているのか?


『気にしなくていいよ、この子達の中ではそう呼んでいるだけだから』

『そっか』

『この花きれいだよね~ずっと咲かせ続けてもいい?』


 ありがたみがなくなりそうではあるが、日本人の自分からしたら特別な花であることには変わりない、咲き続けるならそれも良いと思った。


『出来るならどうぞ~』


 2つの緑色の光の玉が桜の周りに現れた。ドライアドの力で咲かせ続けるのかと納得した。


 門前に戻ると誰も食事に口を付けてなかった。


「どうした?皆食べて良いよ?」

「あんちゃんが食べないと皆食べれない」


 ん?なんで?


『魔物達というより、群れで過ごす生き物に見られることだけど、一番上の人が食べ始めるまで待つ習性がある者が多いよ』


 あ~なんかそんなマナーがあった気がした。


「ごめんごめん」


 アイテムボックスからリンゴを一つ取り出した。


「それじゃあ、今日の勝利を祝して!」


 手元にあるリンゴを一口食べた。


 すると周囲の魔物達が食べ始めた。皆美味しそうに味わって食べているなと思った。


『リーダー格の子だけでも名前あげたら?それだけでも彼等にとってはご褒美だよ』


 それならみんなに名前を与えるべきなきがした。


 苗字と名前か~考えないとな、キラービー衆は数不明だけど、他は各40居るし、5匹1セットとして、苗字を与えるか、1種族につき8つも決めなきゃいけないのか大変だと思った。


 ブラックベア衆は、熊、黒熊、月熊……、あと5個……、思いつかない、生前の知り合いや患者の苗字を借りよう、熊本、熊谷、大熊、熊原、熊丸、8つ決まった!


 次に、グレーウルフ衆か、狼、灰狼、牙狼、大狼、小狼……、知り合いや患者に居たかな?居た記憶がないな、あと3つ……、東狼、中狼、西狼と……、適当に決めた。


 グレーダーボア衆か、猪、猪足、猪井、猪岡、猪尾、猪垣、猪頭、猪方、結構知り合いに居たな。


 最後にトライベッカファルコン衆か、鷹、大鷹、小鷹、三鷹、愛鷹、鷹狩、重鷹、鷹森、これでOK。


 それぞれ食事が終わった衆から呼び寄せて名前を付けて行った。各衆のリーダーには必ず、熊、狼、猪、鷹と1文字の苗字をつけた。


 ブラックベア衆の長には、熊 大五郎と力強そうな名前を与えた。

 グレーウルフ衆の長には、狼 半蔵と有名な忍びの名を借りた。

 グレーダーボア衆の長には、猪 玄武と神獣の名を借りた。

 トライベッカファルコン衆には、鷹 雪と身体の色にちなんだ名前にした。


 他の子達は一郎とかもう簡単に付けました。

 名前考えるのに疲れたと思っていると、1匹のキラービーが側にきた。


「ワタシも名前が欲しい」


 キラービー全部につけるのかと思っていると。


『この子クイーンになってるね』

『女王蜂ってこと?』

『うん、巣立ちするんじゃないかな?』


 キラービーそれぞれ見分ける手段がないからな、どれもみな同じにしか見えなかった。


「君だけでいいの?」

「うん、もしかしたらお姉ちゃんが名前をって言ってくるかもだけど」

「お姉ちゃん?」

「あの巣に居る女王」


 そう言って目の前に居る蜂は白い花を咲かせた木の方を見た。

 なるほど、ヒスイの言う通り巣立って自分の巣をつくろうとしているのか。

 女王ということは女の子らしい名がいいかな?と思った時、昔の友人を思い出した。


「わかった、エイダでどうだろうか?」


 昔留学生にエイダという子が居て、名前の由来を聞いたときに高貴とか気高いという意味合いがあると言うのを思い出したので付けた。


「ありがとうなの~しばらくは主について行くの~」


 あれ?巣立ちじゃないのか?これもある意味巣立ちなのかな?


「そか、よろしくね、エイダ」

「はいなの~」


これで終わったかなと思っていると、リタにまたがったセリエが帰ってきた。


「ナット君道がつながってませんよ~」


 忘れてた!

 急ぎ道をつなげに走り、道をつなげると、馬に乗った第6騎士団の面々がいた。自分ら徒歩出来たのに……、ズルッと内心思った。


「久しぶりですね、セリエから聞きましたが、既にヴォーネスに攻められていると」


 久々にオーレリアの顔をみた。セリエからは何と聞いているんだろうか?


「あぁ撃退してるので大丈夫ですよ、どうぞこちらに」


 馬の速さに合わせて前を走った。


「セリエが、1万の兵といってましたが……」

「大丈夫です!何もありませんでしたから、彼らは魔物と戦って海に落ちて行っただけです」


 事実自分は接敵すらしていなかった。


「そうですか、1日程遅れて将軍たちも到着します」

「了解です。日が暮れそうですが、このあたりで1泊します?それともこのまま拠点まで走ります?」

「このあたりの森は安全ではないのでしょ?」


 多分安全だと思う、そうでないなら魔物衆に守らせればいいだけだと思った。


「どうでしょうか?このあたりは安全だと思いますけど、拠点まで駆け抜けましょう。このまま道沿いを走れば大丈夫です」

「わかりました」


 この後、オーレリア達を拠点に案内した。

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