第110話 敵の偵察部隊

 拠点づくりがひと段落着いた夜の事


『ナット不審者が近づいてる』


 ヒスイの警告で目を覚ました。


 ペンジェンから見える位置にあるし偵察が来る事は想定していたが、偵察が来るのは早かった。


『今どこら辺?』

『街道沿いの森、既に魔物達が侵入者に気づいている』


 とりあえずログハウスから出て、セリエが見張りをしている所に行くと、案の定、ブラックベアのお腹に寄りかかって寝ていた。


 ただ、グレーウルフだけは、森の方をジーっと見ていた。


「不審者に気づいた?」


 森の方を見ていたセリエのグレーウルフに聞いてみた。


「そうね、3人の男達が居るみたいね」

「そっか、君は何かあったらセリエを守ってね」

「了解」


 拠点の敷地外に出て森の方を見ていると、海沿いに3人の人影が見えた。


『ヒスイあの3人だよね?』

『うん』

『所属は?』

『ペンジェンに駐留しているテンプル騎士団の団員だね』


 味方じゃなく、敵兵だと確定した。


「そいつらは敵だ!消せ!」


 森に居る魔物達に聞こえるように大きな声で叫んだ。


 すると森の中から狼衆が3人に襲い掛かりあっと言う間に片づけた。


『ん~あの子達相手にするには大軍率いてこないと無理だよね、あんな軽装備でたった3人って……』


 オーバーキルだったか、ふと思った。


 いちいち所属確認しないと駄目なのがネックだな、今後は味方か敵か直ぐにわかるようにしないとと思った。


 ログハウスに戻ろうとすると、街道沿いの森から、狼の遠吠えが聞こえた。


『今度は何?』

『エスティアから武装した兵士1000人程こっちに向かってるね』


 ペンジェンからの偵察3人から丘の上に何かできていると報告でも受けたか?


 1000人というのが偵察と言える規模じゃない気がする。

 停戦協定破棄する気満々なのか?


『動向に変化があったら教えて』

『OK』


 門前で焚き火をしながら動きがあるのを待っていると、ヒスイからの報告があった。


『リースからの伝言、明日の朝1万程がここに攻める計画が上がってるって』


 休戦協定破棄確定か、先ほど偵察失敗しているのになぜ攻める話があがるんだ?


 何か焦っている?


『偵察失敗しているのに、攻める理由ってなんだ?もう少し聞いてくれる?』

『OK』


 どうするか、魔物達にこのことを伝えるべきだろうがこちらから魔物達を呼ぶ手段がない事に気づいた。


『ヒスイ、魔物同士言葉って通じるの?』

『同じ種族だけだね、ウルフ系ならウルフ系だけ、ベア系ならベア系とかね』


 ウルフたちはセリエの所に居る子にお願いすれば遠吠えで呼び寄せる事が可能そうだな、急ぎセリエの所に戻った。


 セリエは熟睡中だったが、ブラックベアも目を覚ましていた。


「門前にグレーウルフ達を呼び寄せてくれない?可能なら他の魔物達も」


 セリエを守護するグレーウルフに依頼した。


「了解、ワゥ~~~~~~~~~」


 グレーウルフすぐ行動を起こしてくれ、直後に森の方から遠吠えの返答があった。


「秋津の旦那、なにかあったんだね?」


 ブラックベアがお腹で寝ているセリエを起こさないようにこちらに聞いてきた。


「明日の朝ここを攻める計画が上がってるらしい、それに備えようかと」

「なるほど、あたいらはどうすればいい?」

「2人の仕事はセリエの護衛何が有っても死なせないように」

「了解だよ」


 急ぎ門前まで戻ると、ブラックベア達以外がすでに集結し、ブラックベア達もこちらに向かっているのが見えた。


 ブラックベア達が集まるのを待っていると、ヒスイからの報告があった。


『明日の朝、日の出とともに出発海沿いを進軍し丘の上の砦を落とすだって』

『今決まったの?』

『うん』

『理由は?』

『私にはわからないかな、リースからの返答もない』


 ヒスイの盗聴能力か、テレビだしてればドライアド達による生中継を見れたかもしれないと思ったが、そう決まったならこちらも手をうつとしよう。


 ブラックベア達がそろったようなので改めて今回こちらが把握したことを伝えた。


「これから1000人程の武装した兵士たちが来かもしれない、彼らは敵なのでやってしまって構わない、そして明日の朝、1万の兵がここに向かってくるが君たちなら大丈夫だと信じてるがいけるか?」

「まかせな、ここにいる皆はあんちゃんの為に戦える」


 グレーウルフ、グレーダーボア、ブラックウルフ、トライベッカファルコン各40だから合計160か、キラービーたちの数は把握していないが大して多くはないだろう、10000人VS160の魔物衆かかなり分の悪い戦いだった。


「もし死んだ仲間が居たら自分の所に死体を持ってきてくれ必ず蘇生させよう」

『死ぬことあるのかな?絶対健康与えてるし、死なないと思うよ?』

「あんちゃん蘇生できるのか?」

「出来るから言っているのさ」

「ふっふっふ、それを聞いて安心した。死ぬ気で戦えるな」


 熊の表情とか見てもあまり分からないがイントネーションを聞く限り悪いことを考えてそうな気がした。


「無理するなよ、後皆に聞きたいんだが、真っ暗闇とかきりが濃くても仲間の位置は分かるかな?」

「大丈夫だ敵と味方の区別位ならつく」

「なら明日の朝、濃い霧を発生させるから、それに乗じて彼等を海に突き落とすなりしようか」

「あんちゃん霧が出るとわかるのか?」

「まぁね」


 策は決まったが海岸沿いを登ってきてもらうために準備するとしようか。

 

 その前に全員に言語理解を与えよう。


 そうすれば種族関係なく人の言葉も理解できるし、お互いにコミュニケーションとれるようになる。


「んじゃ決まりだね、全員並んで」

「あんちゃん何するんだ?」

「言語理解をあげるよ、そうすれば種族関係なくコミュニケーションとれるようになるからね」

「おーありがたいな」


 並んだ子達すべてに言語理解を与えた。

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