第109話 エスティアの街の現状

 城壁の内側に入り、拠点構想を考えてみた。


 岬の先端近くに城もしくは砦を築くのは確定として、手前のエリアをどうするか、この拠点に積める者達の家は当然の事として、ある程度自給自足できるようにしたいので農耕エリアも作るつもりだが、その配分に悩んでいた。


 先に拠点となる本丸を築くか、そう思い岬の先端付近まで来た。

 遠くを見る分には絶景だな、はるか遠くに水平線が見えた。


 ヴォーネス共和国側を見ると遠くに街が見え、その手前の海上には多くの船が停泊していた。


「あれがエスティア?」


 セリエが街の方をじっとみていた。


「ん~違いますね~街の中央に時計塔がみえるのであれはペンジェンですね~」

「エスティアは?」

「右側木々の向こう側ですね~」

「もうちょっと高い所からなら見える?」

「見えると思いますよ~」


 見える高さまでやるか?1階当たり3mとして5~6階位までにしたいな、規模は50m四方の正方形型で高さは6階建てを想定して土魔法で、地盤に穴をあけ、そして土で型を作っていった。


 土魔法で作った型は1階毎に作り、オリハルコンを溶かしたものを流していく作業を繰り返し、6階部分を作ってる時にセリエが横で遠くを指さした。


「見えましたねーあれがエスティアですよ~」


 セリエが指をさした方を見ると木々の上から僅かだが街が見えた。


「あれがエスティアか」

「そうですね~もう何年も前にヴォーネスにとられちゃった街ですね~」


 近いうちに偵察に行ってみるか、リースは今どこで何をやってるんだろう?


『ヒスイ、リースはどこで何してるの?』

『エスティア領主邸でメイド長をやってるよ』


 ちょうどエスティアに居るのか、しかしメイド長って……


『急ぎじゃないからエスティアの状況を知りたい』

『それ位なら把握してるよ~』

『教えてくれる?』

『OK』


 ヒスイから現在のエスティアについて教えてもらった。

・多くの兵が街の外で野営をしている事

・兵達が粗暴な事もあり街中の治安が著しく悪化している事

・住民たちの家に侵入して食糧を奪ったりしている為、住民たちは飢えに苦しんでいる事

・創造神教の教会は廃墟と化している事同時に、国教のクラリス教教会が栄えている事

・兵士のすべてがクラリス教教徒で、街にはクラリス教のテンプル騎士団の団員と教団の偉い人が駐在している事

・エスティアの街に限らず、ヴォーネス国内にある殆どの街で対国&クラリス教団レジスタンスが居る事を聞いた。


 色々な情報をおしえてもらった。

 国と国の争いというよりは、ヴェンダル王国VSクラリス教と言ったところだな、宗教相手とか面倒だなと思った。


 ふと、宗教が相手ならこちらも宗教として戦えばいいのでは?と思った。


『ヒスイ、自分がネア様の使いとか代弁者とか名乗ったら怒られるかな?』

『使徒だし使いを名乗るのは問題ないと思うよ。ただやり過ぎたら怒られるかもしれないけどね』


 なるほど、無血開城とはいかないが、時間がかかるが、死者数を抑えてエスティア奪還は何とかなりそうな気がした。


 最悪クラリス教の異端審問官なんかが居たら自分を追い回しそうだが、それ位は覚悟しておこう。


 急ぎ目の前の仕事である、拠点づくりを完成さなければ、50m四方の6階建ての建物を完成させ、最初に作った、壁堀壁を拠点となる建物の周りに張り巡らせた。


 最後に住居エリアは半分住居にし、半分は農耕エリアにしようと決め、生前使っていたログハウスを大量コピーして設置し、いつでも農作できるように残り半分を土魔法で耕した。


 辺りを見渡すと日が暮れ始めていた。


「凄いですね~同じ家がいっぱい並んでますね~」

「家具とか何もないけど、水と明かりはつく」

「火があれば完ぺきですね~あとは姫様たちがいつ来るかですね~」


 すぐ来るようなことを言っていたし、そんなにかからないとは思った。


『ヒスイ、あとどれくらいで姫様たち来るか分かる?』

『ん~明日の夕方から、翌日位にかけて到着すると思うよ。今トライベッカ公国の国境近くで野営しているし』


 割と近くに居た。


「明日街道まで道をつなげるから、セリエはそこで姫様たち来るのを待ってってくれない?」

「いいですよ~ナット君はどうするんですか?」

「もうちょっと拠点強化できないか色々やってるよ」

「わっかりました~」


 今日はこれで良いだろう、城壁もあるし魔物達が襲来することは無いだろうと思ったので、ゆっくり過ごすことにした。


「セリエも適当な場所確保してゆっくりしなよ」

「ん~今夜は私が見張りします~」

「んじゃ、よろしく」

「はい~よろしくされました~」


 そういってセリエは寝そべっているブラックベアに背を預けてリラックスしていた。

 

 セリエはこのまま寝そうだなと思ったが、ヒスイや他の子達が対処してくれることを信じて近くにあるログハウスの中に入った。

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