第94話 リースの武器作り

 謁見の日から数日が経った。今はリースの納得する武器作りをしている。


 リースの使っていたアダマンタイト製の忍び刀をモデルに作っているが、一向に納得してくれない。


「ん~なんか違う……」

『品質がね、リースが使っていたのは大業物だけど、君が作ったのはただの業物だし』


 ん~品質の差か、せっかく作った忍び刀を潰し再度作り直すというのを延々と繰り返していた。おかげでアダマンタイトの扱いと鍛冶作業に慣れてきた。


 もういっそのことアダマンタイトではなくオリハルコンでもいいのでは!?と思った。


「ん~アダマンタイトをやめよう」

「ぇー!ダメだよ!ちゃんと弁償してよ!」


 トザズトアダンジョンを思い返すと、最下層から順にオリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマンタイトだった。


 そのままオリハルコンが最上級品だとしたら、ヒヒイロカネが次点でアダマンタイトと続くのだと思った。


 どれも大量に塊があるしオリハルコンで忍び刀作ってみようと思った。


「こいつを使おう」


 そう言ってオリハルコンの塊を出した。


「ぇ、それってオリハルコンじゃ……」


 リースは鑑定持ちらしくすぐに気づいてくれた。


「大量にあるし少しくらいダメにしても気にしない」

「気にしたほうがいいよ……、それだけで王都内に豪邸を建てることが出来るよ……」

「大丈夫、この塊100や200ではなくもっと大量に持っているから」

「その塊売って弁償してくれてもいいんだよ?」


 確かにそれもひとつの手だと思ったが、それをやったら負けな気がした。


「まぁ最後の最後はそれで良いと思うけど、この辺で刀とか売っているところあるの?」

「予備を買う為に色々な鍛冶屋を回ったけど無かった」


 もし存在するなら自分も欲しかった。


「とりあえず、オリハルコンで作ってみるよ」

「わかった」


 そう言うとリースは家の中に入っていった。リースはただ居候するだけではなく身の回りのことをきっちりやってくれている。そして夜になると庭にあるログハウスで休んでいた。


 オリハルコンを扱うのは初めてだ、どれくらいで溶け始めるかも知らないのが現状だった。


「ヒスイ、オリハルコンを扱うコツってある?」

『ん~他の金属と違って、魔素をまとわせながらやることが大事だよ』


 魔素が絡んでくるのか、ちょっと面倒だなと思った。


 ヒスイのアドバイス通り、ヤットコでオリハルコンの塊を掴み、適当にオリハルコンの塊に魔素をまとわせた。


 そしてゆっくりとオリハルコンに熱魔法で熱を与えていく


『融解温度はアダマンタイトと同じだよ』


 慣れているアダマンタイトと同じでよかった。


 オリハルコンが薄っすらと淡い光を放ち始めた。


『いいんじゃない、そうなったら形を整えていかないと』


 金敷に乗せハンマーで叩き形を整えはじめた。


『無心でやるんじゃなくて、完成後どうなってほしいかちゃんとイメージしないと』


 ヒスイのアドバイスに従い、壊れにくく切れ味の良い刀になってほしいと願いを込めながら形を整えていった。


 次に熱を奪い一気に冷やした。


『研ぐ時も魔素を?』

『うん、最後まで魔素を纏わせないと意味がないよ』

『了解』


 土魔法を使い砥石を出現させ繰り返し研いでいった。


 研ぎ終わると自分の手元には見た目は満足の良い刀が出来た。


『上出来!大業物、切れ味上昇8強度上昇7だって、初めてオリハルコンを扱ったにしては十分じゃん!』


 ん?切れ味上昇8強度上昇7ってなに?


「へぇ、あんた付与魔法使えるんだ」


 背後から声がしたのでびっくりした。


 すぐ後ろにリースがいた。


「驚かすなよ……」

「ごめんごめん」


 リースは少々申し訳なさそうに謝ってきた。


「んで、付与魔法って何?」

「あんたそんな事も知らないでやっていたの?ごくまれに付いているんだよね、切れ味上昇とか強度上昇とかね」

『どういうこと?』

『魔素を纏わせ、思いを込めながら物作りすること自体が付与魔法なんだよ』

『もしかしてアクセサリーとか他の金属でもできるって事?』

『そうだよ~それをやっている職人っていないみたいだけどね~』


 魔法を使うときは魔素を使いイメージする事で発動するというのは知っていたが、付与魔法も似たような工程で出来ることを知った。


 何はともあれリースの武器が出来た。


「リースこれで良いか?」

「良いんだけど貰っていいの?」

「そりゃリース、おまえが弁償しろっていうから作った刀だからな」

「すごく貰いすぎな気がするけど、私の気が済むまで何か手伝いをする!」


 リースが身の回りの事をやってくれるならそれはそれで助かるしその好意はありがたく頂戴することにした。


「んじゃそれでお願い」

「うん♪」


 尻尾がパタパタと嬉しそうにしていた。

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