第89話 武術会青年の部

 両親が村に帰った翌日


 狐のお面を被り剣道着とバイク用のハーフフィンガーグローブを身に着けた。

 今日はフォックスマン!として青年の部に参加する予定だ。


 早速準備して家を出で闘技場に向かった。


 闘技場に向かってる途中で気になった事がある。

 多くの獣人系の人が王都を出ていく姿が見られた。

 収穫祭4日目なのになぜ?と思いながら闘技場に向かった。


 闘技場に向かうと、幼年の部初日と同様に、係の人に控室に通された。そこには妖狐族の女性が居た。

 彼女は周囲に興味を持たず、自分の忍び刀の手入れをしていた。


 控室の壁に貼られている物を見てみると、予選は2組目のグループらしい、リースは6組目かトーナメント表を見ても決勝まで当たらないことが分かった。


 しばらくすると係の人に4名の名前と自分の名を呼ばれた。


「フォックスマンさん~」

「うぃ」

「1・2・3・4・5全員いますね、それではリングまで案内します」


 リング上までは以前と変わらないルートを通り、リング上へ上がった。


 対戦者を見ると14人いて、学生服を着ている者、いかにも冒険者って感じの者もいれば、狐の仮面を被っている自分が言えた事ではないが、フードを深く被った不審者もいた。


 今回は、神の手、自分の武器無し縮地無し、行動速度上昇のみで対応していく!この縛りプレイで行こう!


 選手紹介が始まり、自分はなんて言われるのかなぁと思っていたら、“謎の男フォックスマン!”だけだった。ちょい寂しすぎない!?その後、すべての選手紹介が終わりいよいよ始まった。


「さぁ~これで2組目全選手紹介が終わりです。それで始めましょう!2組目バトルロワイヤル!レディーゴー!」


 誰に向かうとも決めてなかったのもあって、スタートが出遅れたが、こちらを狙ってるのは、弓使いの学生と、フードを深々と被った人が右手に短剣を構えこちらに走ってきた。


 行動速度上昇を使用している為、周囲がスローで色々対処しやすい、フードの男の右側に避け、ナイフを持っている右手首を右手で掴み、自分を軸に振り回しつつ、バランスを崩したところを右手首を掴んでいる右手を返した。面白いようにひっくり返った。持っていたナイフを取り上げ喉を斬り、不審者は場外へ、狙いを定め終わったのか放ってきた矢を掴みそのまま持ち主めがけて投げ返してみたが大したダメージならなかったようで、不審者から取り上げたナイフを投げ弓使いの学生の頭にざっくり刺さり場外へ行ってもらった。


 正直もうちょっと投擲関係鍛えたいなとか思いつつ次のターゲット探し、今の所自分をターゲットにしている奴はいないようだ、中央付近で近接戦やっている4人と別の所で近接戦をしている2人に魔法使い・弓使いが5人ほどばらけている。

 近くに居てこちらに注意していない弓使いと魔法使いから狩る事にした。


 気配を殺し弓使いの背後に駆け寄る矢筒から1本矢を拝借したときに気づかれたが、そのまま思いっきり首に刺した。

 すぐ近くに居る魔法使いがこっちに気づき詠唱をはじめてる。

 急ぎ魔法使いの元に駆け寄り、顎をめがけて掌底をして詠唱を止め、そのまま顎を掴み床にたたきつけようとしたら消えた。舌でも咬んだか?


『直人!』


 ヒスイの声に反応し、ん?と思い後ろを振り返ったら、剣を持った女性がすぐそこまで迫りしかも切り上げようとしていた。すぐさま横にずれたおかげで背中をバッサリやられなくて済んだ。


 さっきまで近接戦やってたと思ったのに弓使いと魔法使いやってたらこっちに来ていたなんて……、


『彼女、行動速度上昇もってるよ、君みたいに常時じゃなくオンオフ切り替えて戦ってるみたいだけど』


 よく見るとこの女性、ラーネバンのスタンピード戦で足を筋断裂していた女性だった。

 獲物は長剣か、スピードは自分の半分くらいかな?それなのに斬撃速度は普通に早い正直油断するとバッサリ斬られそう!攻撃軌道が読める為避けようはあるが、気迫がちょっと怖かった。


 上下より斜め左右の攻撃が多く、それも斬撃速度が速いせいでやり難い、縮地が使えればなぁ、自分で縛りやるって決めたから曲げたくないし……、もっと早く動けないかなと思いつつ、しばらく避け続けていると、


『あっ』


 ん!?っと思った瞬間、女性の動きが明らかに遅くなった。体力尽きたか?このチャンスを逃すわけにはいかない、フェイントじゃないと信じ、思い切って前に出て女性を掴みうつ伏せに倒し。

 女性の首に強めの足刀を落とすと、女性が消えた。

 実際にやったら危険行為だからなぁ首の骨が逝って死亡扱いになったかな?


 女性の対処が終わり、次に行こうと思ったら、周りの行動速度がおかしい位に遅い、今のうちにさっさと倒してしまおう。

 その後は女性以上の強者がおらず片づけた。


 試合後自宅に戻る途中


『そういや試合中に“あっ”って言ってたけど何かあった?』

『その後何か変化なかった?』

『女性の動きが明らかに遅くなった事かな?』


 それ以外に思い当たる節はなかった。


『そう、君の行動速度上昇は極めていたんだけど、その時その上を行ったんだよね』

『そんな事もあるんだね』

『君のスキルに限界突破があるよね、今回はそれが初めて発動したんじゃないかな』


 そういや、成長しやすくと限界突破をお願いしていたことを思い出した。


『どれくらい早く動けるのかな?』

『ん~普通の30倍多分もっと上があると思うよ?』

『今までって10倍じゃなかったっけ?』

『だね』


 10倍から30倍とか跳ね上がりすぎ!

 明日のリースとの闘いも何となりそうかな?

 とりあえず今日は帰ってゆっくりしよう。

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