第46話 悪人には相応の罰を

 宿に戻る途中の事、は侯爵何か考えるような仕草を見せていた。


「ナット君、先の2人にしたことだが、記憶も消すことができるのかい?」


 記憶の消去はグレーダーボアで一度やった事がある。


「できますよ」

「そうか……」


 また何か考え込んでいた。しばらくすると意を決したように切り出してきた。


「ナット君もし叶うなら、子爵と男爵の暗殺をお願いしたい」

「暗殺ですか?」

「あぁ、出来たら病死という体で頼みたい」


 病死という体で殺すのは可能だろう、治すことが出来るなら病気にすることも出来るはずだし。


「それは出来そうですが……」

「それでだ、もし君さえ良ければ、2人の記憶を消して我が家に連れてきてほしい」

「ぇ?」


 誘拐の黒幕を許すというのか?


「2人を許すのですか?」

「君はどんな罰を望む?」


 鬼人族の子が味わっただろう苦痛だろうか?


「もしミリちゃんが誘拐されてたらどうなってました?」

「戦場奴隷だろうな鬼人族が1人居るだけでも大分変るからな」


 この世界にも奴隷制度ありなのか。


「ならば同じような目に合うべきだと思います。今は戦争中ですよね?」


 確か旅に出る直前に、フェアレ獣王国とヴォーネス共和国同盟と戦争中だと聞いている。


「フェアレとヴォーネスの事かな?」

「はい」

「その戦なら、1カ月ほど前に5年間の停戦協定を結んでる」


 あ~そういえば、ラーネバンの時に停戦してとか言ってたっけか、期間限定とはいえ停戦か、まぁ戦いの場ならいくらでもあるだろうし……


「ならば普通に戦い用奴隷として生活してもらえばいいんじゃないですか?」


 そんな世界に、幼い子を2人は送ろうとしていたんだから、相応の罰を受けるべきだ。


「それが君の判断なら従おう、君はどのようにするのかな?」

「そうですね、病死に見せかけて、本体は別人として奴隷になってもらおうかと」

「わかった、それで構わない、それならこれを渡しておこう」


 こっちの言い分に対して何か思ったりしないのだろうか?

 すんなりとOKがでた。

 侯爵から渡されたのは小さなゴツゴツの人型の何かが付いたアクセサリーだった。


「これは?」

「我が侯爵家が君の身元保証をするという証だ、奴隷商に行ったらそれを見せれば問題なく手続きは済むはずだ」

「いいんですか?」

「使徒である君の身元保証をしたとなれば名誉でもあるからな」


 それが本心か、侯爵はニコニコしながら応えた。


「ありがとうございます。得たお金で孤児院の周辺の土地を購入したいんですが、土地の売買しているところの紹介もしてもらえませんか?」


 侯爵は不思議そうな顔で尋ねてきた。


「孤児院の周辺を買ってどうするのだ?」

「孤児院で何か収入になる様にと思ってます。例えば薬草園とか、卒業後錬金術師になる子がいれば、専属で下ろすなりすればいいと思います。」

「なるほど、孤児院で事業か」

「別に薬草園じゃなくても子どもたちの自立につながる事なら何でもいいと思うんですよ。」

「わかった、ならばこの町の長は、私の信用のおけるものに就任してもらえるよう王に掛け合おう」


 侯爵自身が色々やってくれればそれでいいんだけどな


「ポーンタナは、侯爵様の領地じゃないんですか?」

「私の領地だが、町を治める者は王の了承を得なければならんのだ」


 選挙とかじゃないのは新鮮だが、面倒だな……


「孤児院の事は侯爵様自身でやります?」

「そうだな、君の案を元に色々やってみよう。」


 この地に残る理由がなくなったな、


「ならば2人を売ったお金は侯爵様に渡しますね。」

「いや、君が持っていてくれ、今後何か大きなことをやろうとする際にでも役に立ててくれ」

「わかりました。ありがとうございます。」


 孤児院を見て思った事、戦国時代に歩き巫女のような組織が出来ればいいなとか思った。

 どこかに子ども達を集めて忍びの郷でもつくるか?それこそ薬草園を作って、薬売りとして各地に散って情報収集とかヒスイが居るから必要かどうか考えると微妙な気もする。


「話を戻すが、2人の存在を消す際、証拠になるものを確保してくれると嬉しい。」


 引き受けてもいいが、そもそも忍び込む技術が無いが、見つかったら意識を刈り取ればいいか?


「わかりました。証拠の確保の依頼引き受けます。」

「すまない、護衛依頼に関しては完遂したことにしよう、グアーラもそれでいいか?」

「かまわん、ナットは既に野営の知識もあるし一般常識もあるからな、2週間経ってないが卒業で構わないだろう。」


 良いのかな?それはそれで助かる。他人と行動するというのは肩がこるからな……


「ありがとうございます。」

「いや、こちらこそ羽の件は感謝している。浮遊大陸にきたら是非俺の元にきてくれ、必ずこの恩は返す。」

「わかりました。」


 浮遊大陸は楽しみだが、問題は高所恐怖症で行けるのかどうか……


「ナット君、この先の十字路を東側に行くとポーンタナ男爵邸が見えてくる。おそらく男爵はそこだ」

「わかりました。短い間でしたが色々ありがとうございました。」

「こちらこそ色々ありがとう。2人の件は頼んだ。」


 こうしてグアーラと、侯爵と別れた。

 護衛クエストが終わった。

 さて、ポーンタナ男爵邸の潜入といきますか、上手くいくかな?

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