第41話 ポーンタナ
翌朝、朝一でギルドに向かいポーンタナ、アヴェナラ方面への配達等の依頼が無いか確認しにいったが、ついでに出来るようなクエストは無かった。
宿に戻るとグアーラが侯爵夫妻と話をしていた。
「もどったか、依頼はあったか?」
「配達とかついでに出来そうなものはありませんでした。」
「そうか」
「それではそろったし出発をしようか」
各々昨日までと同様に馬車に乗ったり御者席行った。自分は馬車の後ろからついて行くのでそのまま動き出すのを待っていた。
しばらくすると馬車が動き出したので後について行く、馬車はすぐに街の外にでた。
そこからはポーンタナまでの3日間は順調だった。時々ヒスイが魔物の存在を知らせてくるので、グアーラに一言伝え、討伐に向かう、討伐したらまた馬車の後方に戻る。これの繰り返しで、野営地でも魔物に襲われる事なく夜を過ごした。
そしてラーネバンをでて3日目の夕方ポーンタナの街についた。ラーネバンよりは賑わいのある街だった。今回は南門から入り、街の北側の宿で1泊する事になった。
侯爵一家が宿に入った事で自由時間になった。
「グアーラさんギルドと街探索してきていいですか?」
「あぁ、いいぞ、夜遅くなる前に宿に戻って来いよ」
「はい」
さて、まずは冒険者ギルドにいって次いでに出来るクエストが無いか確認するか……
この街の冒険者ギルドがどこにあるか知らない、街の入口近くにあるんだっけ?そう思いながら宿のある北門周辺を探したが見つからなかった。
次は反対側の南門へ向かった。向かう途中いくつかの露店が並んでいた。夕食時というのもあったので、何か食べようと思い飲食露店を中心ウロウロし眺めていると背後から視線を感じ後ろを振り向くと通りの反対側の建物の壁に自分と同じくらいの男女4人の子どもたちがいた。
「孤児院の子どもらだ、手癖の悪い奴もいるからな買った物をパクられるなよ」
焼きモロコシを出している露店のおっちゃんが教えてくれた。
孤児院か、クリフトとサンディの件があるし、ギルドより先にそっちいくかな?
「孤児院の子どもたちってどれくらいいるんです?」
「そんなこと聞いてどうするんだ?30位じゃないか?」
30位か、余裕をもって40位あればいいかな?
「んじゃ、40本ください」
「あん?そんなに持てないだろうに」
おっちゃんは少し不機嫌そうに応えた。
「アイテムボックス有るんで大丈夫です」
「なるほどな、40本ともなるとしばらくかかるがいいか?」
「いいですよ」
「それじゃあ待ってな」
出来上がり次第受け取りアイテムボックスに放り込んでいった。
「これで40本か、お代は大銀貨8枚だ」
40本目を受取、大銀貨8枚支払った。
「まいど、気を付けて帰れよ」
通りの反対側で壁に寄っかかったりしている子供たちの元にいき、リーダー格っぽい男の子に話しかけた。
「ねぇ、君ら孤児院に案内してくれない?」
「は?何の用だよ」
ん~考えてなかった。クリフトとサンディの話を出すのはNGだろうし……
『シスターミランダ、孤児院の院長をやってる人だよ。』
ナイスヒスイ!
自分が悩んだことに反応して孤児院の中を覗いたか?
「シスターミランダに会いたいんだけど」
「院長先生にかよ、ついて来いよ」
4人の子どもたちが歩き始めたので後について行く。南北を走る大通りではなく、細い路地に入っていった。しばらく歩くと、住居と思しき建物がなくなり、目の前に街を囲む城壁が見えてきた、その城壁の下に2階建ての木造建築の建物が建っていた。
『サンディとクリフトは?』
『厨房と地下に居るよ』
2人は厨房と地下か、問題はどうやって2人と接触するかだな。今夜の夕食の寄付者として接触すべきだろうか?
子どもたちが建物の玄関を開け中にはいった。
「園長先生!お客さん連れてきたよ!」
しばらくすると、小柄の女性がやってきた。
「こんな時間に、お客様とはどちらの方でしょう?」
周りにいた子供たちが一斉に自分を見た。
さて、どうするか……
「初めましてシスターミランダ、自分はナットと申します。こちらの4人が露店前で物欲しそうに見ていたので案内してもらいました。」
案内してくれた4人の表情が険しくなった。
「はぁ?物欲しそうにしてねぇし!」
「そうよ!」
案内してくれた子どもたちから不満の声が上がった。
「おやめなさい、あなたたちがいつもこの時間に露店の前に行っているのは知っています。それであなたの要件は何ですか?」
「物欲しそうにしていたのは冗談ですが、ちょっと収入があったのでこちらの子どもたちに分けようかと思いまして」
そういって先の露店で買った焼きモロコシを出した。
「あなたも子どもでしょ。子どもからそのようなものを受け取るわけにはいきません」
はぁ、どうしたら受け取ってもらえるかな……
アイテムボックスから、冒険者カードをだし、一定以上の収入がありますよアピールをした。
「確かに自分は子供ですが、これでもCランクの冒険者です。予想外の収入があったので焼きモロコシを寄付にとおもいました。」
「これは……」
4人の子ども達から「うそだ」「まじかよ」なんか言っていた。
シスターミランダが、自分の冒険者カードを確認していると奥から声がした。
「お兄ちゃんの肩に居るのは精霊様?」
ん?と思い、声の主の方を見ると額に小さな角を生やした2~3歳の女の子がいた。
『あぁスキルで魔素視があるから私がみえるんだろうね。それに珍しい、鬼人族の子だ』
『鬼人族?』
『そう、元はオーガって呼ばれる魔物だったんだけど、一部のオーガが人になりたいと望んでネア様の手によって人の姿になった種族だね、魔人種 鬼人族って呼ばれるよ。大人になると恐怖心を感じる事がなくなり、身体能力が高いから戦いに特化した種族だね。』
へぇ、そんな種族がいるのか、というより魔物から人か
『魔物から人になる事が出来るのか』
『そりゃできるよ、獣人達だって元は動物だしね~それに君も魔物から人にって出来るはずだよ。』
神の手か、神の手でそれが出来るのか、そういった目的で使うことはあるんだろうか?
「ミリこの子に精霊が付いているのですか?」
冒険者カードを確認していたシスターミランダが、鬼人族の子の方を向き質問していた。
「うん、お兄ちゃんの肩に緑色の光の玉が見える」
「そうなんですか?」
シスターミランダが、鬼族の子から自分に視線を移し質問してきた。
「えぇ、精霊なら肩にいますね。」
『しかたないなぁ~』
ヒスイの身体が淡く光った。こいつ姿を見せる気か……
「これでどうかな?私の姿がみえる?」
「おぉ……」
シスターミランダが跪いた。なんで!?
「シスター、ナットの言う事は本当だから受け入れてもらえる?それに、医術に長けているから子ども達を診てもらうといいよ」
「なんと、精霊様のお導きですか……仰せのままに……」
自分信用されてなかったのに、ヒスイの言葉には即信用ですか、そうですか……
『まぁ精霊は嘘を付けないって言われてるしね~仕方ないよ』
「ナット様の寄付ありがたく頂きましょう、一緒に夕食を食べて行ってください。」
「えっとありがとうございます。」
そう言って食堂と思しき所に案内された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます