限界離婚

第3話 同居開始

鈴奈は結婚して4年目になる。

アパートを借りて夫婦と長男と暮らしていた。

鈴奈は長男の勇太を妊娠している時に仕事を辞めた。

仕事中に腹痛があり、出血した為受診をしたら切迫早産と診断され、仕事を辞めたのだ。

その後、無事に長男の勇太を出産し、育てている。

夫の良は、定期的に出張へ行く。休日もなにかと忙しく、鈴奈はほとんど一人で勇太の面倒を見ていた。

「そろそろ二人目が欲しいよな」

夫は、鈴奈に告げてきた。

鈴奈は言った。

「そう？まだ早いよ。勇太で手一杯だから、、、」

夫は言う。

「俺、もう38になるよ。もし来年子供が産まれたとして、子育てに約20年だろ。60歳までには子育てを終えたいよな。鈴奈だって、35歳までに産みたいって言っていただろ。」

鈴奈は言った。

「確かに、結婚した時は言っていたけど、今私も働いていないし、家計は毎月ギリギリなのよ。もう一人産まれたら、とてもじゃないけど、お金が足りなくなるわ。それに、勇太は来年度から幼稚園へ行くのよ。幼稚園の送り迎えとかどうするの？貴方は忙しいから難しいでしょ。」

夫は言った。

「そうだよな。なあ、俺の実家に同居するのはどう？両親ももうすぐ定年だし、人手があれば、出産の時に勇太の面倒も見てもらえる。鈴奈が外出する時に子供を預ける事もできるだろ。家賃も浮くから貯金もできるんじゃないかな。」

鈴奈は言った。

「そうね。ちょっと考えてみるわ。」

夫の義両親とは車で20分の距離に住んでいる。義両親は二人とも働いており、今までは高齢な義祖母が家事を担ってきたらしい。時々会う義両親は勇太をよく可愛がってくれていた。特に義父は孫と遊ぶことが好きらしく、勇太を公園へ連れて行ってくれたりする。

今週は、一週間ずっと夫が出張だった。勇太は可愛いが、些細な事で癇癪を起す事がある。今日もスーパーへ一緒に買い物へ行った時に、お菓子が欲しいと泣き叫んだ。

後ろを歩いていた見知らぬ男性が、勇太へ「うるさい。親の躾がなっていない」と怒鳴ってきた。鈴奈は言い返す事も出来ず、頭を下げて謝る。

男性の声に驚いた勇太は、より機嫌を害して大声で泣く。

こんな時は一人で買物に行きたいと思う。

同居もいいかもしれない。あの優しい義父なら勇太とよく遊んでくれそうだ。

どうせ、二人目出産時は、お世話になろうと思っていた。

家賃が浮く事も魅力的だった。

鈴奈は夫へ告げた。

「同居の話、お願いします。」

夫は嬉しそうに言った。

「ああ、俺も今まで出張中心配だったんだ。妊娠して前回みたいに体調を崩したら困るしね。」

週末義両親宅へ挨拶へ行き、同居の事を相談すると快く了承してもらえた。

特に義母の京香が乗り気で、できるだけ早く同居したいと言ってきた。

鈴奈は、社交的でいつも忙しそうにしている義母は、あまり子供が好きではないのではと思っていたので、意外だったが、やはり孫は可愛いのだろうと納得した。

勇太は大好きな祖父と一緒に暮らせると、とても喜んでいた。

夫とも、相談して最近は避妊を止めた。いつ二人目ができてもおかしくない。

小雨が降る6月の末に良と鈴奈と3歳の勇太は、義実家へ引っ越した。

鈴奈は、期待に胸を膨らませていた。勇太の為、二人目の子供の為できる事はなんでもすると決めていた。

数か月前に退職した義母の京香、もうすぐ退職する義父の広一、義祖母の文が息子を可愛がってくれるはずだった。

当然そうだと思っていたのだ。