あぶら

勝利だギューちゃん

第1話

セミが鳴いている。

ジージージージー鳴いている。


アブラゼミだな。

うるさい。


油で揚げたみたいな鳴き声だから、アブラゼミというらしいが、油で揚げてもちっとも美味しくない。


ミンミンゼミのように夏らしくもなく、ヒグラシのように切なくもない。

ツクツクホウシのように可愛くもない。


ただうるさいだけだ。


それにしても、腹減ったな。

最近、何も食べていない。

このお腹どうしよう・・・


『なら、俺を食べていいよ』

声がする。

どこだ?


『上だよ。上』

見上げるとセミがいる。

さっき話してたアブラゼミだ。


『俺を食べていいよ』

「遠慮しとく。まずそうだ」

『しかし、空腹には勝てぬ』

「いいのか?」

『ああ。もう結婚して子作りしたし、後は死ぬだけだからな』

「じゃあ、いただく」

『ああ、油で揚げてくれ』


人間限界に達すると、幻覚が見えるって本当だな。

美味しくいただいた。


でも・・・


クマゼミのほうが、旨かったな。

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あぶら 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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