萌花とせんぱい ~何かと近い2人の日常~

浅葱

第1話 後輩と日常

「ねー、せんぱい」


 放課後の帰りに寄ったファストフードのカウンター席の隣から聞こえる少女の声に、窓の外の景色を見ながら応える。


「どうした萌花?ポテトなら渡さないぞ」

「むぅ、そうじゃないです。気になったことがあっただけですよ。ポテトはその後です」

「ポテト奪うのは確定なのかよ……。まぁいいや。気になったことって?」


 ツインテールを揺らしながら、行儀よく両手でハンバーガーを食べる後輩の方に少し目を配り、言葉を待つ。


「わたしとせんぱいの関係って、何なんですかね?」

「先輩と後輩……ってことではなく?」

「なくです。もっと、距離感的な関係性です」

「うーん。ただの知り合いってのは違うよな。それだけなら一緒に飯食ったりしないし」

「でも友達っていうのも、違う気がするんです。友達みたいに仲良くしてる自負はありますけど、それとは別種というか……。はっきりしないなぁって」

「確かに。なんか言われてみると、よく分かんない関係だよな。俺たち」

「……相棒?」

「迷走してきたな」


 俺と萌花の関係……考えたこともなかったが、俺たちはどんな関係なのだろう?

 友達かと言われるとしっくりこないが、波長は合うし、俺も萌花とは話しやすいと思ってる。

 何故ここまで仲良く出来るのかは俺も分からない。気付いた頃には萌花に懐かれてて、帰り道以外でも、出会うことがあればヒヨコみたいについてくるようになった。


「せんぱい」

「?」

「あーんして♡」

「はいはい。こぼすなよ」


 そう言って萌花の口にポテトを運び、美味しそうに食べる姿を見守る。

 さっきの話、親鳥とひな鳥みたいな関係……って言ったら怒るかな?


「せんぱい」(撫でられ待ちの顔)


 まぁ、なんでもいいか。俺たちの関係性なんて。


「んー」(←撫でられ待ちの後輩)

「ん」(←後輩をワシャワシャする男)

「ん~~っ」(←満足げな顔)


 これは、そんなちょっと距離感が近い後輩との、よく分からない関係性のままに過ごす、何でもない日常の物語だ。

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