6.女騎士は変態だと!?
無事現れた魔物を倒した村比斗達。
しかしその直後に突然ラスティールが股を押さえながら喘ぎ始めた。
「んんっ、んあ、ああ~ん……」
「ラ、ラスティちゃん……?」
さすがのミーアも呆然と見つめている。心配した村比斗が声を掛ける。
「お、おい、ラスティール。大丈夫か?」
ラスティールは頬を赤く染めながら色っぽく言う。
「ラスティ、って呼んで……、ああん……」
「は?」
そして村比斗が続けて何かを言おうとした時、急に胸の奥に激痛を感じ顔を歪めた。
「ぐぐっ……」
「村比斗君?」
鈍痛。そのあまりの痛さに両膝を地面につき、倒れるように横になる村比斗。胸を押さえ、そして顔は激痛に歪む。ミーアが言う。
「ちょ、ちょっとお、どうしちゃったのお~、ふたりとも!?」
片や快感に喘ぎ声を出し、片や激痛に顔を歪める。
そしてふたりとも暫く唸ってから、別の意味でぐったりとして静かになった。
(天国か、ここは……)
紅潮した顔のラスティールがゆっくりと目を開ける。あまりの快感、これまでに経験したことのないような快楽に身を委ね、そして天にも昇る気持ちで目を覚ました。
(じ、地獄か、ここは……)
片や村比斗は胸を万力のようなものでぎゅっと潰されるような鈍痛に耐え切り、ゆっくりと目を覚ます。
「大丈夫~? ふたりとも?」
心配したミーアが声を掛ける。
「だ、大丈夫だ……」
そう言って先に立ち上がったのはラスティール。しかし辛うじて理性があったのだろう、自分が経験した快楽を恥じ、その顔は朱の様に赤く染まっている。
「ど、どうなってるんだ……?」
そして村比斗も胸を押さえながらよろよろと立ち上がる。
「はあ、ふう、ふう……」
何度も深呼吸をしたラスティールが言う。
「ちょっと状況を整理したい。いいか?」
「ああ、そうだな。ラスティ」
「はあっ!?」
それを聞いたらスティールの顔が鬼のようになる。
「き、貴様っ!! 男のくせに、底辺の分際で私の愛称を軽々しく口にするな!! 殺すぞっ!!!」
「へ?」
(いや、それはお前がそう呼べって言ったんだろう……、本当にどうなってるんだ、こいつ……)
村比斗は納得がいかないながらも『ラスティール』と言い直す。やや怒りの収まったラスティールが一度息を吐いてから言った。
「魔物を倒した後なんだが、私の頭の中で『貢献ポイント獲得、レベルアップする』との言葉が何度も響いた」
「あー、それ私もだよ!!」
ラスティールの言葉を聞いたミーアが同調する。
「なに? お前もか?」
「うん、ミーアの場合は一回だけだけど。あ、でも、その言葉はちょっと前にも聞いたよ~」
「ちょっと前?」
ラスティールがミーアに尋ねる。
「うん、確か、村比斗君を助けてお魚あげて『ありがとう』って言われた時かな~?」
「なるほど」
ふたりの話を聞いていた村比斗が言う。
「なあ、よく分からんのだけど、つまりどういうことだ?」
ラスティールが答える。
「それはな、村比斗。お前が本当に『村人』だったかもしれない、ということだ」
「は?」
ラスティールは腕を組んで言う。
「『貢献ポイント』を与えられる存在と言うのは基本村人だけだ。まあその派生で商人とか司祭とか何でもいいのだが、最も弱い村人がよりポイント付与率が高くなる」
「そ、そうなのか!?」
ちょっと喜ぶ村比斗。
「ああ、そうだ。最も死にやすいからな」
「あ、そ……」
笑顔だった村比斗の顔が一瞬で戻る。ラスティールが言う。
「そんなことはどうでもいい」
(いや、良くないぞ……)
「大切なのは、お前が村人だってことだ」
「そうだよね~、本当に村人だったら、凄いことだよっ!!!」
ミーアも目を輝かせて言う。ラスティールが続く。
「ああ、その通りだ。お前は勇者をレベルアップさせることができる唯一の存在となる。つまりお前がいれば魔王に対抗できるかもしれないし、もっと言えばこの『暗黒の時代』を終わらせることもできるかもしれん。お前がクソ弱い村人だからだ!!」
(褒めてんだか、けなしてんだか、こいつは……)
村比斗が言う。
「分かった。つまり俺が村人ならば『貴重な人材』となるということだな?」
「ああ、その通りだ」
ラスティールが真剣な顔で言う。村比斗が尋ねる。
「あと、さっき胸の奥で死にそうなくらいの激痛が発生したのだが、それは一体何なんだ?」
「胸の激痛?」
ここで初めてラスティールが難しい顔をする。
「ああ、胸の奥がまるで万力で締め付けられるような鈍痛に襲われた。死ぬかと思った」
「鈍痛……?」
ラスティールは対照的に自分には経験の無いような快感が襲ったことを思い出す。そして顔を赤らめて言った。
「わ、私は痛くなんかないぞ!! ちょ、ちょっと気持ち良かっただけで、べ、べつに嬉しくもないし、また味わいたいとも全然思っていないから!!」
「ラスティちゃん?」
何も聞いていないのにひとり興奮して喋るラスティールにふたりの視線が集まる。村比斗が尋ねる。
「おい、ちょっと待て。お前はやっぱり快感だったのか? 俺が死にそうになっていたのに……」
ラスティールが顔を真っ赤にして答える。
「ち、違うっ!! いや、違わくはないが……、決して興奮とか昇天とかじゃ……」
「興奮? 昇天?」
村比斗がラスティールの言葉に反応する。
「ち、違うって言ってるだろ!!!」
村比斗が言う。
「そう言えばお前、さっき手で股押さえながら喘ぎ声出してたな」
「なっ!?」
赤かったラスティールの顔がゆでだこの様に更に赤くなる。
「ち、違うって言ってるだろ!!! ぶ、侮辱罪で、斬るぞ!! 貴様っ!!!」
そう言って腰につけた双剣に手をかけるラスティール。村比斗が慌てて言う。
「ま、待て!! 俺は貴重な村人なんだろ!? こ、殺しちゃダメなんだろ!?」
「ううっ、そ、そうだった……」
そう言って無念そうに剣を収めるラスティール。村比斗がミーアに尋ねる。
「そう言えば、ミーアもレベルアップしたんだろ?」
「うん!」
「お前の場合はどうだったんだ?」
ミーアが人差し指を顎に当てて考えてから言う。
「ええっとお、ミーアの場合は、なんか不思議な高揚感があったかな~?」
「高揚感?」
「うん。強くなったぞおお!! ヒャッハー!! って感じの」
「まあ、それもどうかと思うが、えっち系じゃないやつだな?」
「おいっ!!」
横で聞いていたラスティールが声を上げる。ミーアが答える。
「そうだよ。力が出てくる系」
「なるほど。ときにラスティール」
話を聞いた村比斗がラスティールに向かって言った。
「お前は変態だ」
「は、はああああ!?」
ラスティールが真っ赤になって言う。
「き、貴様、やはり死罪を……」
「考えてみろ」
村比斗が冷静に言う。
「何をだ?」
「勇者は強くなることが仕事。ならばレベルアップをした時の反応というのはミーアのものが本来のものではないのか? 股を押さえながら喘ぐお前のどこが正しい?」
「う、ぐぐっ……」
村比斗に正論を言われぐうの音も出なくなるラスティール。村比斗が言う。
「まあ、お前は性格が悪くて人望がない変態だが、胸はデカいし、まあまあの美人だし、パンツも白だから、それぐらいの変態は許してあげ……」
ドン!!!
「痛ってえええ!!!!」
ラスティールは地面に落ちていた大きな石で村比斗の頭を思いきり殴った。村比斗は地面に倒れながら今回のは本当に死ぬんじゃないかと真剣に思った。
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