エピローグ

最後の日記を読んだ後、僕はページを閉じた。

薄くなったピンクのウサギの手帳に続きが書かれることはない。。。


母が亡くなったのはもう1週間前になる。

珍しく母からかけてきた電話は楓さんが寄こしたものだった。


「お母さまが亡くなったわ」


正直、最初の感想は

「楓さんってこんな声だったのか」

という、どうでもいいものだった。



そこからバタバタと葬式の準備が始まった。

自分では何をしたらいいかわからなかったので、ほとんど楓さんがやってくれた。

サインを書く作業だけでいつの間にか1日が終わっていた。サイン以外に何をしていたかも思い出せない。。。


式中も記憶がおぼろげだったが、唯一覚えているのは棺桶に入っていた母の顔がとてもきれいで眠っているようだったという感想だけだった。


式も終わり遺品整理をしていた時にこの日記を見つけた。

母が日記をつけていたのは知っていたが、内容は初めて見た。

なんとも母らしい文章で、昔を思い出して笑ってしまった。




遺品の整理も終わり、昔から馴染みのあるこの家を引き払った。2人を火事で亡くしてから住んでいた家。あっさりと引き払えてしまった家に後ろ髪を引いているが気にせずに進む。もうこの家に母はいないのだから。。。


いろいろと気にかけてくれた楓さんには感謝しているが、僕は母のように許すことはできなかった。。。

今後もっと時間が過ぎれば許すことができるのか。。。

わからないがここまで母に尽くしてくれた人だ、前向きに考えてもいいんじゃないか。そう思えるようになった。


母の葬儀から半年が過ぎた。

私は小さなインディーズゲームの会社を立ち上げ、仲間と主にゲームを作っている。

ゲームの名前は「ガラスの箱庭」

様々なパーツから箱庭に住まわせる人を作り、それを眺めるだけのゲームだ。

現代のインターネットの全と現実の個の大きな溝を埋めるべく全と個の隙間にすっと入り込むようなゲームを作ってみた。

このゲームを持ってインディーズゲームのコンペにも参加できた。

デモ版には私のデータが使われた。

白髪の父と兄、そしてピンクが大好きな母。そんな家族が大好きな弟の4人家族が箱庭で暮らしている。


そこにはとある幸せな家族がいた。





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落合 芙月の日記~とある幸せな家族の話 温玉卓外伝~ @consomeyamato

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