第253話 ゴンゾに丸投げ①

あちこち視察ついでにアークトゥルス領にある竜舎に来てみた。


ヴェルケーロにある竜舎とはまた違う造りだ。

彼方には山を利用した…まあ、早い話が放し飼いだ。

こっちの竜舎は大きな籠みたいな形をしている。

籠というか牢というか…といったところだが。

まあ馬と違って柵だけじゃ飛んで行っちゃうからな。きちんと騎手がついて、契約出来れば勝手にどこかに行ってしまうなんてことはほとんどないらしいが。



「きゅおおおん」「ぐるるる」「きゅーん」


アカと一緒に行ったからか飛竜たちが何やら騒がしい。


覗いてみるとたくさんの竜がこっちを見ていた。捨て猫や捨て犬みたいな目で見ているが…お前らちゃんと餌もらってるだろうが。


見たことのある飛竜もいる。

以前の戦で一緒に戦った飛竜だろう。

何やらアカを見てビビっているのも居るようだが…まあそれはいいか。


こいつらとも仲良くしないといけない。

人とペットが仲良くなるにはどうすればいいか。飯だ。


厳密にはペットじゃない?まあ似たようなモンだろ?

ってことで竜舎の奴らに断りを入れて、飯を用意する。

と言っても大したことはしない。


補給物資としていつも持っている麦で粥を作り、瓶詰を開ける。

瓶詰はガラス工房で作った瓶にコルク栓だ。

そしてラベルをノリで貼って賞味期限の代わりにしてある。

とは言えこの世界じゃ賞味期限なんて自分の舌で感じろって話だ。

魔界じゃやべえと思ったらしっかり香りづけしてコンガリするまで火を通せとも言う。

つまりやべえと思っても我慢して食えってことだ。


こんなこと続けてるとそのうち死人が出そうだ。

熱を通すことでばい菌をやっつけることはできる。

でも、熱を通しても菌は死ぬけど毒素は消えないのもあるんじゃなかったっけ?ウーム…やっぱりやばいと思ったらできるだけ捨てよう。



常備してある魔物肉の瓶詰をポイポイっとアカと竜たちにあげる。

はぐはぐと食べる姿はかわいらしいものだ。


缶詰は未だ鉛の代用が見つからんからなあ…うーむ。缶詰出来りゃ早いんだけど。

アルミとか、シリコンとか?そういうのがあればいいんだが…缶にコルクってどうなんだ?俺の感覚じゃ微妙なんだけどやってやれない事はないとは思うが…

あー、缶が薄いと衝撃で歪むからそこから空気が入って細菌やカビが…アカンか。コルクはやっぱりビンだな。やはり何としてもアルミ缶を作らなければ。ああ、スチール缶でもいいのか。

スチール缶は鉄だけど錆びない。何かと合金になっているから膜を張ったようになって錆びない…んだったかな?わかんねえ。またゴンゾに調べさせよう。



アルミ缶と言えば。

前回、戦車がどうこう航空機がどうこうとアシュレイと話した。

おかげで大事なことを思い出した。

アルミと、アルミの元になるボーキサイトだ。


ボーキサイトは見つけた。某これくしょんゲームをやっていたおかげだ。

粘土みたいな軽石のようなモノ。これを探すようにと言ってみると思ったよりあっさりと見つけてきた。どうもちょっと変わったものがあるとすぐ報告するようにとの指示があちこちからあったらしいのだ。

マリアかマークスか辺りが出していたのだろう。俺出した覚えは…ないと思うけど。


そして行商に出ていた者がボーキサイトを見つけたのはユグドラシル領とヴェルケーロの境目にある山がいっぱいの土地だ。

むかし、ゴブリンのバラゴ爺さんと一緒にユグドラシルまで行ったとき通った道の近くにあったらしい。

そんなん知らんがな。


これを行商から聞いた忍者部隊が一袋ほど持ち帰って来た。

正直、はじめて見た時は分からなかったが。

でも火魔法で溶かしてみると明らかに融点が高い。金や銀よりはるかに高いところで溶けてきた。

試しに炭を置いて雷魔法で電気を流すと…片方に金属が集まったのだ。


触った感じはアルミだ。軽く銀色に光沢がある。

…これ思いっきりアルミじゃん。

できた。アルミが出来た。しかも割とあっさり。できないと思っていたので、出来てしまって逆にビビっている。

でもこれを量産?加工?今の技術じゃ無理ゲーすぎるじゃろ。


雷魔法使わせたシュゲイムなんて白目をむいて半分死にそうになるほど疲れてる。

制御が難しすぎるのだそうだ。

まあ今夜はコレで頑張れまい。

ざまあみろ…なんて思っては無い。

ふっ、俺も余裕ができたからな(非童帝の余裕


雷魔法の使い手を増やすのと同時に電気も開発しなければいけないな。

電気と言えばコイルと…磁石?銅線??回すんだっけ???

うーん、だめだこりゃ。ゴンゾ~!?


そんなこんなでアルミで缶詰の蓋も、アルミ缶自体もそのうちできるかもしれん。

アルミ缶の上にあるミカンも実現できそうにはなった。

だが、課題が多すぎる。


でも飛行機はジュラルミンを開発することで一気に…というか逆にジュラルミンを作らないと無理だ。鉄パイプに紙で作った装甲じゃ一部だけものすごく重かったり、そうかと思えば厚紙や油紙程度じゃ頼りなさすぎたり。雨降ったら落ちるんじゃ話にならん。

ビニールを開発ってのはもっと厳しい。アルミが見つかったことだし何としてもジュラルミンを…ゴンゾおおお!!







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ゴンゾちゃん過労死しそう回その1

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