第251話 最強魔王様の華麗なる食卓
アーク歴1507年 伍の月
アークトゥルス魔王領
そんなこんなで順調に、というか順調すぎる速度でアークトゥルス・ガクルックス線が開通した。
最初に来たのは貨物列車だ。客車はまだまだこれからである。
マジックバッグで運べばいいじゃないかと思ったが、大量の鉄材と木材、石材を運ぶ必要がある。
それらはマジックバッグに入れると大した量を運べない。
どうもマジックバッグは体積ではなく重さで計算されるらしい。
なので空の樽100個入るマジックバッグがあるとして、酒を入れた樽なら10個、鉄を入れた樽が2個という感じに入る物が違うようなのだ。
今更ながらに、へー?である。
道理でワイバーンでマジックバッグ搭載した騎士が運べばいいじゃんって言った時に微妙に反応が悪かったはずだ。
マジックバッグの容量は所持者の魔力に依存する。たぶん俺は今魔力は世界でもかなり上位になっているはずで、それでこの…
「あああああ!」
「ん?どうした?」
「あ、いやなんでも…げっふんげっふん」
隣で飯を食っているアシュレイに変な顔をされた。
ここは魔王城の食堂。
いつもメシの時間は食堂で摂る。
兵やメイドたちと近くで接する貴重な時間だ。
今日はアシュレイが帰ってきているので一緒に食べているのだが…食べながら仕事のことを考えていて思い出さなくて良い事を思い出した。
急に飯の最中に大声を出したから、下品な奴だと思われたかもしれん。
だがまあそのくらいは良いだろう。
どうせみんな大体知っていることだ。
…俺が思い出したのはいつも使っているマジックバッグはアシュレイのモノだという事。
それを借りパクどころかいろんなものを突っ込んでしまったという事もある。
餌用の動物の死骸や資材、輸送するための食料は別にたぶんいいだろうけど肥料から何から…やあっべ。外側だけでも後でゴシゴシしておかないと。
「んー…当ててやろうか。お前は…そうだな。私のモノを壊したりしたんじゃないか?」
「いや、それは違う(キリッ」
キリリとした表情で返す。壊してはいないからな。うむ。
すると、少しアシュレイの頬が赤くなった。
どうした。惚れ直したか?
「じゃ、じゃあ…あ?あれ?私のマジックバッグはどうなった?」
「ミ、ミテナイナア…」
「ふーむ、そう言えばお前が腰に付けているバッグ。ものすごーく見おぼえがあるのだ。つい最近まで私が使っていた物のような気がする。というかその物だな。」
「そうかな?気のせいじゃないかな?ずっと俺が使ってるけど」
「お前基準では十年近くたっていると思うが、私から見ればついこの間まで使っていた物だぞ。間違う訳ないだろ…貸してみろ」
「あ、ちょ!ダメ!エッチ!」
「何を言っているのだ。お前のモノなら契約せずに中身が見れるはずがないだろう。ほら、よこせ」
「あっ!ダメ!アッー!」
俺(アシュレイ)のマジックバッグは無事にご主人様の手元に帰っていった。
「ほう…大砲に鉄砲、武器に防具に…酒?米に味噌に野菜に…何だ途中から食い物ばっかりか?」
「そうそう。有事に備えてね」
変な汗をかきながら答える。
いや、何があるか分からんからな。
食料に武器や弾薬は基本だ。
ここら辺まではアシュレイも文句無さそう。というか感心しているような顔だった。
「んんん?頑張っているなと思ったが下の方はゴミだらけじゃないか…何だこれ?セクログモの死骸?アカカブトの毒袋?ブラッドサーペントの毒液?何でこんなものを…」
「どうしても攻略に困ったら毒攻撃なんかもアリかなと…」
ダンジョン攻略の前に突っ込んだやつだ。
巨人型ボスだと分かっているんだから生物兵器から何からいっぱい持って行ってた。
使わなかったのはたいてい捨てたと思っていたが…まだ残ってたんだな。
「なんだこの樽…何かの糞じゃないか!何でこんなもの…」
「肥料に使えるかと…何の糞だったかな?樽の蓋に書いてあるはずだが」
研究用のウンコだ。
キッチリと蓋にラベル…の代わりに彫り込んである。これはケンタウロス族のウンコだ。
種族によってウンコの形や成分は違うが、ケンタウロス族の糞は馬みたいな糞である。
糞は食べる物によって変わってくる。
ケンタウロスは俺の見ている限り雑食だが、何故かウンコは馬みたいなウンコだ。なんでや?ってのとなるほどなあ、ってのが入り混じった感想を抱いたものだ。
「…まあ研究ならいいが…こっちはメイド服?巫女服?バニースーツ?なんだこりゃ?」
「それは…そのうちアシュレイが生き返ったら着せようと…」
「…私がメイド?これを着て掃除でもするのか?」
「ある意味掃除かも…ぐへへ」
「んん???……ば!バカ!!」
服を広げて用途を考えていたアシュレイ。
私が着てどうするんだ?と思っていたようだが、一拍置いて
怒る彼女に、君はどんな服を着ても素敵だとは思う。
勿論服を着なくても素敵だが、たまにはこういうのもいいじゃないか。と力説した。
だが場所が悪かった。
部屋でなら何やかんや言いながら着てくれそうだが、皆の前だった。
俺の左頬には真っ赤な紅葉が張り付けられ、一方で顔全体を真っ赤にしたアシュレイはそれから次の日まで口を聞いてくれなかったのだった。
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