第190話 暑くて寒い
抉られた腹を回復魔法で治癒させると、続けて60層台を登る。
もうすでにダンジョンの中で何日過ごしたか分からない。
腹が減ったら飯、眠くなったらボス部屋か階段で寝る。これだけである。
61層からは火山だった。
そういやこんな階層だったけ、という感想である。
何せ火山である。熱い。
熱くて暑くてどうしようもないが進まない事には始まらない。
こんな時アイテムボックスは非常に便利だ。重い装備はぜーんぶカバンに突っ込んで、防寒具ならぬ防暑装備だけつけて俺は山を登る。
ダンジョンの構造は何となく記憶にあるから入った瞬間に階段の方向が分かる。
それが2周目の最大のメリットだ。
おかげで後は山を登ったり降りたり…だけでいい。
「ハァ…ハァ…。馬鹿じゃないのコレ」
歩いてるだけで暑くて体力が奪われる。
しんどい。疲れた。眠い。休みたい。
前の時どうなんだったっけ?アカと無駄話して…文句の言い合いしてたな。アイツは暑いの平気だから…ずるい。チクショウ。
話し相手がいないというのもダメだ。
アカがいれば山道でもあいつは飛べていいな、暑いの平気で羨ましいなとか思いながらでも、退屈しのぎが出来た。
でも今は時折襲い来るモンスターを撃ち落とす以外何もやることがない。
暑い、熱いと思いながら進むだけである。
朦朧としながらようやく65層に到着した。
中ボス?っぽく出現した溶岩を飛ばす虎さんは楽勝だった。
どうも、俺の体は火耐性も上がっているらしい。
通常の装備に着替えて突入はした。
でもそれだけで特に苦労はしなかったのだ。まあ元々この敵は余裕だったし…?
「んほおおおお!!!寒いいいいい!!!」
慌てて防暑服を脱ぎ散らかし、マジックバッグから水龍鎧セットを取り出す。
鎧下をもたもたしながら着て、手をぶるぶるさせながら鎧を着ける。
ヒモが括れない。はわわわ。
忘れてた。ここから急に寒くなるのだった。あああ……ああ、落ち着いて来た。
66層からはの真っ白で氷の山がある風景だ。
そういやこれは前に南極だと思った風景だったな。思い出した。
異世界で北極や南極があるかは知らんが、ゲームだとすればこのグラを作った奴は南極の写真でも見ながら描いたに違いない。そんな風景だ。
…てなことを服と鎧を付けて防寒体制を整えて、つまり一息ついてから思い出した。さっきまで耐暑装備で中ボス戦をして、暑くて疲れていたのでそのまま水を飲んで昼寝をした。
そして昼寝明けで寝ぼけたまま66層に入った。
入った瞬間襲い来る冷気に何も考えられず、落ち着いて来てからようやくそう言えばそんな構造だったと思い出した。
「危うく戦闘でやられる前に凍死するところだったぜ…」
最も恐ろしい死に方の片鱗を見てしまった。
ダンジョンで寝ボケて凍死なんて最悪だ。勘弁してくれよ。
だが、水龍鎧を纏ってしまえば寒さはほとんど感じない。
ならば楽なモンである。
じゃあって事で氷の上を走る。滑って走り辛い。スケート靴でも用意すべきか。いや、自転車の方が楽か?ここまでの道を考えると自転車だ。出来ればバイクが欲しい。原付でもいいが…
「まあしょうがない。」
歩いて走って。
アカと一緒にここを通った時はそこそこ苦労した記憶がある。
樹魔法の物理ダメージ部分は効き辛くはないが、樹による拘束は気温が低くて難しかった事を覚えている。
それがどうか、特に何の不都合も感じずに戦えているのだ。
それどころか多くの魔物は走りながらの一撃で仕留められる。
どうやら俺のチートもいよいよ極まってきたらしい。
「あー疲れた。寒いし疲れるし、ろくなもんじゃねえな」
バタバタ走ってようやく69層から70層に移動する階段に着いた。
汗はちょっとだけかいた。極寒の地で汗かくと凍るから良くないって言うが、まあ軽くだからか大して違和感はない。さあ、階段の内部で飯を食って休憩するとしよう。
「あ‶ぁ~、あったまるんじゃああ…」
シチューはもういい加減飽きた。飽きたがやはり温かいご飯は美味い。
でももうちょっとほかの飯用意しておけばよかった。カレー粉持ってきてこの上からぶち込んだらどうだろう。
うーん、別の鍋に野菜と米とカレー粉ぶちまけて…ってした方が良いかな。
肉は干し肉と塩漬けがある。タンパク源は貴重だ。
しかし、マジックバッグがあるおかげで何とかなるが、無ければ最初からリアカーや犬ぞりみたいなのを用意しないととてもダンジョン攻略なんてできない。食料と水分だけで重くて歩くことも出来なくなりそうだ。ましてや戦うなど…
考えながら食べる。
お代わりしてパンに浸したり、チーズぶっかけて火魔法であぶってグラタンっぽくしたり。
何やかんやでいっぱい食べた。
暑くても寒くてもカロリー消費は多くなるって言うしな。しょうがないな。
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