第183話 武器開発


試射の弾は鉄球で作ったけど、これ鉄じゃなくてもいいんじゃないか。

ゴンゾにそう言うと、色々試してみるけど重すぎても飛ばないし軽すぎると威力に欠けるだろうと。


比重の概念は当然この世界にもある。

鉛は鉄より重い、金はめちゃ重い、石やコンクリは鉄の半分以下くらい…とゴンゾに軽く説明を受けた。ふーん、って感じである。石なんてあんなに重いのに鉄よりはるかに軽いのだ。

銅やクロム、コバルトなんかだと割と鉄と似たような比重である。


だからって鉄球やめて銅球にするか?ってなるととてもじゃないけとそんな気にはなれない。

銅の塊ぶっ放すとかどんだけ富豪なんだ。やっぱ鉄でいいか?

コンクリで弾作って打てば安上がりだが、軽くなる分威力や射程が変わってくる。

形は自在に調整できるし錆びないが…難しいな。


「鉄はそれほど高くありませんぞ?」

「何でだよ」

「何でと言われても…入手方法も色々ありますゆえ…」

「そうなのか」


どうも戦国時代には鉄があんまり無くって刀が高かったとか、戦時中に鉄不足になって刀や鍋まで召し上げられたとかって話を聞いたことがあるせいで鉄が高いイメージが抜けない。

この世界だとダンジョンでいろんな武器がドロップするおかげでそれを鋳つぶしたりとか、鉄の入手方法は多いようなのだ。じゃあスコップや鍬は何であんなに高かったんだと言えば炭が高いと。

高い炭を使って鍛造で作ってたから割高になったって…鍬は鋳造でいいだろ!


まあ昔と違って炭もいっぱい作ったから炭の値段も随分下がっている。

炭焼きなんてしたことなかったけどこっちじゃ毎回壊すタイプの焼き方だったみたいだからいろいろ工夫したのだ。焼き物を作るような窯を作れば大体イケた。地球のとは少し違うかもしれんが、ゴンゾちゃんとゲインちゃんの愛の結晶!?の炭焼き小屋なのだ。



それはそうといわゆる拡散弾、葡萄弾なんかの話もした。釘や金属片を入れる嫌らしい弾や、内部に火薬が入っていて当たると爆発する弾やら…


「若の話は物騒なのが多い」

「酷い世界だよな、ホント。俺もそう思うよ」


どんだけ戦いに明け暮れてた修羅の世界なんだ。

砲弾がおまけに爆発する。それに尖った物がいっぱい撒き散らかされる、なんて悪魔か。って言われた。

まあ酷いのは分かる。分かるぞ。

多分兵器を開発した人たちも病んでたんだろうな…


というわけで、大砲についてはゴンゾに丸投げした。

たぶん放っておけばゴバンニが一晩でやってくれるだろう。果報は寝て待てである。


つーか今年は戦争から帰ってきたら農地の種まきとかも終わってるし、もうやることがない。

初期は俺がいないと芽が出ないとかいう良く分からん状態だったが、今や何もしなくても農業は立派に成立する土地になった。なんでなんじゃろ?


細かい事はよくわからんが、畑は種から芽が出てきているし、田んぼの方も種籾から芽が出てきている。もう少し大きくなるのを待って田植えだ。



塩水選からの正条植えを試してみた結果、やはり収穫量はかなり上がったそうだ。

体感で3割以上増えたと。

平野とは言え決して温暖な気候ではないことも考えるとかなり収穫は多いらしい。

飛び地になっている元ドレーヌ公爵領の村々も昨年の収穫は順調のようだ。


「つーわけですることがない。ダンジョンだな」

「80層攻略の目途は立ちましたかな?」

「全くだよ。何だあのクソ親父…強すぎだろ」


攻略の目途は全く立たない。

ダンジョン攻略を中断して戦場に行った。

まあレベルが上がればいいかと思ったが、俺が殴ったのは大砲だ。

敵を倒したわけではないのでレベルは上がらない。


功を立てたのでご褒美に師匠に短剣を貰ったが…まあ然程今までの武器と大差ないという所だ。


もっと大きな剣や槍なら攻撃力が高くエンチャントが付いた物もあるようだが、短剣では限界があるらしい。うーむ。

防具を整えてみるというのも考えたが、アレを防げるとは思えない。


そもそも巨人に限らず、重量はそのまま力と結びついている。

E=Mc²である。光速には程遠いが。


なんかもうこっちに来て大きな生き物と戦う事に慣れつつあるが、それでも5mの巨人ってまともに人間が戦える大きさじゃない。うなじを切り裂くって言われてもな。あー、動きを補助する装置を作ればいいのか?立体的に機動できそうな装置!


「ゴンゾちゃんさあ、ワイヤーびゅーんって出して移動が楽になるような装置作れない?」

「…?意味が解りませんぞ?」

「両側にビューんってワイヤー出して、壁に刺さってブランコみたいになってさ!んで次々ワイヤー刺して!」


図に書いて説明する。

高速移動が出来そうじゃない?って力説するが。


「刺すところはまあ良いとしても…どうやってワイヤーを抜くのですかな?それとうまく抜けた後、前方に再度射出して壁に刺さって…その時間に落ちてしまわないですかな??」

「…さあ?」


ふむ。考えてみればかなり厳しいな。

そもそもワイヤーを抜いて、違うポイントに刺すってのが半端なく難しいと思う。


「そもそもダンジョンの壁はよほどの威力が無いと穴が開きませんな…」

「あきらメロン」


諦めた。

巨人やドラゴンみたいな巨体のモンスターと戦うとき、上手く体を登って急所を仕留める良い案だと思ったんだけど、今の技術体系じゃどうにもならん。抜いて刺してのギミックが無理ゲーすぎる。

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