第181話 終戦??

「…アッサリ引いて行きましたね」

「そうだな。追撃に移ろうと思うが…カイトは不参加で頼む。お前は前回の出撃で功を立て過ぎたようだからな」

「は~い」


大砲をぶっ壊し、酒盛りをした翌日。

ズキズキと痛むアタマにヒールをかけて、|上司(師匠)にゴマすりに行ったところ敵はもう撤退したと。


ならば、と追撃部隊が半壊した南門から出撃していった。

逃げていく敵を追撃する時が戦場では一番ダメージを与えられるのだから当然と言える。


…ただしそれは敵が半壊して、バラバラに逃げていくような状況の場合だ。

今回はかなり組織的に引いている。

こういうのはあんまり調子に乗って追撃すると良くない。


と師匠には一言言った。

師匠は『分かっている』とだけ言っていたけど、どうせ言う事聞かないような奴らばっかりだろう。

まあ、魔族を馬鹿にしているわけではない。


大半の魔族は戦場では判断力が鈍る。

その代わりに攻撃力が上がり、士気が上がる。

少々の傷では退かなくなり…死亡率も上がるのだ。


これが良い事かどうかは判断に困る。

人間の新兵なんてブルッて何も出来ないうちに死んじゃうってのもよく聞くし、それに比べりゃ大暴れした方がはるかにマシと言える。

でもまあ組織的な運用がしづらい分、デメリットの方がでかい気はするんだけどなあ。


「それにしてもあっさり引いたモノですね」

「大砲を試しに来たって面があるんじゃないですかね?そうなると…」

「そうなると、次はどう思いますか?」


伯母さんアークトゥルス女王のボヤキに応えると続きを求められた。


「うーん。この南門の破壊をどう見るかですね。実際の所、南門周囲の破壊はかなり酷いものです。他の攻城兵器でここまで一方的に攻撃出来る物は無いんじゃないでしょうか?ドラゴンのブレスとか、100名単位の集団魔法とかなら話も変わりそうですが」

「そうですね。どんなに優れた才能を持つ魔法使いでもあの距離からこれほど破壊は難しいでしょう。集団魔法も中々制限が多いですしね。」

「うちのアカのブレスだってこうもいかないでしょう」

「…そうね」


叔母上が俺の背中で寝ているアカを見て言う。

もういい加減大きくておんぶすると腰が痛くてしょうがないというのに。



敵軍が所持していた大砲はわずかな数だった。

俺が上空から見た時、動いているのはわずか6門だったのだ。

実際にはもう少し多めに運んでいたのかもしれない。

運ぶ途中で壊れたり、迎撃に行くまでの間…打ってて勝手に壊れた分もあるかもしれんが…ただまあ。


「わずか数門の砲であの被害でした。アレが100、200とあればどうですか?」

「それは…」

「出来なくはないと思いますけどね。というか俺がどこかの街に攻め込むならそうします。圧倒的な火力で遠距離から撃つ、これが一番自軍の被害を抑えられますから。つまり我々は次回はもっと大量の大砲が来ることを前提に、アレをどうにかする方法を考える必要があります。」

「カイト殿は考えているのでしょう?」

「えー…?えーと。ちょっと待ってくださいね」


どうだったかな?地球の歴史だとどうなったんだっけ?

大砲とかミサイルが出て来て…ああ、そもそも城壁があんまり意味なくなったんだっけ?んで固まってたらやられるから分散して塹壕掘って…ああ、そうだな。


「えーと、敵と同じような武器を持つのが大前提ですが。そもそも城壁の意味はあんまりなくなります。勿論、城門も同じく効果的ではなくなります。城壁はこちらの砲を城壁の上にあげて撃つくらいで…まあ、ちょっと飛距離を稼げる以外はあんまり意味ないですね。とりあえず放置してった大砲が有ったら引き取って研究したいですね…で、近い将来には頭の上を鉛玉が飛び交うような戦場になるので穴を掘ってその中に入って武器だけ出して戦うような??何て言えば良いかな?」

「穴を掘って?なるほど…砲の前に晒す面積を少なくするのですね」

「え?ああ、そんな感じです。後は戦車とか、ミサイルとか…?まあより強力で、より遠くまで飛ぶ兵器を開発して。遠距離の撃ち合いをするようになります。その行き着く果てが、上空からの爆撃ですね。」


空の上を飛ぶ標的にはそもそも地上からじゃ普通の攻撃は届かない。

どこぞの国は竹ヤリで航空機を落とす訓練をしていたらしいが…


さらに言えば、届くような武器を開発しても命中は難しい。

同じように上空から地上の目標への精密な射撃は難しいが、そこは数で誤魔化す。


適当に撃ちまくるのだ。

目的のモノ、ヒト、その他。辺り構わず。

その結果が民間人の虐殺へと繋がる。

後は酷い事になるしかない…まあまだただ鉄球ぶっ放すなんて可愛いものだろう。


「すぐに出来そうな対策で言えば飛龍隊に対地攻撃できそうな武器や道具を持たせることくらいです。簡単そうなのはなら油でも持たせて上から火を撒くとかくらいですかね?当然ですが敵も航空部隊で妨害してくると思うので、対空部隊と対地部隊を別に編成する必要も出て来るかと」

「なるほど。良い参考になった。持つべきものは頭のいい弟子だな」

「師匠…腕の方も良くなってきてますよ?」

「なら後で試してやろう。楽しみだな!」

「今日こそボコボコにしてやりますよ!」


まあこの後、当然のようにボコボコにされた。

ちょっとこのお姫様強すぎないですかね?

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