第178話 強行出撃

考えながら歩き、会話をする。

ギロンヌ殿とアカと共に外に出て飛竜隊の所に行くまでに作戦…というには行き当たりばったりだが。

おおよその方向性は定まった。というかコレしかない。

要するに、大砲の上でブレスぶっぱして火薬に着弾させるか大砲自体をぶっ壊すのだ。シンプルでいい。


「それで、策はおありかな?」

「今のところは特に何も。前回の偵察ではうまく隠してありましたが、砲撃箇所は上空から捜索すれば恐らくすぐに見つけられるでしょう。派手な音と煙が出ているはずです。」

「ならば発見は容易ですな」

「問題は恐らくその後です。さすがに無防備ではないでしょう。歩兵はともかく、航空部隊が護衛にいると思います。それに障壁も。なので…」

「我らが牽制と航空部隊の相手をしましょう」

「お願いします。俺とアカで大砲を潰します」


話が早い人で助かった。

飛竜のブレスでも障壁を破れるかもしれないが、さすがにアカのブレスには劣る。

飛竜に一発撃ってもらって、障壁が撓んだところで本命をドカンと撃てば問題ないだろう。


そう思っていたが頭の悪い奴なら自分たちの手柄にしようと止め役に拘るかもしれない。ラストアタックでボーナスが出るようなタイプのゲームなら兎も角、目標は大砲だ。破壊したところで恐らくドロップアイテムも何もない。


そんな時に役割分担で揉められても困ると思っていたのだ。

城内を早足で歩きながら打ち合わせすると、もうすぐ外だ。


どうもこのギロンヌさんは以前に数回あった事のあるケラルという飛竜乗りの同僚であり、彼から俺の事を聞いたことがあるのだと。


ほーん。何か親しげだと思った。

そう言われると俺も好感を持てる。

知り合いの知り合いってだけで最初からお互い好感度が高い気がする。

そう言うモンだよな。



そうこう話しているうちに中庭にある飛竜隊の所に着いた。

すでに出撃の準備は終わっているようだ。

さすがは精鋭部隊である。


「傾注!これより我らは出撃、こちらを攻撃している敵新兵器に上空からの破壊活動を行う!今作戦の指揮権はこちらのカイト殿にある!カイト殿、どうぞ」

「カイト・リヒタールだ。現在、敵の新兵器が我々の防衛網を破壊している事は皆も分かっていると思う。アレは恐らく我らの所持していない遠距離兵器だ。我々はこれより敵新兵器の破壊任務に当たる!敵陣上空では敵航空部隊による妨害が予想される。飛竜隊諸君には敵航空部隊を迎撃し、敵新兵器の牽制をお願いしたい。その隙に我とこの火龍により、新兵器を破壊、あるいは収奪する!以上だ!さあ、人間どもに我らの空を渡すな!出撃するぞ!」

「「「応!!」」」


いい返事だ。

誰も文句を言わなさそうでよかった。

さすがは最精鋭の飛竜隊。

練度の高い部隊は色々違うと感心しながらアカに鞍を置く。

貴族どもは一言口を開けば人を馬鹿にしたり、真正面から突っ込むことこそ誉れだなんてアホな事言い出したり…愚痴はまあいいか。今考える事じゃないな。


以前の失敗からアカには鞍を作っておいた。

段々大きくなるアカに合わせてある程度は伸縮性のある素材で作ったとゴンゾたちが言っていた。

俺は乗れれば何でもいいと思ったが、手を放して戦う時なんかもある。

鐙があると確かに安定性が全く違うのだ。


おっと、大魔王様に昔貰ったスパルナのマントを装着しないと。

これがあれば落ちても大丈夫…の筈だ。

とは言え敵陣の真ん中に落ちたら、その後どうなるかは推して知るべしだと思うが。


「ではよろしいな、出陣!」

「「「応!!!」」」


一斉に飛び立つ飛竜たち。カッコイイ。

アカは…


「おい、なにやってんだ!飛ぶぞ!アカ!」

「おー!」


アカはもう一つ締まらなかった。

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